第268話 唐揚げとコンソール
あのさ、柚月いい加減にしなよ。
寝坊してお弁当作ってくるのを忘れたために、優子以外のメンバーで学食に行ったんだけど、柚月が定食の唐揚げが前より1個少ないって、おばさんに文句言ったせいで、無駄に時間を喰っちゃってさ、おかげで相席の上、結衣だけ違うテーブルに1人で行くハメになっちゃったじゃん!
「だって~」
だってもヘチマも無いんだよ!
大体、学食のおかずなんてのは目分量なんだよ、もしかしたら重さで決めてるのかもしれないけど、きちんと数が決まってる訳じゃないの!
前に柚月が取った時の方が間違えて1個多かったかもしれないのに、なんで無意味な権利を主張するんだよ。
「だったら~、マイは唐揚げが1個も無くても文句言わないの~?」
子供みたいな論理の飛躍をするなっ!
1個も無いのと、決まった個数なんてないのに、1個足らないなんて言うのとじゃ天と地ほどの差があるだろうが。
柚月みたいな論点ずらして得意がってるのがいるから、世の中がおかしくなっちゃうんだよ。
柚月の言ってる事は、将棋の試合で時間いっぱいで負けそうになったら、いつの間にかオセロの試合に切り替えてるくらい、ムチャクチャで、筋が通らない事なんだよ。ハッキリ言えば試合で敵前逃亡してるのに、逃げながら『バカヤロー、私の勝ちだー!』って、言ってるくらい情けなくてカッコ悪いんだよ!
「うううう~~!」
バーカ、柚月のバーカ、伊武雅刀の歌みたいに泣けば済むと思ってるなよ!
悠梨、ここのところ撮って、youtubeで全世界に発信してやろうぜ~。
「やめろよー!」
うるさい! 定食に鼻水でも垂らしてろ、いい歳して、みんなが見てる前でくだらない事を……。
あ~ぁ、お恥ずかしったらありゃしない。高3にもなって、学食のおかずごときで泣きやがってさ。
ガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミ……。
まったく、あの辺のテーブルにいた人達がマジで引いちゃってたじゃん。
だから、柚月はダメなんだよ! 少しは反省しろってんだ!
もう、午後から柚月はハブね。誰も口きいちゃダメだからね。
「やめてよ~」
プイッ
結衣、悠梨、なんか後ろから不吉なオーラが迫って来てるから、急いで教室まで戻ろうよ。
「待てよー!」
◇◆◇◆◇
柚月の奴め、午後いっぱいみんなでハブにしてやったんだけどさ、反省の色が無いからガレージの床下のスペースに閉じ込めてきてやったぞ、あそこでしばらく反省してろっての!
さて、昨日の続きなんだけど、この小物入れのスペースの中に、100均で買って来たドリンクホルダーが入るか否かを調べるのと、入らない場合はどうしたら入るようになるのかを考えようと思ってるんだ。
「なんか、スペース的にギリギリな感じだね」
あ、燈梨、こっちの事はいいから、活動優先しててよ。
え? 今日はななみんが主導で、エッセとタイプMを使った基本点検講座が行われてるから燈梨と沙綾ちゃんは、出る幕が無いんだって?
あ、そう言えば、水野が週末あやかん連れて来てくれって言ってたなぁ。
あやかんも免許取れたし、そろそろ車、見つけてくれたのかなぁ?
「でもって、綾香は、直接先生の所に行ってるのを見かけたんだけどなぁ……」
マジ? だったら、水野め私に頼む必要なくね?
まず1つ目のホルダーなんだけど、最初の採寸した段階で怪しかったから、ちょっと懐疑的だったんだけど、やっぱりダメだね。ちょっと大きすぎるんだよね。
「でもさ、ちょっと削ればいけるんじゃね?」
悠梨、取り敢えず、それに関しては、全部やってみて、入るのが無かったら検討していく感じにしようよ。
2つ目も同じような感じだね。
さっきのよりも惜しい感じでの、ギリギリ入らない、だから、なんか角の方とか削ればいけるような……。
どうしたの結衣?
