第300話 ツインエンジンとオーバーホールキット
まぁ、結局のところ、リビルドしかないねって事で、リビルドになったんだけど、問題はどこで手に入れるかだよね。
「まぁ、手堅くディーラーだよね」
確かに、優子の言う事はごもっともだ。
前に結衣のエアコンが壊れた時も、リビルドでの修理を提案されたくらいだから、今回もそれが期待できちゃうかもね。
でもって一応、他にないかなぁ……。
「前にエアコンの時に言われたんだけど、電装屋さんって所で、相談するのも良いらしいぞ」
結衣が言った。
確かに、そういう手もあるよね。
でも、兄貴が電装屋さんって所は、とてもムカつく場所だから、絶対行かないって言ってたなぁ。
「そうなの?」
あぁ優子、なんか2~3軒行ったんだけど、どこも態度が悪かったって。
うち1軒は、ネジ穴をバカにしたのを黙っていて、あとで兄貴が見つけたら逆ギレしたんだってさ。
そしたら兄貴がキレちゃってさ。
「マイのお兄さんがキレるなんて、珍しいね~」
そうなんだぞ、柚月。
その頃、兄貴はちょくちょくレース関係やら雑誌関係に顔を出してたから、兄貴の囲み記事の中に、ほぼ分かるような伏字で『サイテーな店』って紹介したんだってさ、そしたら1週間もしないうちに謝りに来たんだって。
でも兄貴『俺がそっち関係だって分かってなきゃ、そのまま押し切ったんだろ?』って言って、追い返したらしいよ。
兄貴はキレても暴力に訴えるんじゃなくて、女子のイジメみたいな方法使うんだよね、まったく女々しい奴だよ。
「さすが、マイのお兄さん! クールなやり方が一味違うよね」
しまった! ここには兄貴のシンパが1人いたんだ。
あのね優子、こういうのはクールじゃなくて、陰湿って言うんだと思うよ。
さて、兄貴の話はここまでにして、電装屋さんは手堅くパスしよう。
さっきの話からすると、きっと私らがJKだからって、舐めてかかられると思うしね。
あれ? 確かリビルドって、再生品の事だよね。
私の脳裏にはある場所が浮かんでいた。
◇◆◇◆◇
「おおっ!? 今日はどんな部品を探しに来たんだい?」
私は、柚月と部を途中で抜けて、解体屋さんへとやって来た。
そう言われてみれば、このおじさんは、エアコンのコンプレッサーのオーバーホールをやってしまうようなツワモノだった。
きっと、オルタネータに関しても、なんかしらの情報を持っているに違いない。
私は、今までの経緯を、おじさんに話してみると、おじさんはニカッとして
「それなら、ウチでもやってるぞ。そこまで難しい作業じゃないから、おススメは自分でオーバーホールするんだ。そうすればGT-R用を流用することだって可能だ」
と言って、倉庫の方を指さした。
なるほど、リビルドの場合は、外した現品を送り返すから、違う種類のオルタネータを流用できないけど、ここにある解体部品を使えば、返送の必要もないってわけかぁ。
おじさんは、何故かオーバーホール用の部品も大量に持っていたので、それらを買って作業を進める事にした。
値段的には、リビルド品を買うより少し安い程度なんだけど、私らは時間に余裕はあるし、折角だからGT-R用にして、容量アップを図るのが良いんじゃないかと思うんだよ。
「私には、時間に余裕はないよ~」
そうかぁ、柚月は今日からセニアカーに乗って通学するから、時間が無かったんだよねぇ
「ゴメンなさい~!」
しばらく、パンツ脱いで学校来たら?
おじさんから受け取ったオーバーホールキットと、オルタネータを持って、ひとまずガレージに戻った。
「どうだった?」
結衣、やっぱりおじさんは持ってたよ。
それで折角だから、若干でも安くなる自分でオーバーホールする事にして、GT-R用のオルタネータにする事にしたよ。
「でもって、自分でオーバーホールなんて、できるの?」
優子は、なんでここに来て弱気な事言ってるのかな? かな?
