第14話 すごく恥ずかしいけど、頑張ってみました。

 S市出張3日目。出張と言っても昨日で仕事は終わり、土曜日の今日は東京へ帰るだけだ。

 ナオさんの朝は早い。早朝トイレに行き、必ず水を飲んで水分補給をする。ナオさんによると、いつもこまめに水分補給をしているからトイレが近くて、朝一は口が乾いているからすぐに水を飲みたいらしい。ナオさんが起きてベッドから降りる時やトイレの音で俺も目を覚ますことが多い。今朝もそうだった。俺も起きてトイレで用を足し、少し冷えた部屋を暖めるためにエアコンを付けた。


 「おはよ。起こしちゃったかな?ごめんね。」ベッドに戻って二人並んで寝転ぶ。まだ7時前だ。

 「俺もトイレ行きたかったし、大丈夫ですよ。」ナオさんにおはようのキスをする。

 「今日は帰るだけだし、気が楽だね。」

 「そうですね。まったりしたいですね。」ナオさんに甘えて抱き着いてみる。

 「私、今、スッピンだし、髪もボサボサで、寝汗もかいてるよ。」

 「朝エッチする時はいつもそうじゃないですか。」

 「つい最近まで、灯りを消したり、カーテン閉めたりして、部屋を暗くしてたから気にならないのかと思ってたけど、明るいままでも、朝一番の私を抱ける?」

 「今まさにそうしようとしているところです。ナオさんが思っている以上に俺はナオさんの事が好きなんですよ。」

 「ははは、素直に嬉しいよ。ありがとう。」ナオさんは照れているのか、頬を指でかきながら応えた。


 俺は一度ベッドから降りてバスローブと下着を脱ぎ、昨日ベッドのサイドテーブルに置いたままで使わなかったゴムを手が届きやすい位置に置きなおして、ナオさんが待つベッドに潜り込んだ。ナオさんもバスローブの紐を解いて前をはだけて待ってくれていたが、先に布団の中でナオさんのショーツを脱がせた。

 「あれ?真っ先におっぱいに来ると思ってたのに。」

 「いきなりですが、入れますよ。」俺は身体を起こして布団を剥ぎ、ゴムを着ける。ナオさんは何も言わずに膝を立てて、慎ましく肩幅まで足を開いてくれた。モノをナオさんのアソコにあてがい、先っぽで割れ目やクリの辺りをなぞって、濡れていることを確認してから押し込む。

 「ぁんっっ」ナオさんの半開きの口から一度だけ声が漏れる。

 「ナオさん、少し引っかかりましたけど、痛くありませんでしたか。」

 「まだ身体が完全に起きてないからかな。でも、痛くなかったよ。」

 俺はナオさんの中に入ったまま出し入れをせずに、ナオさんの上に体重をかけさせてもらう。

 「重かったり、苦しくなったら言ってくださいね。」

 「分かったけど、動かなくてもいいの?」

 「うん。今はイクよりもナオさんを感じてゆっくりしたいです。」

 「繋がったまま“まったり”するやつだ。私もこれ好きだよ。」ナオさんも俺の背中に手を回し撫でてくれた。「へへへ」と言いながら俺の匂いや感触を楽しんでいる。


 「なんか私ね、昨日のこと思い出して、中々寝付けなかったんだ。」

 「昨日の事って、俺の“フェラ童貞”を奪ったことですか?」

 「ははは、何よそれ、本当にそんな言葉があるの?」

 「分からないです。適当に言いました。」

 「フェラもあるけど、ユウジ君の精子を身体に浴びて、温かかったとか、アレで妊娠するんだとか、中で出してもらったらどんな感覚なんだろうとか、色々考えてたら興奮しちゃってさ。」

