第47話 とある朝の出来事

 寒い時期は別として、和室で目を覚ます時は裸であることが多い。

 ほどほどのところで切り上げてシャワーを浴びてから眠りに就くこともあるけど、大抵の場合は体力が尽きるまで愛し合い、いつの間にか眠ってしまっている。


「ふあぁ~」


 大きなあくびを漏らしながら時計を見ると、ちょうど正午になるところだった。

 隣ではミミちゃんがこちらに体を向け、安らかな寝顔を浮かべてすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。

 あまりのかわいさに思わず寝込みを襲いそうになったものの、どうにか堪える。

 ミミちゃんの眠りを邪魔するわけにはいかない。


「ちゅっ」


 頬に軽くキスをしてから、飲み物を求めて台所へ――


「んんぅ……」


 ――向かおうとしたところで、ミミちゃんがあたしの腕にギュッとしがみつく。

 しっとりすべすべ、ふわふわもちもちといった擬音がよく似合う、柔らかくて弾力のあるおっぱい。

 腕に伝わる至福の感触と、胸に腕が沈み込む煽情的な光景が、若干寝ぼけ気味だったあたしの意識を完全に覚醒させた。


「み、ミミちゃんがその気なら……」


 と言いかけて、途中で言葉を止める。

 腕に抱き着いてきたからてっきり起きているのだと思っていたけど、そうではなかった。

 夢の中であたしのことを抱きしめてくれているのか、それともあたしがこの場から離れようとしているのを無意識のうちに感じ取ったのか。

 ミミちゃんは眠ったまま、あたしの腕を抱いている。


「ほんとにもう、かわいいな~」


 あたしは思わずクスッと小さな笑みをこぼし、もう片方の腕でミミちゃんの髪を優しく撫でる。

 いつ見ても素敵で、いつまで見続けても飽きないほど愛おしい。


「ぁふ……ゆにこひゃん、おはようございまふ」


 しばらく眺めていると、ミミちゃんが眠りから覚めた。

 ふにゃふにゃな声で告げられたあいさつを聞けるのは、あたしだけの特権だ。


「おはようっ。ミミちゃん、昨夜は激しかったね~」


「そうれふね……んぅ……もうちょっと、だけ……」


「えっ――わぷっ!?」


 寝起きのミミちゃんをからかって楽しもうとした結果、今度は腕ではなく頭を抱き寄せられ、あたしは顔面からおっぱいにダイブすることとなった。

 人工的には決して作り出せない類の甘い匂いが鼻腔をくすぐり、全身へと幸福感を伝播させる。

 数時間ぶりに味わった感覚に心を躍らせているうちに、ミミちゃんは再び寝息を立て始めてしまった。

 いますぐ起きる必要もないし、あたしも二度寝しようかな。

 という考えに至り、あたしはミミちゃんをギュッと抱きしめ、この世で最も甘美で魅力的な匂いに包まれながら再び眠りに就くのだった。

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