第230話 仲間と相棒
次は美咲さんのローレルだね。
これは、最後の型であるC35だね。
この型のローレルで現存してるのって、ターボだと、改造されまくって品の無いドリ車になってるやつか、ノーマルだと2000ccの通常グレードとかって両極端なんだけど、これはターボで外観はほぼノーマルっていう珍しい仕様だね。
「あんまりエアロパーツで、ごってりするのって好きじゃないのよね」
確かに、分かる気がする。
社外品のエアロパーツって、目立つのが目的なのが多いような気がするんだよ。
まぁ、それが商売につながるんだからしょうがない気もするけどね。
でも、大半のエアロパーツが、元の車のデザインを活かして……っていう訳じゃなくて、逆に殺したりしてるから、違和感で目立つんだよね。
室内は、やっぱり、今まで乗ってきた車とは、狙いが違うから、凝った作りになってるんだよね。
ダッシュボードの造形とか、結構うねりが大きくて、ダッシュボードを含めた内装全体が、結構柔らかい素材でできてるんだよね。
きっとバブル時代だったら、もっと色々な箇所に凝ったものが出来たんだと思うけど、それでもこの時代としては充分だったと思うよ。
エンジンルームを見ようと思って、外に出てこの車を改めて見ると、結構大きいんだな……って、改めて思うよ。
最近の車って、背は高くなってても、寸法は思ってたよりもコンパクトなのが多いんだけども、この車は逆で、背は低いんだけども、寸法は結構大きめだっていうのが、昔の車なんだなって思わされるね。
エンジンは、私らのR32と基本は同じエンジンだけど、2500ccな上に2世代分の改良が加えられた最終バージョンなんだよね。
見た目も結構変わってて、結構ゴツいカバーが付いてるんだよね。
『NEO Turbo』って、書いてあるよ。
美咲さんによると、マフラーとエアクリーナーだけで、ほとんどノーマルらしいよ。
「元々、280馬力もあるからね、FRって事も考えると、冬場に困るから」
って言ってた。
うん、正しいよね。悠梨のR33に積んである250馬力版でも凄いパワーだと思うのに、そこから更に30馬力も上がってるんでしょ、しかもマフラーが変わってるから、実質300馬力くらいは、出てそうだよね。
そんなモンスターなFR車を更にパワーアップしても、この辺だと冬場に扱えなくなるから、ぶっちゃけ邪魔になるんだよね、パワーが。
うん、なんか、みんなの個性が現れた車だよね。
本人が意識してるって訳じゃないんだろうけど、車にそれが現れてくるってのは、ある意味面白い現象だと私は思うんだよね。
「でも、ユイが車好きじゃなかったら、私たちもこうは、ならなかったと思うよ」
美咲さんが言うには、唯花さんが車いじりを始めたから、みんなが、それに影響されていったのであって、でなければ、朋美さんは別として、美咲さんも、貰ったままのAT車で乗っただろうし、フー子さんも、唯花さんの車好きが分かる前は、ジムニーにしようかと思っていたらしいので、やっぱり、仲間の影響力は大きいなぁ……と思わされたよ。
「じゃぁ、今度は、みんなの車を見せてよ」
美咲さんに背中を押されて、私らは今度は学生駐車場に移動した。
◇◆◇◆◇
「おおーっ! やっぱりこっちの学校は、自転車置き場が、バイク置き場になってるよ!」
フー子さんが興奮していた。
私もこの間、向こうの学校に行った時に案内されたけど、向こうはやっぱりチャリまでしかOKでないから、向こうの人にしてみれば、ここの光景は信じられないものなんだよね。
私はこの間、向こうの学校から、バイクや車通学の検討のために呼ばれた話をしてみた。
「マジかよー! ウチらの時は禁止してたくせに、今更ズルくね?」
「違うよ風子。こっちに生徒取られてるから、ようやく尻に火がついたんだよ」
フー子さんが言って、唯花さんが答えていた。
「でも、ウチらの高校だから、どうせあと2~3年後とか、言い出すんじゃね?」
「しかもさ、成績がクラスの上位10人まで……とか、言い出しかねないよね」
