第44話 ミミちゃんとシチューを作りながら配信する①

 日曜日のお昼過ぎ。今日はミミちゃんと一緒にお料理配信を行う。

 配信用のノートパソコンをキッチンに持ち込み、スタンドを使ってスマホを定点カメラとしてコンロのそばに置く。

 調理器具をあらかじめ準備しておき、念入りに手を洗ってから配信を開始する。


「みんな、こんユニ~! お知らせしてた通り、今日はミミちゃんとクリームシチューを作るよ!」


『こんユニ』

『こんユニです』

『楽しみ』

『ユニコちゃんって料理できるの?』

『上手くできるように祈ってます』

『こんユニ~』


「映り込みとか反射の対策もバッチリだから、心配しないでね~。それじゃ、ミミちゃんもあいさつよろしく!」


「みなさん、こんユニですっ。いつも二人で協力して自炊しているので、安心して見ていてくださいね」


 いつものあいさつに一言添えつつ、まな板の前に立つ。

 まずは、野菜の皮むき。


「いまさらだけど、皮むきは配信前に済ませといた方がよかったかもね~」


「そうかもしれませんね……あっ、皮むきの様子を実況するのはどうですか?」


「出た~っ、ミミちゃん必殺の正確無比な高速皮むき! 凹凸が多くて難しいジャガイモの皮を、いともたやすく、まるであたしの服を脱がすかのようにスルスルとむいていく!」


「そ、そこまでハイテンションじゃなくてもいいんですけど。というか、変な例え方をするのはやめてくださいっ」


「ごめんごめん、ブラを外すかのように、の方がよかったよね」


「大して変わらないですよ!」


「ミミちゃんが声を荒げるのは珍しいから、リスナーさんも喜んでくれてるんじゃないかな~?」


「そ、そんなことは……」


 いったん手を止めて、ノートパソコンの画面に表示されているコメントに目を通す。

 ミミちゃんのリスナーさんと思しき人たちが、あたしの予想に違わぬ反応を示していた。


「よしっ、ジャガイモの皮むき完了! 次はニンジンだ~!」


「じゃあ、わたしはジャガイモを一口大に切っていきますね」


 現在の作業工程はカメラに映していないので、適宜説明を添えておく。


「ところで、リスナーさんたちはお料理できるの?」


『できないよ』

『それなりに』

『お湯を注ぐだけならプロ級だと自負してます』

『実家の料亭で厨房に立ってますー』

『お菓子は作れるけど食事系は厳しいかも』

『二十歳超えてから初めて包丁握った』


「なるほど~、やっぱりいろんな人がいるね。許可出るか分からないけど、リスナーさんのことを教えてもらう配信とか楽しそうじゃない?」


「個人情報につながらない程度の内容に絞って、そういう企画をやってみてもいいかもしれませんね」


 なんてことを話しながら、慣れた手つきで工程を進めていく。

 タマネギを薄切りにする際に二人とも涙があふれて手を止めざるを得なかったシーンはカットしたいところだけど、それができないのがライブ配信のつらいところだ。

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