Twitter300字SS 第75回〜

草群 鶏

第75回「届く」・夏の女王

 先触れ歌うは朝顔の花

 伸び上がる蔓は高く高く 果てまで届けと喇叭が響く

 赤紫の一番花は人の子の岸辺に 露台の片隅で凛と咲く

 女王の御座は調った いざや祝わん、夏の訪れを!

「というわけで邪魔するぞ、人間」

「あっ、ちょっと」

 はじめに上がり込んできたのは、立派な身なりをした手のひらサイズの紳士だった。この尊大な〈女王の側近〉によると、どうもこの部屋が彼らの宴会場に選ばれてしまったらしい。堂々と居座る彼に手を焼くうちに、晃行の自宅には不思議な気配が満ち満ちていった。

「そんな勝手な……」

 えてして夏とは身勝手なもの。ベランダの朝顔がきっかけで宴への協力を求められた晃行は、首をかしげつつ素麺を茹でるのであった。

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