第10話 これは俺にとって小さな一歩だが少女にとっては偉大な一歩




「で、イヴはなんかやりたいこととかあんの?」




「………え……?」




イヴの一斉放射で九頭龍犬狼ヒュドロスのお爺ちゃんは意識を失ったのでこれ幸いと奥の部屋にあったポータルでダンジョンの入り口に移動。




倒して出てきたので文句はないだろうがあの溺愛っぷりだと何かと言い訳して追いかけてきそうなのでかなり急いで近場の村の周辺まで逃げてきた。



流石にあの爺さんも自分が人間の生活圏に来たらどうなるかくらいわかるからひとまず安心。




「だからさ、夢とかやりたい事とかなんか無いのか?、なんかあるなら契約解除して自由に生きていいぞ?」




「………うん、じゃあ私は美食王になる……!」




「は?、び、美食王?」




「………うん、この世の全ての食物を手に入れた、グルメ・D・ロジャーが残したひとつなぎの大秘肉ワンミートを手に入れて、美食王になってやる………!」




「え、えーーーと、その、あの、」




「………わかってるよ、世界最強のコックになるより難しい事だって、だけど私はこの美食航海時代を制したいの………!!」




「あのそれって週刊跳躍少年のこと………だよな?」




「…………うん、まぁまだ王下美食会にも勝てないけど………二年美食海賊を休んで修行すればその先のネオ四皇にだってーー」




「それって全部フィクションだぞ」



「……………………え?」




「いや、だからその、全部作り物の話だ」





「……じゃ、じゃあまだ美食航海時代は始まってないの………?」




「うん」




「…………せ、せめて食欲の悪魔が宿った悪食の実はあるんでしょ?実ごとに特定の食べ物を食べたら能力が封印されるやつ」





「そんなもんもない」





「……………そう…………じゃあ特別やりたいことないかな…………」





「………じゃあ俺と一緒に旅しないか?」




「…………え?」





「ちょうどドラゴンテイマーになるって夢叶えたら適当に世界の名所をブラブラ旅するつもりだったんだよ、んで連れがいると退屈しなくて済むからさ、ああ、無理にとはーー」





「いく」




打てば響くとはまさにこの事、最後まで言い終わる前に返事が来るとは思いもしなかった。



「え、そ、そんな簡単に決めていいのか?」




「……………友達………なんでしょ……私達………?」






「…………愚問みたいだな、じゃあよろしく相棒!」





「…………背中は任せたよ………ハル……」



俺は拳を突き出す、彼女は最初不思議そうな顔をするもなんとなく理解したのか拳を合わせる。




「それにしても、お前あれ本当のことだと思ってたのか?、案外可愛いとこあんじゃん」




「…………あれはあんなに面白い話を書く作者が悪い………」




顔を赤くしてそっぽを向くイヴ。



「アハハハ、だとしても普通思わないだろ〜」





「………ハルの意地悪………」





少し俯きながら呟くイヴが可愛くてついついからかってしまう。







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