第34話 喧嘩するほど仲が良い


「アハハハ、かっこえ〜」


「ねぇ、お兄さんはなんて名前なん〜?」


「どや?、めっちゃイケメンやろ!」


「確かに〜、お兄さんおままごとやろうよ〜」


「遊んで遊んで遊んで〜」



「聞き分けるの無理だろ聖徳太子!!!」




今、俺は女の子達にタカられている、さながら虫が集まってる電灯、獲物に食らいつくピラニア、餌に群がる鯉なんかをイメージしてもらえれば感じは掴めると思う。


…………しかもこの惨状は俺だけなわけじゃなく、俺の相棒も現在進行形でこうなっている。




「カッケェェェ!!!」


「ねぇねぇ、ガシャガシャガシャーンってまたやってよ!!お姉さん!!」


「お願い〜いいでしょ〜」


「見せて見せて見せて〜」



「……………あ、あと一回だけ…………だよ………」



イヴの方は男の子達に囲まれている…………なんか満更でもなさそうな顔をしてる彼女、なんでこんな事になったのか、それは遡る事数十分前。



発疹皮膚武器展開イラプション魔硬化工程完了ハードニング砲身鉄拳制裁バレルフィスト!!』


「ぐっーー」


「…………前衛職にとって………ステータスの差が…………すなわち………強さ!!!、私と…………貴方では…………力の差がありすぎる!!」


「がはっーーー!!」


「………クハハハ………脆い………ですね…………ウォーミングアップ………のつもりでしたが……何?!」


「…………でなくっちゃな、イヴ、お前の力がこんなものなら………拍子抜けだぜ………」


「…………クフフ、本当に………楽しませて………くれる………」



翌日、リベンジを果たすためイヴに再戦を頼む俺、しかしよく考えると道場でやると壁とか床を壊してしまいそうなので何か他のところはないかと天狐さんに聞いたら……。



「ふふ、うちの道場はいくら壊れようがスキルで一瞬で修理可能や、というのもうちらの特殊スキル『変化』に愛用される特殊な葉を生やす木を材料に使っておるからな、耐久性はもちろんのこと、直すのも簡単や!」



………という事で模擬戦を道場で始める俺達、そういえばこの模擬戦のルールをちゃんと決めてなかったので、取り決める。


一、勝利条件は相手に先に攻撃を当てた方が勝ちの初撃決着。


二、擦り傷は当てた事にはならない、クリーンヒットじゃなければいけない。


三、10秒以上ダウンしても負け。


四、相手に重傷を負わせる攻撃じゃなければ何をしても構わない。




模擬戦やるたびにイヴの全力攻撃を喰らうのは中々にきつい、クリスに毎回治して貰うのも悪いし………このルールなら俺でも結構イヴに勝てた、お互いぶっ通しで戦うのは疲れたので息抜きに演劇ごっこをやっていたその時、金狐の声が響く。




「ほらみんなすごいやろ!、あれがうちんちに住み着いた竜と鉄人20号やで!!」


「うわぁ〜すっげぇ〜」


「カッケェ〜」



「「…………ん?」」


………そして現在へ至る。


イヴは鉄人、俺は竜、イヴの方は男の子の方に人気があるっぽい、まぁ男ならやっぱ変形ロボは熱いよな。


一方で俺は亜人から見るとイケメン………という事らしく小さかろうがなんだろうが面食いなのが女子という生き物だ。



………出来る事なら人族の時にモテたかったものだが。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「………あのね………私達は………暇じゃ…….」


「お姉さんカッコ良かったーー!」


「………そ、そ、そんな事ないよ…….」



………嬉し恥ずかしそうにしているイヴ。



(……全くイヴはちょろいんだから、俺はそう簡単にはーー)


「お兄さんカッコいい〜〜」


「………君達若いのに良い目してるね」



………まぁ、息抜きの延長線で子供の相手をするのもたまには良いだろう。




「私ね〜大きくなったら〜お兄さんのお嫁さんになる〜」


「はは、そりゃ嬉しいね」



よくある子供の発言、すぐ忘れると思って適当に返事をする俺。



「ダメ!ケッコンするのはウチや!」


「おいおい喧嘩すんなって〜」



女が俺を取り合う光景っていうのはなかなか良いな………まぁ全員子供なんだけど。



「ハルさんはうちが盗賊に襲われた時に助けてくれたんやで〜」


「ええ〜!!?!ほんとなの?お兄さん?」


「うん?、まぁー成り行きで……」


「すっご〜い、じゃあ強いんだぁ〜」


「そ、それなりの実力だな」


子供が猫撫で声を出しているのを聞くと凄く微妙な気持ちになる。



「………ふん、そんな蜥蜴がなんだっていうんだよ!イヴお姉さんの方が凄いじゃん!」


「なんやと銀狸、ウチの客人を馬鹿にするんか?!」



イヴのほうにいた狸の亜人の男の子がいきなりこちらに絡んでくる、名前は銀狸というらしい。



「さ、さっきだってやられてたじゃん!」


「は、さっきのは遊びゆうことがわからんのか?!」



あーでもないこーでもないとギャンギャン騒ぎまくる二人、周りの子達は恒例行事かのような落ち着き。



「………なぁ、もしかしてこの二人はいつもああなのか?」


「よくわかったね!、そうだよ〜」


「ふ〜ん、なるほどね〜」



疑問に返答する女の子、いやらしい笑みを浮かべる俺。




「お前ら〜喧嘩はやめろよな〜」


「このブス!」


「なんやと、こっちのセリフや!」



諫めるも効果がない、面倒くさくなった俺は銀狸の耳元で呟く。


「………銀狸君、お前金狐のこと好きだろ?」


「な、な、な、なにをここここ証拠に」


「その反応が何よりの証拠だろ」


「こいつに何言ったんや、ハルさん」


「あん?、こいつがお前のことーー」


「ワーワーワーワー!!!!」



天狐が不思議そうに聞いてきたので返答するも、銀狸が叫んでかき消す。



「なんや、喧しい!よくきこんえんやろ!!」


「ど、どこで騒ごうが俺の勝手だろ!!お、おいハルとか言ったな、こっち来い!」


「………はいはいっと」



銀狸は俺の手を引っ張っていく。




「あ、あんた、金狐のこと好きなのか?」


「………恋愛対象じゃないな、安心しろ」



道場の外に連れ出された俺に対する銀狸の第一声がそれだった。


「よ、よかったぁ〜」


「………それを気にするってことは、そういうことなんだろ?」


呆れた顔で俺は問う。


「………あいつに言うんじゃないぞ!!」


「………何を言っちゃダメなんだ?」


「そ、それは………お、俺があいつのことす、好きだって………」


「…………そうそう、素直になりゃ良いんだよ、とりあえずその喧嘩腰な態度はやめたほうがいいと思うぜ、恥ずかしいのはわかるが、どうやったって悪印象にしかならない」


「だ、だけど、そんな簡単には………」



「いきなり全部うまくやる必要はない、ちょっとずつイメージを変えていけば良い…………あの様子だとお前挨拶もロクにできないだろ?」


「………うん」


「挨拶ちゃんとするだけでもちょっとは印象変わると思うぜ、………ま、戻ってやることはとりあえずさっき言った悪口を謝ることだな」


「ええ!!?」


「当たり前だろ、それともお前、このまま仲悪いままで良いのか?」


「い、嫌だ」


「じゃあ決まりだ」

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