男の娘ニンジャ、ドラゴンおばさんをディスる!?
「ハンデキャップだよ。ボクの方が、キミよりカワイイからね」
ウインクして、アナンターシャを挑発した。
「どこまでおちょくれば、気が済むのかねえ! このチビは!」
アナンターシャの怒りが、さらにヒートアップする。
それでいい。気分が悪くなりそうだけれど、今はアナンターシャのヘイトを稼ぐ。ボクに注意をひきつけて、ルティアかキュアノの攻撃が利きさえすれば。
下水道のような口が、大きく開かれる。漆黒の炎が、ノドの奥で灯った。
「そのカワイイ顔を、黒コゲにしてあげるよ!」
闇を圧縮した炎が、アナンターシャの口から放たれる。
キュアノとルティアは左右へ、ボクは天井へ逃げた。
炎が、天井をやや溶かす。業火の火力は、落ちているようだ。天井を突き破るほどでもない。それでも、人間に当たったらヤバいだろう。
「さっきより、威力が弱いね。連発はキツイかい、おばさん? 年には勝てないみたいだね?」
「ガキがっ! こしゃくな!」
大ぶりの爪が、ボクに襲いかかってきた。
ボクは大げさに、爪の攻撃をかわす。
爪は派手に、天井をえぐった。こちらも当たると痛そうだ。
「このやろう!」
騎銃を槍のように構えて、ルティアが突進する。
しかし、騎銃の刃物がアナンターシャの全身から溢れる瘴気で溶けた。
「ぐお!?」
『瘴気にやられて、近づけないのです!』
ゼロ距離となったルティアに、アナンターシャの無慈悲なシッポが飛んでくる。
「ちいいいいい!」
騎銃を密着状態で構えて、ルティアは雷撃を放った。爆風の勢いで後ろへと下がり、シッポ攻撃をかわす。
空振りしたシッポが、宮殿の柱をへし折った。返す刀でガレキを弾き飛ばす。
また三人とも、回避を余儀なくされた。
「くすぐったいわい」
雷撃を受けたアナンターシャは、無傷である。攻撃を受けた部分を、爪でかいているのみ。
天井から不意をついて、脳天へ刀を浴びせようかとも考えた。しかし、あれだけ強固な皮膚なら結果は見えている。全身から漏れる瘴気のせいで、刃物も腐食してしまう。
いったい、どうすれば……。
ん、待てよ。
天井から降りて、ボクはキュアノの手首を握った。
「キュアノ、天井の穴をもう少し開けられないかな?」
アナンターシャを天井から観察したとき、あることに気がついたのである。
「どうして?」
「ヤツの弱点がわかった気がするんだ」
ボクら三人は集まって、作戦会議を立てた。
「そういえば、シュータ、キミはすごい雷撃を撃つじゃないか。パワーはどこから取り込むの?」
『太陽光なのです。でも、こうも太陽から遠いと、チャージが難しいのです』
だったら、なおさらボクの作戦を聞いてもらわないと。
「マジか? それでトドメがさせるのか?」
ボクの話を聞いて、ルティアが不審がった。
「おそらくは」
確証はない。けれど、試す意味はあると思う。
『無茶なのです! アナンターシャに単身飛び込むなんて!』
「しかし、ヤツの油断を誘うには誰かが犠牲にならないと」
その適任者は、足の早いボクだ。
攻撃力の高いルティアでも、防御力の高いキュアノでもなく。
「やってみる価値はあるが、お前がどうなってしまうのか」
「そうなったら、それだけの男だったってだけさ」
「強がるな! 無謀と勇気を履き違えてんじゃねえよ!」
ルティアは、ボクとシュータを重ねて心配してくれているのだろう。
「ありがとう、気にかけてくれて。でもいいんだ。そこまで心配してくれる人がいるってだけで、ボクは戦える!」
再びボクは分銅を用いて、天井に張り付く。
「こっちだ化け物! 可愛いボクを食べたいだろ!」
自分でも寒気がするくらいのセリフだが、アナンターシャを挑発するには十分だ。
「おのれえ! お前を食って若返ってやるよ!」
アナンターシャの腕がボクに伸びてくる。
だが、爪が天井をえぐっただけで、ボクには当たらない。
「どうした? ボクはここだぞ、邪竜のお嬢さん! いやおばさんかな?」
分銅で移動しながら、アナンターシャの爪をかわす。
「生意気なガキだね。シッポの下敷きになりな!」
腰を浮かせ、シッポをはたき代わりに振った。
「おっ、ほっ、やっ! どうしたの、老眼なのかな? 全然当たんないじゃん。ホルストならカウンターでシッポを切り落としているだろうよ!」
アナンターシャに向けて、お尻を叩く。
「ぐぬぬぬぅ!」
黒いシッポが、さらに加速した。
やはりだ。アナンターシャは「業火を撃ってこない」でいる。チャージ時間があるようだ。
「ぬううっ! この手は、使いたくなかったんだけどね!」
アナンターシャが、腕をさすっている。何か、奥の手があるのか?
こすった手を、こちらに振り払った。何かベトベトしたものが飛んでくる。
「まずい!」
肩に、粘液のようなものがかかった。ジュッ! と音を立てて、肩から先が溶ける。
「ドロドロになった自分のウロコを、飛ばしてきた?」
「そうさ! 皮膚を剥がすことになるから使用は避けていたんだけどね」
息を荒くしながら、アナンターシャがニヤリと笑う。
そうやって、余裕ぶっているがいい。
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