絶望ちゃんと同居生活

蓮蠱

絶望ちゃん誕生編

第1話 彼女実態は今

俺は今日から東京に住むことになった。理由は春から大学生となり、東京にある陸上の有名校である光洋大学に入学が決まったからだ。住む場所は幼馴染である桐生三由奈の親戚の大原若菜(おおはらわかな)さんが大家をしているアパート。三由奈は俺の一つ下でアイドルをしていた。しかし、不祥事を起こしたとせいでグループ脱退。そして、事務所を退所した。結局は誤報だっと発覚したらしいが、詳しいことは分からずに終わった。今は新たなことに挑戦するため、頑張っているらしい。もし俺が東京の大学に行ったら若菜さんのアパートで近くに住むことを約束していた。だから、寮ではなく若菜さんのアパートでお世話になることを決めた。

 

俺と三由奈が会うのはあいつが東京に行った中学三年のときからだし、約三年となる。あいつは進学するのか、それともまた、アイドルになるのか大事な時期になるし、俺の出来ることはやろうと考えている。


「お、颯君久しぶり」

 アパートの目の前で若菜さんが待っていてくれた。颯とは俺のことで名前は新島颯(にいじまはやて)という。

「お久しぶりです。大原さん」

「若菜でいいから。ほんと固いね」

 さすがに年上にいきなりそんななれなれしくするのも少し抵抗がある。

「もう少し慣れてきたら少しずつ呼ぶようにします」

 っとはいったものの呼び捨てにすることはないだろう。

「じゃー期待してるね」

 

 会話はすぐに終わり部屋に行くため階段を上った。

「えーと君には隠してたけど三由奈と同じ部屋だから」

「え、大丈夫ですか?」

 あいつは元アイドル。俺みたいな人間と同居してるのまずいだろ。もし、三由奈がアイドルを再開と叶ったら彼氏うんぬんとかのニュースになる可能性があるだろうし。

「君の心配していることは部屋の中が見られなければ問題じゃないから安心して。分かりやすく言えば、本来は二部屋だったのが壁を無くして一つの部屋にした感じ。その工事の影響で、風呂とトイレはひとつだけ。でも、今後のために扉は二つにしてあるの」

 普通は聞いたことのない工事方法だが、まー深くは考えないでおこう。そもそも抵抗があろうがなかろうがここで拒否をしたら部屋なくなるし受け入れるしかないな。


三由奈とは東京に行ってからはメールでやりとりした。っといってもほとんどしてないし、現状どうなっているのかは想像がつかない。

「あいつ元気ですか?」

「それは部屋に入ればわかるよ」

 何か言い方がおかしい。元気なら普通に元気といえばいいはず。

「ここが君らの部屋」

 見た感じは完全に二つの部屋って感じがする。

「ちょっと待ってね」

 若菜さんが、ポケットから鍵を取り出した。インターホンだとでないとかのタイプなのだろうか。


あいつと久しぶりに会うんだな。もともとかわいいあいつが、もっとかわいくなってるし、実際に会うのが楽しみすぎる。


扉を開けると玄関にお盆に乗せられて調理されたご飯がおいてあった。

「今日も食べないか。三由奈あなたの同居人連れてきたよ」

 日中にしては真っ暗だよな。ほんとにあいついるのかわかないくらいに。

「いるんすか?」

「今わかるよ」

 奥のほうを見ると布団が動いたのが見えた。そして、細い足がみえてきた。そして、痩せ細っている状態。そして、髪はぼさぼさしている少女が姿を見せた。髪は顔が見えないくらい長くなっている。正直ホラーだぞまじで。

