第218話 潜む危険と職員会議
取り敢えず、サファリとGTEでスタート地点まで戻ってきた。
救出後は、サファリを運転したんだけど、確かに、燈梨の言う通り、ボディが四角いから見切りは凄く良いんだ。
だから、運転は思ったよりしやすいよ。
ただ、ボンネットよりもフェンダーの方が張り出してるデザインだから、ほんの少し、余裕を見ておくのと、ミラーを基準に幅を考えて運転すればいいくらいかな。
ただ、結構曲がり辛いから、こういうところでは、滑らせるの前提で走った方が良いかもね。
燈梨が言ってたけど、こういう本格的な4WDは、今の頭のいいSUVと違って、センサーが道路状況を読んで前後の配分を考えたりしない、原始的な0対100か、50対50なんだって、だから4WD状態だと曲がり辛くなるんだってさ。
ちなみに燈梨は、向こうでは舗装路だったから、いつも2WDで走らせてたんだって。
戻って来ると、水野は相も変わらず、電話中だったので、まずは、車の状態をみんなで確認することにした。
「結構、草食べちゃってますねぇ~」
ななみんが言った。
草を食べてるってのは、車を草むらとかに突っ込ませると、車底部やバンパーの開口部に草が詰まっちゃって、まるで、車が草を食べてるように見えちゃうから呼ばれてるんだよ。
車底部は、後でガレージの潜れるところに入れて見てみないと……だけど、パッと見た目は、土と草が結構もっさもさな以外は、特に酷い状態ではないね。
へこんだり、漏ったりした形跡はないから、今のところは問題なしと言えるのかな?
エンジンルームは、外観の割りには、あまり侵入した形跡はないね。
でも、一応エアクリーナーボックスを外して、掃除しておいた方が良いよね、土とか、草とかが入ったかもしれないからね。
足回りは、タイヤを外してみないと何とも言えないけど、恐らく下から見た感じは、ロアアームとかの曲がりは、目視で確認は出来なかったよ。
ただ、こればっかりは外して見てみないと分からないのと、さっきの土手越えの前からだけど、純正のショックアブソーバーは、経年劣化で、抜けかかってたのが、もう完全に抜けちゃったんだよね。
まぁ、概ね問題はないとは思うけど、一応、今日のところは中止がベストだと思うよ。
もしくは、セーブしながら走って貰うかだね。
一応、課題も見つかっちゃったし、それの懸念もあるからね。水野が戻って来るのを待って判断を仰ごう。
「先生が来るのを待ってたら、日が暮れちゃうっスよ~。それに、課題って何ですか?」
でも、そこの菌が事故起こした後に、監督者なしで続行して、また事故起こったら、責任問題だからね。
ななみんは、そんなに水野を、この部から追い出したいのか~。まぁ、気持ちは分かるよ。でも、今、水野を追い出すと、顧問を引き受けてくれる先生がいないから、それこそ教頭が顧問になるかもよ。
え? 課題についてはね……教えてあげないよ~ジャン!
まぁ、それは冗談だけど、実際に走ってみてってのもあるし、今のアクシデントを見ても……ってのもあるから、とにかく水野の帰還を待つとしようよ。
その間に、せっかく穴も掘ったんだし、この菌を埋めてしまおうよ。
「そうっスね、仏心を出した自分がいけなかったっス! 諸悪の根源は埋めてしまうに限るっス!」
ななみんも、ようやく分かってくれたか~。
よし、私が捕まえてるから、ななみんは縛って穴まで連れて行く係ね。
「やめろ~!」
うるさい、菌め! お前のせいでみんなが迷惑してるってのに、ジタバタ暴れやがって、大人しくお縄につけやい!
暴れる菌を追い回しているところに、ようやく水野が戻ってきた。
「申し訳ない、ちょっと明日の会議資料の提出の件で野暮用があってね。……救出は済んだようだね」
うん、もう、何の用で怒られてたか分かっちゃったよ。
明日の職員会議用の資料の提出をサボったんじゃね? 資料の提出の件って言ったら、提出してないくらいしか考えられないんだけど。
しかも、それって全然野暮用じゃないよね。職員会議って、明日の朝一とかじゃないの?
