第180話 3年生と稀有な存在

 じゃぁ、燈梨、メンバーの紹介ね。

 え? 1、2年生とは、昨日顔合わせしてるって?


 オイ、何のために今日個別で、私を呼び出したんだよぉ、七海ぃ!


 「私は、先輩方と、先生の指示に従っただけです」


 上から言われたら、自分の考えなく、首を縦に振るしかできないイエスマンか? そんな、擦れた大人になってから覚えるような事を、ティーンのうちから使いこなすようになるなんて……私は、嘆かわしいよ、そんな七海ちゃんに、真人間に戻って貰うためには、心を鬼にして、スクワット500回だね。


 「ええーーーー!!」


 それが辛いなら、パンツ脱ぐって選択肢もあるけど、柚月以外の人間にそれ言うと、セクハラだからさ。


 「なんで~、私以外なんだよ~!」


 だって、柚月はしょっちゅうパンツ脱いでる痴女じゃん。

 訊く前に既に脱いでたり、履いて来てないって事もあるからさ。


 「そんな事、あるもんか~!」


 燈梨は、そのやりとりを見て、プッと吹き出していた。

 大体、いつも、こういうやりとりと、掛け合いで進んでくからさ、あんまり引かないで、どんどんこのノリに入っていって良いからね。


 「大丈夫、フー子さん達で慣れてるから」


 え? ふーこさん? 誰? こっちの話だって?

 でも、どっかで訊いたような名前なんだよな。


 まぁ、いいや。

 私と柚月は知ってるだろうから飛ばすとして、他の3年生を紹介していくね。


 コイツは、伊藤結衣。

 最近、自分の車をぶっ潰して、半べそになっていた、別名”カークラッシャー結衣”だから。

 みんなで2週間かかって、新しい車への入れ替え作業を、手伝ったからね。だから、しばらくはみんなの奴隷だから。 


 「マイ、勝手な設定作るなよ!」


 柚月、どう思う?


 「私も~、結衣はみんなの奴隷で良いと思うな~」


 ホラ見ろ。


 「マイの犬の、柚月の言う事なんか、参考になるもんか!」


 ナニ、犬って、マジ酷~い。

 じゃぁ、多数決を取ろう。結衣がみんなの奴隷で良いと思う人?

 ……ホラ見ろ、全体の3分の2以上の賛成が得られたぞ。多数決で決定だね。


 「くうっ……」


 さて、気を取り直して、次にコイツは、渡邉悠梨。

 燈梨も前に見たと思うけど、部車の外装を一手に手掛ける、スペシャリストだから。まぁ、S14に貼った学校のネーミングのステッカーはセンス無かったけど。


 「あれは、学校側からの指定が多かったんだよ!」


 そして、私らの中で、唯一R33に乗ってるから。

 排気量でみんなに勝とうとして、返り討ちに遭ったからね。


 「マイ、いらない情報を吹き込むなよ!」


 それで、コイツが、桜井優子、前に、イアンモールで会ってるよね?

 まぁ、見ての通り、体力的には弱いんで、その部分を、豊富な知識でカバーしてくれる、部の生き字引ってところかな?

 そして、この間、部室で、ぬか床漬けてた犯人だから。暫くはコイツの呼び名は『ぬか床ババァ』だからね。


 「マイの仕業ねー! 綾香とかが、私のことを『ぬか床婆ちゃん』とか呼ぶようになってたのは!」


 当たり前だろーが、部室をぬか臭くしやがって、ガレージならまだしも、換気のなってない夏休みの部室で、なんて事、してくれたんだよ!

 優子は来ないから良いだろうけど、ここで毎週着替えしてる1、2年生とか、役員打ち合わせでここに入る私らと水野とか、説明会に来た燈梨とかが、鼻が曲がりそうな思いをしたんだからな。


 さて、あとは、近々であるのが、耐久レースなんだ。

 説明の時にもチラッと触れたんだけど、今のところ、自動車部では、学生のジムカーナ大会と、学生以外の人たちも多く出場する耐久レースに出場するって事で、活動してるんだ。

 その耐久レースがもうすぐなんだ。私ら3年は出場するから必須として、2年生もサポートで来て貰うような予定になってるから、一応、話しておくね。


 それで、練習なんだけど……って、そうか、燈梨は免許持ってるから、どの車で練習しても良いし、他の1、2年生の補助も出来るんだね。

 素晴らしいよ! いや、今までは、3年生がいない日に、部活の開催が出来なくて困ってたんだけど、燈梨がいれば、2年生だけの日でも開催できるね。


 それじゃぁ、あとは2年生同士で色々打ち合わせで良い?

