第5話 風呂に幼馴染がやってきた


着替えを洗濯機に入れて、風呂場へと足を踏み入れる。

そして俺は体を濡らして、ボディーソープを手に取った。


物置で過ごすようになってから一年経つけど、俺は風呂には欠かさずに入っていた。

学校に行かずに引きこもってるんだから、別に入る必要ないでしょ……と思いはしたものの、それは間違いだ。色々と大変なことになるから、風呂には入るようにはしていた。


基本的に、誰も入らなそうな時間に。

お風呂を溜めるのはガス代が勿体無いから、いつもぬるま湯のシャワーで済ませているのだが……。


「今日はお湯が溜めてある……」


ああ……そうか。多分、妹が入ったんだ。

妹は、学校から帰ってきたら、よく風呂に入っているみたいだ。

今の時刻は17時前。湯船に溜まっているお湯の量は腰が浸かるぐらいで、シャワーのところに書き置きがしてあった。


『おにーちゃんへ。せっかく久しぶりに詩織ちゃんに会えたんだから、綺麗に体を洗うんだよ?』


……俺の行動が事前に把握されている。


妹は、俺が風呂に入ることを、予知していたみたいだ。


俺はそのことに微妙な気持ちになりつつも、苦笑しながら、手早く体を洗うことにした。

待たせているのだから、あまりゆっくりもしていられない。


なるべく速く、だけど洗い残しがないように、泡立てた泡で、全身をきれいにしていく。


髪も丸洗して、一応、顔のマッサージで、むくみとかも消して……。


「どう? 順調?」


「うん。まあ、ぼちぼち」


俺は顔を洗いながら、そう返す。


そして、気づいた。


「ちょ!?」


「ど、どうも……。お邪魔しています」


風呂のドアが空いていて、そこにいたのは詩織だった。

というか、バスタオル姿だ。いつの間に!?


「ど、どうして、ここに……」


「う、う〜ん……。どうしてだろ」


「私も分かんない……」と言う詩織。


「とりあえずもう脱いじゃってるし……私も入るね。せっかくだから、もお君のお背中流してあげる」


もじもじと、裸で、バスタオル一枚の詩織が、俺がいる浴場に足を踏み入れた。


ドアが閉まる。泡が落ちる。


詩織の頬が赤くなっていた。


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