 三由奈が少しずつこっちにきた。

「久しぶりだな三由奈」

「でていって!!」

 いきなり小さな声で怒鳴られた。

「おいその言い方」

「でて、いって」

 次は何か泣きそうな感じで聞こえた。

「やっぱりか。わかったいったんでよ」

「え」

 何も話せず俺は外に出た。


「どういうことっすか?あいつ、あんなになってて、ほんとにいろいろ頑張ってるんですか?」

 アイドルの夢を諦めず新しい方向に向かって頑張り始めた。俺はそう聞いている。だが、今見た姿はそんなのを感じれない。逆にアイドルの夢が途絶えたせいで絶望した姿だ。

「君には話しておかないとかやっぱり。いったん私の部屋来て」


 そのまま階段を下りて若菜さんの部屋に入った。

「何か飲む?」

「そんなのいいっすからあいつ何があったんですか」

 悪い空気を和ませようとしているのだろうけど、そんなことしていられなかった。

「わかった。とりあえず、これ」

 若菜さんがスマホを見せてきた。

「これは?」

「三由奈のスマホ。これで、君たちに報告してた。三由奈は今精神が崩壊している状態。何も見たくなく、誰とも話したくないって感じ」

 見せてきたのはたしかに三由奈のスマホであった。俺とのやり取りもしっかりとある。

「だったらなんで、それを親に言わないんですか?」

 元々否定的だった親だし、このことを知られるのはまずのはわかっている。とはいえ、ばれるのも時間の問題だとも思える。

「ごめん隠してた。今この状況を知らせるわけにはいかないから。三由奈をあんなのにしたのは私のせいだし。三由奈が復活できるまでは、何とかいろいろ理由をつけて。」

 自分のせい。そんなわけはない。追放そして、誤報。原因なんていくらでもあるはずだ。

「でも、電話とかもしてた。それは?」

 もし、若菜さんが言っていることがすべてなのなら、三由奈の親が電話で話した人が三由奈でないことになる。

「あの子の兄に声を寄せたソフト作ってもらったの。一緒に暮らしていたし全部知ってる人だから協力してもらった」

 三由奈の兄は光(ひかる)兄のことだ。光兄は、三由奈と八つ違い(俺とは七つ違い)。誰よりもアイドルになるという夢を応援していた。もし、光兄の説得がなかったら挑戦すらできなかったと思う。関東を中心にしている企業働いていたが、今は地方のほうのリーダーとして仕事をしていると聞いている。一緒に暮らしていたってことは、部屋を広くしたのはそれが原因ってことか。身内のためなら何かする。それならまだ、納得はできるな。

「だとしても無理があるでしょ」

 声なんて何度も聞いていれば違和感を感じてくると思う。

「光君がいなかったらとっくにばれてるよ。でも、何かおかしいと思えば光君が親に説明をしていた。両親は光君のことは信用してるからね」

 そんなの奇跡としかいいようがない。それに、それが三由奈のためだというのが、わからない。

「だけどですよ。それが、ばれたら三由奈は」

 そもそも反対した人たちが、この状況になっても呼び戻さないことすら不自然すぎる。

「ばれれば三由奈は自由にできなくなるかもね。反対したのに押し通してこの有様だし。だけど、考えてみて。もともと親は反対だった。なんとか光君が説得したおかげで挑戦できた。そのおかげで光君のことをすごく尊敬している。そんな光君ですら無理やり部屋にいただけで、ほとんど話せていない。だったらもう、一人でいさせること以外に正解なんてないと思わない?誰かが支えられたほうが復活できる。そんなのは三由奈には関係ないというのが私たちの答えになったの」

「なら、俺を三由奈と住ませる理由は?」

 若菜さんが言っていたことも行動も理解することができた。だったら俺を巻き込む理由がわからない。

「隠していたのは光君がそうしろといったから。詳しくはあの人に聞いて。私が思うのはあなたが、最後の希望。夢を後押したとき君はいた。君が陸上でいい結果を出すとあの子は喜んでた。東京方面の大会があるとあの子、必ず試合を見に行ってた。あなたの頑張る姿を見ることが、何よりも自信と勇気になるといっていた。三由奈はつねにあなたを見ていた。だからこそ、あなたならあの子を変えられると思う」


 自信と勇気か。それを無くしこもったのかあいつは。助けれるのか俺が。あいつの希望にまたなれるのだろうか。


「しょうがないですね」

 そんなこと考える必要はないよな。

「あいつがまた前に進めるよう頑張ります」

 だって、あいつが、俺から勇気をもらえていたのなら、俺だってあいつからたくさんのものをもらったんだ。その恩返しはしなきゃいけないよな。


「ありがとう」

 陸上で忙しくなるだろうし、早めにまともに話せるくらいにはなっておかないと。その前に一番の問題は、あいつの部屋にどうやって入るかだよな。

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