まぁ、もういいや。水野が明日の朝、教頭から死ぬほど怒られてても、私らの知ったこっちゃないしね。
取り敢えず、救出は終わって、車の点検は目視と復路走行では問題が無かった件、一応ガレージで明日点検した方が良い件について、燈梨が水野に説明したよ。
それじゃぁ、私からは走行しての感想と課題を。
コースの感想は、低μ路の走行練習用としては、道幅が狭いけど、良いと思うのと、ダートの練習コースだったら、道幅的にも近いからジャストフィットだと思います。
ただ、結構挙動が初心者には急激に来るのと、立て直しが間に合わない事が充分予想されるので、走行練習をメインにするなら、コースを広くするか、別に練習スペースを作った方が事故車が出て、コース整備に奔走するだけで1日が終わる……って、いう事は無くなると思います。
あと、ヘルメット着用は分かるんですけど、このコースだと、速度と角度によっては、いとも簡単に車が転がるので、安全装備がそれだけだと足らないと思います。
「足らないって~?」
菌は発言禁止なんだけどなぁ、まぁ、心の広い大人の女な私が答えてあげるね。さっきの柚菌の事故だって、もう少しスピードが出てて、土手に鋭角に乗り上がってれば、見事に横転したからね。
「ええっ!?」
みんなが驚くのも無理はないけど、これは走らせた私だから分かる事なんだよ。
車って、速度と角度が揃ってると、『えっ!? なんで?』っていうくらいの速度でもあっさりひっくり返るからね。
ここは、その条件が揃っちゃってるんだよ。
「なんで、そんなに詳しいの?」
え? それは燈梨ね、ウチの兄貴が何台も車を横転させてるからだよ。
私が小学生の頃から、覚えてるだけで7台くらい横転させてるし、ある時なんて、ドリフトコンテストに出場するのに、当時乗ってたハチイチマークIIって車で出かけて行って、夕方に、屋根の高さが半分くらいになって、ガラスが無い状態で帰ってきたからね。
それで、本題に戻るんですけど、この練習場走る車は、ロールバー? ってのを入れてないと危ないと思うんですよ。部車のタイプMとか、ノートとかに入ってるやつ。
「でも~、マイは、自分の車には要らない派じゃなかったっけ~?」
うるさいな、菌のくせに、街乗りする車には要らないって言ってるだけで、ここで練習する車には必須だよ。
特に、1、2年生が乗ることを考えたら、私は、1台は必ず横転すると思うほどだよ。
「ええっ!?」
みんな大袈裟すぎるんだよ……って、走らせてないから分からないんだろうけど、ここって、グリップが低いから、ツルツル滑るんだよ。だから、初心者は、結構ハンドル切りまくっちゃうと思うんだよね。
その上で、未舗装で、結構前走車の
私が説明していると、背後から水野がぬっと現れて言った。
「その通りだ。しかし、それを部にある車全てに装備する訳にもいかないし、運搬の問題もあるので、ここ専用の練習車両を選定したいと思って、今日はコースの下見に呼んだ次第だ」
燈梨とななみんは、相も変わらず水野に耐性ができてないね。
このくらいのは想定してないとさ。
しかし、やっぱり水野も無茶振りだよ。
最初から、変にオブラートに包まないで、この4人にだけ狙いを話せばいいんだよ。
本当に頭痛いなぁ……。
「そこで、提案がある」
水野の言葉に余計頭が痛くなっちゃったよ……。
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■あとがき■
お読み頂きありがとうございます。
『続きが気になるっ!』『毎回事故が起こってたら、部車、無くなっちゃうんじゃないの?』など、少しでも思いましたら
【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。
よろしくお願いします。
次回は
水野の物凄い提案が炸裂します。
お楽しみに。
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