どこかの誰かの日常短編集
土蛇 尚
もう図書室には行けないけれど
「あのさ、切ない話って好き?」
図鑑用の高い本棚に隠れておかれている机と椅子。そこであの子はいつも本を読んでいる。僕の学科より偏差値が6ほど高いクラスの人。
「切ない話はあまり読まないかな。」
彼女の少し薄くて気疲れしたような、だけど真っ直ぐな目を向けられ僕は嘘をついた。僕は本を読みに来てるわけじゃなくて、この女の子に会いに図書室に来てる。淡い恋心ってやつ。
僕たちは高3になった。読書のふりは受験勉強のふりに変わった。
どこ受けんの?そう聞くと雲の上の様な上位校の名前が出てきた。聞かなければよかった。
「すごいね。頑張って。」
卒業式のあと、図書館でその子と会った。
「代表の挨拶良かったよ。お疲れ様。」
「ううん、県大でも頑張って。」
この子に進学先を話した事あったけ。まぁいいか。
僕たちは交差することなく進み続ける。この先も。
「切ない」 「淡い」 「交差」
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