私らって、ここまで、どれだけの作業こなしてきてるのよ。ブレーキなんて、もう何回もオーバーホールしてるじゃん! やってできない事だったら、おじさんだって止めると思うよ。
「そっかぁ!」
そうだよ。
それにさ、もしミスっても、柚月の車なんだから、ぶっちゃけどうでもいいしね。
「聞こえてるぞ~!」
だって、柚月はR32壊れても、セニアカーがあるんだからいいじゃん。
「全然良くないよ!」
だったら、若菜ちゃんのビーノのエンジンと、柚月のメイトのエンジン積めばいいじゃん。50ccと90ccのツインエンジンだよ。こりゃぁモンタジ(※カルタスやエスクードのツインエンジン車で競技に出ていたレーサーの愛称、モンスター田嶋なのでモンタジ。)もビックリだよ!
「良くない~!」
「マイ、だったら4WDにしてあげないと、モンタジはFRのブルーバードを改造して4WDにしちゃったんだよ」
優子が目を輝かせて言ってるよ。
そうかそうか、そう言われてみれば、モンタジは910ブルーバードに、ダットサントラックの駆動系を移植して4WDにしたんだよね。
せっかくのツインエンジンだし、これも4WDにしてあげないとね。
柚月、良かったね。これで冬場も安心だよ。
「良くないってばー!」
もう、わがままだな柚月は。
せっかくだからハイパワーEVって手もなくない?
元々EVだからさ、モーターをもっと強力なのに替えてあげれば、きっと学校のウケもよくなるよ。
さて、脱線はここまでにして、中身を見てみると、メインはブラシで、このブラシのすり減りが、オルタネータのヘタりの主な原因なんだって。
でもってブラシっていう名前だけどさ、全然ブラシに見えないよね。なんか太い針金がぐるぐる巻いてあってさ、ブラシっていうよりも、たわしって感じに見えるし。
他にはベアリングと、その他の部品があるね。
ブラシを含めても、部品総数で10くらいだから、そこまで難しい部品じゃなさそうだね。
ただ、固着してそうだから、その辺に細心の注意が必要だよね。
まぁ、これでざっとした作業の下見は終了だね。
あと、ベルトも3本とも新品に替えておかないとね。
せっかく、オルタネータ外すんだから、その時に外しちゃうベルトもいっぺんに新品に替えておけば、電気系の一新ができちゃうしね。
そうと決まれば、柚月は、まずはベルト買って来ておいてね、セニアカーで。
「イヤだー!」
なんでだよ、柚月の車が修理できるまでの愛車だよ? もっと愛着持って使って貰わないと。
「なんで、セニアカーになってるんだよ~。部車貸してくれるんじゃないのかよ~」
だから部車のセニアカーだよ。
「こんなの要らないー!」
しょうがないなぁ……じゃぁ、このタイプM乗って帰って良いよ、特別だからね。
「これ、夏タイヤの上に、ナンバー無いだろ~」
柚月はわがままだなぁ……じゃぁ、冬タイヤのアルテッツァね。
「あれも、ナンバー無いだろ~!」
じゃぁ、作業中の柚月の車からナンバー外して、しばらく拝借しよう。
「マイ~。怒るよ~!」
あのさ、私、柚月が何度も約束したのに、約束を破ったからセニアカーで帰れって言ってるのに、なんで柚月に怒られなきゃならない訳? しかも妥協して他の部車を貸してあげるって言ってるのに……だよ?
「ゴメンなさい~! 参りました~!」
あーあー、聞こえなーい。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『セニアカーのツインエンジンって作るの?』など、少しでも『!』と思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
次回は
遂に方向性が決まったオルタネータ修理。
次回からオーバーホールに入ります。
お楽しみに。
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