第86話 カフェと伝説の人

■まえがき

・今回の話に登場してくる、オリオリとフー子は、もう1つの連載中小説「

殺し屋さんは引退前の仕事で、女子高生の口封じに失敗する」の登場人物です。

 ここで、あちらの作品の登場人物がボチボチ登場するのは、今後の展開に若干関係するためです。


・舞華が口走る「10万年と4日早い」というフレーズは、20数年前の、とある車ゲームの敵キャラの捨て台詞です。分かった人だけニヤニヤしてください。


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 へぇー、ここって、結構ファストファッションでも、私らの街にあるのとは、全然違うよね。何がって、言われると、ちょっと困るけどさ、なんかおもむき? そうだよ、趣が違うってやつよ。

 なんか、大人っぽいよね、全体にさ、大人の女ってやつ? 今の私にピッタリじゃね? と思っちゃってさ……なに、笑ってるんだよ柚月。パンツ脱ぐ?


 「大人の女は、そんなこと言わないもん~」


 うるさい! うるさい! 大人だって、怒る時は、怒るんだよ。

 大体、柚月のくせに、私の大人の女化計画をバカにするなんて、許されないんだよ。そんなの、10万年と4日早いんだよぉ。

 その4日ってのは、なんだって? いちいち口答えするんじゃない!


 さて、ファストファッションのお店を見て回って、結構シックで落ち着いた、イケてるお洒落着見つけちゃったから、つい買っちゃったよ。優子の割引券があったおかげで、結構お安く買えちゃったしね。

 結局、気がつくと、みんなも色々な服を買っていたよ。


 悠梨なんてさ、バラエティショップ行って、怪しげなスライムとか買ってるし、そんなもん、何に使うのさ?

 なんか、見て回ってると、まだオープンしてない区画があって、そこは、100均と本屋さんが入るみたいだね。


 ホントに、ここって教習所なの? マジで凄いし、マジで羨ましいね。

 私らの時、オープンしてたら、ちょっと考えちゃったかもな。原付で通うのは無理だけど、電車なら行けるしな。

 でもって、芙美香がダメだとか言うんだろうなぁ……。


 併設されてるお洒落なカフェで、みんなでお茶しながら、私らは、口々にここの施設の充実ぶりに感嘆していた。


 このカフェだってさ、表参道とか、セレブが住むような街にしかない系列のやつでしょ、私さ、入るの初めてなんだけど……って、みんなも初めてなのか。

 この抹茶ラテ、美味しいよ、柚月の、そのコーラフロートみたいのも美味しそうだね、え? 実際美味いって?

 結衣のブレンドも、深みがあって美味しいから、一口飲んでみてって? じゃぁ、私のラテも一口……あぁ、確かに濃いねぇ、そして、コクがあるよ。なるほど、さすがセレブが使うカフェだね。

 どしたの優子? 優子は、私と同じ抹茶ラテだから、一口しなくてもいいでしょ? 違うって?


 「あそこの席にいる女の人って、結構お洒落だね」


 え? どこどこ? 窓側の? あぁ、あそこね。

 そこには、緩いウェーブの明るめの茶髪を長く伸ばして、更にサイドテールにしている女の人が、コーヒーを片手に座っていた。


 遠目から一見すると、ケバく見えそうだが、コーディネートと、髪のせいで、そう見えているだけで、メイクはナチュラルで、ポイントだけを濃くつけている感じだね。

 それよりも、あの人、コーディネートに似つかわしくない程、美人だよ。キャミの上に、派手な柄のワンピ着て、ネックレスとか、結構つけてるけどさ、ちょとシックな色合いの、大人っぽいコーディネートにしたら、超映えるんですけど。


 あの人、ショップ店員っぽいコーデだね。

 免許取りに来たにしては、教習バッグ持ってないし、年齢的に、私らより2~3歳上っぽいから、教習生じゃなさそうだね……って、連れっぽい人が来たよ。


 「意外だね。連れの人が普通っぽくて」


 私と一緒に、向こうのテーブルの様子を見ていた優子がボソッと言った。

 確かに、連れの女の人は、年齢こそ一緒っぽいけど、いかにもスポーツやってます、って感じの、シャープで、髪もショートボブっぽい、黒めの茶髪だしさ、ちょっと、釣り合わないって言うのかな、ちょっと違和感を感じるんだよね。


 しかも、後から来た人の事を、フー子って呼んで、逆に、あの派手めの人のことはオリオリって、呼んでるよ。あだ名かな?


