名前を知った日(イリス視点)
今日こそ話しかける!って意気込んで来たんだけどなぁ…。
「珍しく眠っちゃうんだもんなー…」
…確かに天気もいいし実際最高のお昼寝日和だとは思うけどさ…今日じゃなくてもいいじゃない……
私だってここでお昼寝したいし…って前の私なら思ってたんだけど、本当にいつからお昼寝の時間じゃなくなってあなたを見守る時間になったのかしら…。
「名前もまだ知らないのにね…」
いつもは必死に剣の練習をしているときと比べると本当に穏やかな寝顔…。寝ている今なら私でも近づくぐらいはできる。
むしろどうして練習中はあんなにも人を嫌ってるような…避けてるような目をしてるんだろう…。
そんな目をしてなかったら私はもっと早く喋りかけられていたのかしら…?
「もっと知りたいな…名前も知らない…あなたのこと」
──私は彼の頬に手を添えて、
「んぅ?」
──っ!私は何をしてるのかしら!?というかいつの間にこんな近くに!この人は寝てるし、私の方からこんな近くまでうごいたの?
というか…起きてないよね…?
「…っん?…もうこんな時間か…。」
──起きちゃう!えっと…そうだ!寝てるふり!
って違うでしょ!
あぁなんでこんな風に
「綺麗だな…」
ここからの景色は確かにキレ…ん?こっちを見て言ってない?もしかして私に──
「ぅうぁぁああぁぁぁ!」
─ビク!
「ひゃう!」
やっぱりばれちゃうよね!当たり前だよねー!
えっと…えっと…なんていえば…急すぎてまだ心の準備が…
「えっと?…?」
「ごめん!起こしちゃって!」
──?なんであなたが謝るの?何か言わなきゃ…!
「………大丈夫…」
──言えたけど、なんで?私の方が悪いのに…
「ここは確かに居心地はいいですけど…あんまり知らない男の人の隣で眠るのはやめた方がいいですよ…。」
──私のこと心配してくれてるの?確かにあなたからしたら私のことは知らないだろうけど…
「……私からしたら知らない人なんかじゃないけど…。五年前から知ってるし……。」
──あっ!聞こえてない…よね?…良かった…聞こえてないみたい…
「「………」」
──他にも聞きたいこといっぱいあるのに…どうしよう…何を話せば…
「あなたのお名前は?」
──先に聞かれちゃった。私は聞けてないのに…
「…イリス」
──ちゃんと伝わってるかな?誰かと喋るのも久しぶりだ。
「…そういえばどうやってここに?」
──……どうしよう…泳いでここにきたって言っても信じて貰えないだろうし…それにまだ私のことは話せないし…
「ん~…えっと…」
──ごめんなさい。私は嘘をつくしかなかった。
「私…近くに住んでて…ここにはよく…昼寝しに…来てる…近くに抜け道が…あるから。」
──これじゃすぐにばれるかな?
「僕もよく来てますけど…いませんでしたよね?」
──…だよね…あなたも1日もサボったことはなかったもんね。
「………いましたよ…いつも……でも…まだ…」
──私もいたんだよ。あなたが危ない目にあわないようにしてたんだよ…言えないけどね?
「あなたが…帰ったあとに…来てたから…」
──今だけでいいの…これで──
「取り敢えず…わかりました。」
──わかって…って
「…えっ?…いいの?」
──嘘だってわかってるはずなのに
「聞いてほしいの?」
私は必死に首をふった。
「そうですね…イリスさんのことは内緒にしておきますね。」
「………!。…ありがとう…。」
──この人はやっぱり優しい人かも知れない。私のことはともかく嘘をついてるのはわかってるはずなのに。─嘘をついているからか胸が痛い…
私はとっさに声をだしていた。
「…名前!…教えて…」
──今なら聞けるかもと思っていたけど…声はすんなり出てくれなかった…けど
「そういえば…言ってませんでしたね。僕の名前はリョウガ、ただのリョウガです。」
──彼、リョウガはちゃんと教えてくれた。
「……リョウガ…リョウガね……!私のことはイリス…イリスって呼んで…!」
自分でもびっくりするぐらい心が高ぶってるのがわかる。やっと聞けたあなたの名前…もっとあなたのことを教えて欲しい。
「わかったよ…イリス。これでいい?」
──頬が熱くなってる気がする。
「…うん…///。明日も…ここに…来ていい?」
「……見つからないようにしてよ?」
彼は少し困ってるようだけどこれで明日からは見てるだけじゃなくなる。
これまでみたいに見てるだけじゃなくて協力できることもあるだろう。
「うん!」
私にできることをしてあげよう。お節介かもしれないけど明日から私も頑張ってるリョウガに協力してあげたい気持ちが大きくなった。
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