ポトリ・12

2人で庭に着き、驚いた____。


さっきまで、鮮やかに咲いていた椿の花は


嘘の様に、ポトリ__ポトリと花を落とし


椿の木の下を、紅く染めていた。



雪と椿の花の__

紅と白のコントラスト_______。




____紅い絨毯の下_______





椿の木の下に立ち、慶さんは呟く。


「ここ・・。

 ここの下にある、あるの__きっと。」


紅い絨毯に、慶さんはポロポロと涙を零す。


止めどなく溢れる涙が零れた場所を


オレは、一心不乱に椿の花と雪と土を掘り返した__。



「龍一く・ん・・手___。」



冷たいもの汚れるのもお構いなしに


オレは__オレだけじゃない想いが


椿の花を雪を、土を掘って行く。





カツンッッ______。




何かがオレの爪に触れた。


急いで土をどかす_____。



「あ___コレ・・。」



_____ブリキの・・箱。_____





錆びて朽ちた、ブリキの箱


急いで取り出し、固い蓋を開けた_____。




_____________





中には、慶之介さんの___。


たくさんの気持ちが、たくさんの想いが


せ返る程に溢れていた______。





幸一お祖父さんの写真、3枚の中の2枚目・・。


戦地からの皆に宛てた手紙。


ビー玉、御守り、折り紙、紙風船


古びたハンカチチーフ。


・・たくさんのたくさんの


幸一お祖父さんとの思い出の品。




・・そして___。


幸一お祖父さんへ、出せなかった手紙____。





「__これ・・・。」


慶さんは、そっと手紙を取り


胸元に握り締め、ポロポロと涙を零す。




まるで自分の事の様に_______。




「慶さ・ん・・。」



「あぁ・・どうしよう・・。

 涙が、涙が止まらないの・・・。

 胸がギュッと苦しくって____。」



慶さんはポロポロと涙を零しながら


震えた細い指で封筒を開け


手紙を開いた___________。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る