 「マイ~、優子~、何やってるの~? ちなみに~、私のは全部飲んじゃったよ~。あげないからね~」


 あ、柚月か、いいところなのに邪魔すんなよ。

 あそこのテーブルの2人を見てたんだからさ。

 柚月、いいよ、見なくても、どうせ柚月じゃ知ってる訳ないしね。


 「知ってるもん~、あの人って、確か、オリオリって人だろ~」


 え? 柚月、なんで知ってるの?


 「ここの駅の近くにあるショップで、伝説の店員だった人だよ~。マイも行った事あるじゃん。あの店から、渋谷本店に異動したって、凄い人なんだからな~」


 確かに、1、2年の頃に、悠梨や柚月に連れられて、電車に乗って、ここの駅の近くにあるショップは、行った事があるね。

 この辺りと、私らが住むあたりの地区のJKは、あそこの洗礼を受けとけ、っていうくらいの、地域一番のイケてるお店なんだよね。


 へぇ~、あそこの店員さんだった人なんだ。

 悠梨も知ってるの? 無論だって? ちょっと、悠梨、どこ行くの? サイン貰いに行くって? やめなよ! 芸能人でもないのに、迷惑だって……って、みんなして、どうして行くのよ。


◇◆◇◆◇


 訳の分からないまま、サイン貰って、みんなで撮影して貰っちゃったよ。

 凄い気さくな人だったね、オリオリさん。

 『舞chanへ Oriori』 

 だって、そんなに凄い人だったんだね。

 連れの人も、元々、JK時代は、お客さんだったんだってね、凄いね、今も交流が続いてるんだ。

 連れの人が、JK時代に、部活の試合で、ウチの高校に来たことがある、って言ってたね。

 この辺と、私らの街って、山を挟んで県が違うんだけど、学校同士の交流試合だとかって、地理的に近いから、県の枠超えて、結構やってるんだよね。


 さて、もう夕方だし、悠梨の伯父さんの別荘行って、温泉入って、カラオケやろうよぉ~。

 帰りにスーパーでも寄ってさ、食材買って、今日は、私と優子で夕飯作っちゃうからさ~……って、あれ、さっきのオリオリさんじゃね?


 お洒落な車に乗ってるね。水色のコンパクトカーで、ライトが丸くて、ちょっとゴツ可愛い感じの車。

 アレって外車? 違うって、R32と同じ頃に、日産から、限定発売されたパオって車だって?

 当時のマーチのシャーシを使って、全く新しいボディと、内装を作って発売した、当時流の『レトロ風現代車』だって?


 ふーん、あれ、日産の車なんだね。

 って、ちょっと見て見て、オリオリさんの車に3人乗ってるよ。ほら、あの助手席に乗ってる人って、教習バッグ持ってるよね。

 ほら、あの可愛い感じの、髪が肩のチョイ下くらいまである娘だよ。

 あの娘って、女子高生じゃね? なんか、雰囲気的にさ、私らと変わんない感じがするんだよね。


 あの娘の教習に、一緒について来てたんだね。

 マニュアルの教習だね。バッグの色で分かった。そして、免許取るってことは、あの娘さ、3年って事かぁ……なんで、そんな気になるんだって? だってさ、結構美人系だよ。ちょっと、お近づきになりたいな、って気にならない?


 結衣ったら、せっかちだなぁ……そんな少し、綺麗な子に見惚れてたみとれてたくらいで『置いていくからねー』は、なくない? これは私の車だって? だったら、なんで自分で運転してこなかったんだよぉー!


 そして、その日の夜は、温泉とカラオケで、空前絶後の宴会となった。


──────────────────────────────────────

 ■あとがき■


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