魔物との戦い(後編)

「シネェ!」


2体のサハギンは叫びながら持っている槍を顔目掛けて何度も突き出す。


1体は槍を連続で突くのをメインで攻撃し、もう1体は槍を投擲し隙があればまた拾いを繰り返してくる。


それを俺は剣で受け止めながら戦っていた。後方にはユキがいる万が一にでも槍をよけてユキに当たるのが嫌だからだ。


しかしそれを見ながら俺は不思議な感覚に襲われていた。


──動きが遅い?


イリスが俺が勝つにはぎりぎりの相手だと言っていた。…つまり相手はまだ本気を出していない?2対1だから油断しているのか?


ただでさえ数の上では不利な状況。

…だけど油断している今なら!


僕は守りに専念するのをやめ、剣戟の速度を一気に高め攻撃に移る。


いきなり速度を変えた為か、それとも油断していた為か一体分の槍を弾き飛ばすことに成功する。


「ここだ!!!」


驚きで硬直している槍を落とした方のサハギンの頭を右から斬りつける、今回の場合は刃を落としている訓練用の鉄剣なので殴り付けるが正しいかも知れないが。


サハギンには顔の両端に目があるので1つ潰すことに成功した。


もう一体の方は俺がようやく危険だと感じたのか距離を取っている。


距離をとった今なら──


俺は離れた方にも警戒をしながら、痛みのせいか暴れ回っている方のサハギンの右側に回り込むと怪我をしている目に向かって思い切り剣を差し込む。


剣の横は刃を落としているけれど先の方は尖っているため攻撃はすんなりと決まった。剣の先で俺も何度か怪我をしたことがあったのでここならと思ったのだが上手くいったようだ。


…目の前で動かなくなったサハギンを見て変な感じがする。魔物とはいえ初めて生物を殺したのだ。…この感覚に馴れるようにしないとな…。



俺は油断していた訳ではない。もう一体のサハギンの動きには気を付けていたが、倒した時に感じた物にひたっていたせいでもう一体が湖に逃げようとしていることに気づくのに遅れてしまった。


慌てて追いかけようとするが俺の足の速さでは追い付くことができないことは見てすぐにわかった。


──どうする?このままだと逃げられる。この距離から出来る攻撃はないか?

………そうだっ!あれなら! ──



俺は最初に倒したサハギンの槍を拾いあげ逃げているサハギンの背中に向けて投げつける。実際に投げて攻撃するのは始めてたが、お手本なら先ほど嫌になるほど見させて貰った。


「せりゃぁぁぁぁぁぁ!」


俺は助走をつけやり投げの要領でサハギンの三又の槍を投げる。


───────────────────────

スキル・〈投擲〉を獲得

・投げつける時の威力、姿勢に補正がかかる。

───────────────────────


「うお!」


つい声が出た!まさか戦闘中にステータスウィンドウが出てくるなんて。…そうだ…思いだした…。

新しいスキルを身に付けれた時は勝手に出てくるんだった。スラッシュを身に付けたときのを忘れてた。


俺は慌ててステータスウィンドウを閉じるよう念じ、生きているサハギンの方を見た。


どうやら足に刺さったようでその場に倒れている。


俺はその隙を見逃さず湖の近くまで来ていたサハギンに駆けより止めをさした。


──これでこっちは終わった!あとはイリスの方に急がないと!


イリスの戦っている方に駆け寄ろうとすると、こちらを見ているイリスと


目があった…というよりユキと一緒にこっちを眺めてるな…これ。


「大丈夫…だったみたいだな。」


自分でもイリスを見る目がジト目になっていることがわかる。


「いやー…早く倒せたから最初は助けようと思ったんだけど見てたらリョウガが圧倒し始めてたから最後まで戦かわせた方がいいと思って…。レベルも大分上がったんじゃない?」


少し焦った顔でこっちを見るイリス。


確かに魔物を倒すと強くなれるらしいけどさ…。


「それに!ユキを守ってた方がリョウガも集中して戦えるでしょ!」


…ユキを守ってくれてたのか。じゃあもうイリスをせめれないな。


「ありがとう、イリス。でも次からは一言、言ってくれ───「お兄様!逃げて!!」」


ユキが大声で俺に叫ぶ。その声が聞こえた次の瞬間僕は背中から何かぶつかった衝撃を受けて吹き飛ばされた。イリスが手加減してくれたときとは明らかに違う、俺を殺すための一撃だった。


「ぐっ………あっ」


…声が出てこない…吹き飛ばされ、どうやらイリスに支えられてるようだ。俺は何をされたのかわからないが目の前で心配そうにしている二人を見ればわかる。


「……俺を………攻撃したのは……っ!」


湖の方を見ると先ほどのサハギンと外見は同じ、しかし大きさがさっきのと比べると3、4倍ほども違う。見ただけで俺達では勝てそうにない化物がいた。


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