今度は朋美さんが言って、美咲さんが答えていた。
まぁ、確かに、導入を検討してる割りには、私らを呼んでの話だって、端々の歯切れが悪かったもんね。
さすが、あっちの学校のOBだけあるね。私よりも状況判断が的確だよ。
駐車場に着くと、またフー子さんが
「おおー! やっぱ凄ぇよ! 生徒用の駐車場だぜ。しかも、超広いよ!」
と感心していた。
「でも~、来年以降で、2階建てにするって話もあるからね~。生徒数もうなぎのぼりだからって、言ってたよ~」
何故か柚月がドヤ顔で付け加えると、フー子さんは
「くっそぉ~、ウチに更に差をつけようってのか! 許すまじ!」
と、突然柚月に掴みかかっていった。
「燈梨ぃ、やっちゃっても良いか~?」
「ダメ! フー子さん。ズッキーは、格闘技メチャクチャ強いから」
フー子さんの問いに、燈梨が慌てて止めに入った。
そこに、結衣が後ろからやって来て、2人を引き離した後で、柚月を羽交い絞めにして
「いいっすよ! やっちゃってください。大丈夫、コイツはいつもマイ達にやられてるから」
と言うと、フー子さんの方へとズイズイと進んでいった。
「よっしゃっ! ナイスパス」
「やめろ~!」
楽しげにじゃれ合う3人を置いて、私らは先へと進んだ。
「舞華ちゃん。柚月ちゃん大丈夫なの?」
美咲さんに訊かれたが、私はへらっとしながら言った。
「あぁ、アイツはいつもあんな感じなんで、放っといて大丈夫です」
駐車場に到着すると、いつの間にか唯花さんが前に出てきていて
「なんか、普通の車の中に、R32が混ざってて、妙に面白い光景だな~」
と言うと、一番手前にあった私の車の周りを一周して、室内や、タイヤの奥を覗き込んだり、這いつくばって、車底部を覗こうとしたりしていた。
鍵を開けると、唯花さんは
「おぉ~、キーレスエントリーになってるよ~!」
と、凄く感動していて、朋美さんも
「これ、どうやったの?」
と、喰い入るように訊いてきた。
どうやら、私と同じでキーレスがついていない時代の車なので、それがコンプレックスなのと、冬場に静電気にやられるのがネックだという、私と同じ悩みだった。
私が本体2千円、ガンモーター千円のキットだって言ったら、2人ともすごく喜んで、すぐにでもやろうって、勢いだったよ。
中を見た唯花さんが驚いたように言った。
「おぉ~、シートが変わってね?」
「これ、34GT-R用だよ!」
朋美さんが答えると、唯花さんが早速座って
「すげぇよ! 純正とは思えないホールド感が、たまらないよ~」
と感動していた。
それを見ていた美咲さんも
「そんなに違うの?」
と、訊いてきたので
「純正から替えた時、結構ガッチリしてて、驚きましたよ」
と答えると、フンスーと鼻息を出しながら
「ちょっと座らせてね」
と、今までになく積極的に言っていた。
美咲さんが運転席を見た後で助手席に移ると、朋美さんが運転席に乗ってきた。
そして、ポジションを合わせると
「凄いね。R32になると、結構タイトな感じになっててさ、違いに驚いちゃう」
と、素直にビックリしていた。
さっき、朋美さんのR30に乗った時には、そこまでの違いは感じなかったと言うと、朋美さんは
「逆は気がつかないもんだよ。緩い方からきつい方に移ると、より違いに驚くんだよ」
と言って、しみじみとした表情になって静かにハンドルを握っていた。それは、私の車から感じる余韻に浸っているようにも見えた。
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『今度は、遂にみんなのR32の番なの?』など、少しでも思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
次回は
舞華たちのR32を囲んで始まった、互いの車の見せ合い。
車好きにはたまらないこの催しは、次回も続きます。
お楽しみに。
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