「マイ、こっちのはさっきのより肉厚が無いから、削ると危ないかもよ」
そうなの? って、結衣が叩いてくれてるけど、確かのこっちの音だと薄くて壊れちゃいそうだね。
え? まだ4つあるんだから、今で決めちゃうのは時期早計だって?
そうだね、残りの4つもやってみよう。
まずは、6つ買った中で一番ちゃちくて、缶のホールドしてるところが折れちゃいそうなのをいってみよう……って、今度はあっさり入っちゃったよ。
うん、一応缶をホールドするっていう目的に関しては出来そうだね。あとはペットボトルだけど、さすがにペットボトルは厳しいかなぁ……。
その後も試してみた結果、6つ中、3つは加工無しでギリギリ入るんだけど、それだとどうにもホールドが微妙だからさ、なかなか難しいところだよね。
まぁ、なんに関しても言えるんだけどさ、一口に100均って言っても、出来の良し悪しは千差万別だからさ、このカップホルダーに関しても、ビックリするくらいしっかりしてるのと、ガチャガチャで出てくるおもちゃ以下のやつとかもあってさ、正直、こういうところでも、選択肢に入ってくるよね。
私的には、最初の方に見たやつが良いなぁ。
缶のホールドのところも結構しっかりしてるから、そうそう壊れたりしないと思うんだよね。
問題は、どこをどう削るかなんだけど……。
「マイ、削るのも良いんだけど、こっちを底上げするってのも考えた方が良くない?」
確かに、このシフトレバー後ろの窪みは、コンソールボックス側がスロープ形状になっているからここを平らに……か、でもさ底上げしすぎると、シフトチェンジする時に肘とかに当たるから、なるべく低くつけたいかなぁ……。
そこまで言って、ふと思い出したことがあった。
あの部車のタイプMがやって来た日、バラバラになった内装が室内に転がっていて、付け直そうとしたら、柚月から不要だと言われて、コンソールボックスごと、ガレージの中に放りっぱなしになっていたのだ。
「そうか、それを使ってスロープ状になってる内装の方を削っちゃえばいいのか!」
そうだよ悠梨、そうすれば、元々ついてる綺麗な内装の方は、スペアとして、元に戻したい時に戻せるしね。
私らは、ガレージを捜索しに行ったところ、ロッカーの上に無造作に放り投げられていたコンソールを見つけたので、ピックアップして洗浄を始めた。
「出してよ~!」
なんか床下から聞こえてくるような気がするけど、きっと空耳だね。
よし乾いたよ。
早速型取りしたいんだけど、私はそういうの正直下手だから、悠梨にお願いして良い?
「オッケ~!」
さすが悠梨は裁縫が得意なだけあって、型取りも凄くスムーズなんだよね。
え? 柚月も裁縫得意だろって? でも、今日柚月は学校休んだからさ、頼りは悠梨だけなんだよ。
「私は~、休みじゃない~!」
誰か、なんか言った?
言ってないか、やっぱり空耳だね……最近、空耳が酷いなぁ。
よし、リューターを使って、悠梨の型取りに沿って削っていってみよう。
おおっ、上手くいったよ。
正直、内装に穴を大きく開ける事になるから抵抗はあるんだけどさ、このカップホルダーがその場所に入る事で、穴自体は目立たなくなって、まるで純正品のようなマッチングになるって寸法なんだけど、どうかな?
早速カップホルダーを入れてみる……と、おぉっ!
さっき妄想……もとい、思い描いていたのと寸分違わぬ感じの、綺麗なマッチングになったよぉ。
これを、私の車のセンターコンソールと交換だぁ。
交換自体は簡単なんだよ。コンソールボックスの底面にあるネジを外してから、サイドブレーキのブーツを知恵の輪の要領で通してから、外してやる……と。
うん! これで、エアコンの吹出口の破損から始まった対策がひとまずは完成したって事で良いよね。
「出せ~~!!」
さぁーて、みんな、今日の部活動はかいさーん!
──────────────────────────────────────
■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『R32の飲料問題は根深いんだね!』など、少しでも『!』と思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けますと、大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
次回は
もう少しだけ、この問題は続きます。
お楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます