ポトリ・15

____慶之介へ_____



この手帳を、お前に見せる事があるのなら


それは、俺が戦地から無事帰る事が出来た時。




御国の為と言いながら、本当は__。


本当は、無事に帰り..お前に逢いたい。


だがそれは、許されない事だろう。


叶わぬ事だろう。





毎日、毎日、お前の写真を見つめ


苦しい、辛い気持ちでいっぱいだ。




逢いたい。逢いたい。逢いたい。


ただ、ただ__逢いたいんだ。



逢いたい気持ちが、幾重にも重なり溢れて行く。


そんな気持ちが、俺を苦しめる。



お前を想い、胸が張り裂けそうな


そんな想いで、気持ちで__いっぱいです。




叶わぬ想いだと、許されぬ想いだと


分かってはいる。分かっているんだ。


でも___。


お前への、気持ちを止められない


止める事が、出来ないんだ。





俺の世界が終わりを告げ、


次、生まれ変わる事が出来たのなら。


その時は必ず、お前を探し出そう。


そして、今度は必ずお前に伝えよう


この気持ちを、この想いを。


俺の幾重にも重なり溢れ出す想いを___。





今日もまた、俺は書くだろう。便箋に書くのだろう。


出せぬ手紙を、燃やしてしまう手紙を。


許されぬ想いと知りながら、書いてしまうんだ。


出せぬ手紙を、お前を想い苦しみながら書くのだ。





もし、もしも。


無事に、無事に帰る事が出来たなら


許される事なら。




この腕で、俺のこの腕で。



お前を抱き締め、頬を撫で


口付けをしよう。




叶わぬ願いだ。


分かっている。分かっているんだ。




慶之介、お前に逢いたい。





  ___幸一______

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