第二十話 鋼鉄の荒武者、推して参る!
「ボクの怒りがわかるかい、アラクネイル? ボクのヒーロー、真宮くんがピンチなんだよ……」
蜘蛛型怪獣アラクネイルはトウカのコントローラの支配され進行を止めた。
マンションの屋上から、小高い丘の上にある神社を睨みながらトウカはAボタンを連打する。
「何なんだよアイツら……真宮くんは、セレス病なんだぞ?! それをあんなベタベタ、ベタベタ、ベタベタ、ベタベタ、ベタベタと、ああぁぁぁぁーっ!」
イライラで息が切れそうになりしゃがみ込んで一旦休憩するトウカ。
マオの取り巻きが見ていない内にここまで走ってきたのだ。
「いけない、いけない……ボクの使命は嫉妬することじゃない。真宮くんの力を解放することだ」
大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせて怪獣アラクネイルを見る。
連打の効果で溜まったエネルギーは最大限に到達すると怪獣アラクネイルの口のが赤く点滅した。
「…………最後に勝つのはボクたちだよね真宮くん。命の危険に晒されるほど真宮くんは強くなる……今度は違うね、やっと来たんだ」
雑木林から立ち込める土煙を待ち望んだモノだとトウカは嬉しそうに眺めなから、コントローラのAとBのボタンを同時押しする。
怪獣アラクネイルは口を大きく開けて真っ赤な閃光を吐き出した。
「見せてくれ真宮くん!! 君の本当の力を、本当の姿を!! ボクに…………は?」
トウカは目を見開いた。
怪獣アラクネイルが放った極大のビーム砲は神社に到達することなく、立ち塞がった巨人によって斜め上に跳ね返されている。
「また違う……誰なんだよ、お前はっ!?」
エネルギーが尽き、勢いが弱まる怪獣アラクネイルのビームを弾き防いだ鋼鉄の侍。
レフィの“ザエモン”は怪獣アラクネイルを睨んだ。
◇◆◇◆◇
「ザエモンの“ヤタノカガミ”に防げぬものなしぃ……」
ビームを反射する両肩の大型シールドを前面から側面にスライドするザエモン。本体には傷ひとつ付いていなかった。
「ぶい!」
レフィとザエモンは後方を振り向いて神社のミツキたちに余裕のブイサインをして見せる。
「……レフィのザエモン、強いよ?」
すぐさま正面に向き直すとザエモンは一歩一歩、コンクリートの地面を踏み締めながら怪獣アラクネイルに立ち向かう。
◇◆◇◆◇
「のっそりとした動き……堅いだけの五月人形がなんだって言うのさ、アラクネイル!」
十字キー上を乱暴に何度も押すトウカ。
怪獣アラクネイルは六歩の足をバタつかせながらザエモンに突撃する。
「ジャンプ! ぺっしゃんこに押し潰されてよぉ!」
バネのように足を屈折させた飛び上がる怪獣アラクネイル。
その巨体でザエモンを真上から襲う。
ドドーン、と怪獣アラクネイルが勢いよく落下した衝撃が大地震を引き起こす。
激しい震動は周辺の建物は窓ガラスを粉々に砕き、築何十年も建っている古い家屋は一撃で倒壊した。
「ふふふ、ハハハ……もう、わらっちゃうんだよね」
トウカも地震の揺れで床に転がり、空を見上げながら言った。
「よっこいしょ。さぁて、粉々のお煎餅サムライはぁ………………」
手すりに掴まって立ち上がるトウカは状況を伺う。
そこから見えたのは巨大なクレーターだ。
ドーム状に深く抉れた底に鎮座する怪獣アラクネイル。
その背後には土や泥で汚れながらも真っ直ぐ仁王立ちで健在するザエモンの姿があった。
◇◆◇◆◇
「……レフィの剣のマスター言ってた。刃の乱れは心の乱れ、正しき心を持てはナマクラでも岩を断つ、って」
師の言葉を思い出したレフィの目付きが変わる。
ザエモンは背負った大刀を力強く握った。
「ちぇすとぉぉーっ!」
レフィの掛け声と共に弧を描く刃の一閃。
超音波を発生させ高速振動する特殊ブレードがザエモンの倍以上ある怪獣アラクネイルの巨体を真っ二つに両断。
怪獣アラクネイルは爆散した。
◇◆◇◆◇
二度目の敗北を味わったトウカだったが、その表情に悔しさは微塵もなかった。
「………………ふっ……ふふふ、真宮くん。本当に良い仲間を持ったね……でも、違う。本当に君の隣に相応しいのはボクだけなんだよ。今度こそは君と合体したいね」
不気味な笑みを浮かべて、トウカは夕闇に消えた。
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