 七海ちゃん……だけど、スクワットしなきゃいけないから、他の娘で……。


 「終わりました!」


 ホントかなぁ?

 柚月ー、スクワット500回って、こんなに早く終わるの?


 「無理だね~」

 「ズッキー先輩! 言っちゃダメ!」


 あぁぁ……私は、信頼してた七海ちゃんに裏切られて、ガラスのハートが粉々に砕けちゃったよぉ……。

 

 「そんなぁ~」


 こうなったら、私はしばらく寝込んじゃうから、あとは柚月、お願い。


 「そうなったらぁ、ななみんには、取り敢えず~、パンツ脱いでもらおっかなぁ~」

 「ええーーっ!」

 「だってぇ、マイが寝込んじゃったらぁ、しばらく部活にならなくなるじゃん! マイにパンツお供えして、1日も早く回復して貰うんだよ~」


 オイ待て、いつの間にか、私がパンツ神宮みたいになってるぞ。


 「さぁ、パンツの神様にお参りしようねぇ~」


 オイコラ優子、やめろ~~!


◇◆◇◆◇


 燈梨と、七海ちゃん達の打ち合わせが終わった後、1、2年生を悠梨に任せて、文化祭準備に行って貰って、悠梨を抜いた3年で打ち合わせたんだ。


 それにしても、遂に燈梨が入学して、そして部に入ってくれるとは……グヘへへ。


 「マイ~、涎、ちゃんと拭いてね~」


 分かってるよ、ハンカチ……って、コレは柚月のパンツじゃないか? 

 めんどくさいから、これでいいや


 「やめろ~!」


 あ、取り上げられちゃったよ。

 大体さ、燃やしちゃうんだから、私が拭いたって変わりなくね? オイ、柚月、誰が履いていいって言ったんだよ!


 それにしても、燈梨を含めて、今回の6人も、また女子だよ~。

 恐らくだけど、もう男子は、怖がって入って来ないんじゃないかな? 女子ばかりの自動車部って、不気味だし、入る勇気もないよ。

 これがね、演劇部とか、軽音楽部とかなら分かるのよ、女子だけの軽いノリの部で、男1人入ればモテるかもしれないって、でもって、体操服着て、ガレージでオイルまみれになってるか、練習場でひたすら運転に打ち込んでる女子オンリーの部って、ヤじゃね? キモくね?


 でもだ、これで、耐久レース後の私らの実質引退後の人事も、本腰を入れていけるね。

 耐久レースの時の随行メンバーも、燈梨がどの程度、整備スキルがあるかを見極めて、考えていくようになるしね。

 それに、燈梨の入部によって、運転できる2年生っていう、稀有けうの存在もゲットできたわけだし、今後の運営はかなり安泰になってくるね。


 「ホントは~、燈梨ちゃんとお近づきになれて、嬉しいだけでしょ~」


 うっせぇ、うっせぇ、柚月! なに、さっきから私のことを肘でツンツンしてんだよぉ、また、パンツ脱がせて燃やしてやる!


 「や~め~ろ~!」


 さて、本題に入ると、後継者人事は、さっき言ったように、燈梨の実力を見極めて、七海ちゃん達、2年生の意見も取り入れて決めていくね。

 それと、水野のから言われたのは、冬を前に、その備えとして、練習車と、S14のスタッドレス購入と、冬を前に遂に4WD車の導入に本腰を入れていて、今月中にはお目見えできるかもって、言ってた。


 その話が終わった瞬間に、みんなの目の色が一斉に輝いたのを、私は見逃さなかった。


──────────────────────────────────────

 ■あとがき■

 お読み頂きありがとうございます。


 『続きが気になるっ!』『部車に遂に4WD登場なの?』など、少しでも思いましたら

 【♡・☆評価、ブックマーク】頂けましたら大変嬉しく思います。

 よろしくお願いします。


 次回は

 遂に転校してきた燈梨。

 その引っ越しを手伝った際に、とあるメンバーの車に異変が?


 お楽しみに。




 

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