 「そんなに喜んでくれるなら、直前にゴムを外して外に出すようにしましょうか?」

 「うーん、できたらユウジ君と一緒にイキたいから、外に出すのはたまにでいいや。昨日も言ったけど、精子の温もりや感触とかをリアルに感じて、なんか感動したんだよ。」

 「いつもはすぐティッシュに包んで処分しますもんね。」

 「そうそう、だから初めてだったじゃん。なんか身体が熱くなった。」

 「たまにでいいですから、またフェラと手でイカせてもらっても良いですか?」

 「もちろん。いいよ。」ナオさんは笑顔で快諾してくれた。


 「ちょっと苦しくなってきた。上下変わろうか。」ナオさんと俺は一旦身体を離して上下を入れ替わり、仰向けの俺の上にナオさんが乗ってくれた。

 「よいしょっと」ナオさんは体勢を整えて、俺のモノに手を添えて、中に導いてくれた後、膝を寝かせて俺と繋がったまま前屈みになり、俺の上に上半身を重ねてきた。ナオさんの柔らかい乳房の感覚を胸で感じる。ナオさんは髪を一旦束ねて、右肩の方に流した。

 「ねえ、ユウジ君、嘘つかずに真面目に答えてね。」

 「はい。」

 「ユウジ君は女の人とゴムを着けずにセックスして、女の人の中に出したことある?」

 「ありません。」即答した。

 「本当に?優しい嘘もダメだよ。」ナオさんは、俺の目を真っ直ぐに見て念を押す。

 「無いですよ。子供ができちゃうかもしれないじゃないですか。」

 「私も男の人とゴム無しでセックスしたこと無いの。まぁ当然だけどね。で、提案なんだけど、……“いつか”で良いんだけど、……いつかユウジ君と私の二人でちゃんとお祝いをして、二人で初めての何もつけないセックスをしようよ。」昨晩寝付けない間にずっとこんなことを考えていたのか、ナオさんは真剣な表情だ。

 「なんか、記念日みたいでいいですね。」あまり話が重くならないようにライトに答える。

 「そうでしょ?お互いの本当の意味での処女と童貞をプレゼントし合うの。少し子供っぽいかな?面倒くさいと思った?」

 「いいや、いいと思いますよ。俺達二人が良いなら、子供っぽいとか誰からも言われる筋合いないですよ。」

 「へへへ、やったぁ。私はユウジ君と付き合うまでほぼ処女みたいなもんだったから絶対大丈夫だけど、ユウジ君はちゃんと“生”童貞守ってよ。他の女に取られたらダメだからね。約束だよ。」ナオさんはハニカミながら釘を刺してきた。

 「俺も大丈夫ですよ。浮気はしないって言ってるじゃん。」


 「もしも、……もしも仮にだよ。」ナオさんが言葉を選びながら続ける。

 「私達が何かの原因で別れることになっても、ユウジ君に私の初めてを貰って欲しい。だから、別れる前に最後に一度だけで良いから、何も着けずに抱いてね。」

 「でも、そんなことしたら妊娠させちゃうかもしれませんよ。」

 「捨てられる前に妊娠して関係を繋ぎとめようなんて、私のプライドにかけて絶対しないから、安心して。薬を飲んででもそんな惨めな真似はしない。……だからお願いね。」ナオさんは少し興奮して、怒ったみたいな顔をして念を押してくる。

 「逆にナオさんの方が俺を嫌いになって、俺を捨てちゃうかもしれませんよ。その時はどうします?」

 「どうだろう?それでもたぶん私はユウジ君にセックスしてもらって、思い出にすると思う。とにかく言いたかったのは、“いつか”で良いからユウジ君と二人で初めて同士の記念をしたいってこと。このまま関係がずっと続けばベストだし、もし別れることになっても二人の秘密の思い出にしようよ。だからプレッシャーに感じたり、重い女って思わないでね。」


 ナオさんは「いつか」と繰り返し言うものの、生中出しは妊娠や結婚に直結する。俺には十分プレッシャーに感じた。

 俺は、ナオさんの他に付き合っている女性や想っている女性がいるわけではないし、ナオさんが好きで、ナオさんに大きな不満があるわけでもない。「じゃあ結婚すればいい」と思われるかもしれないが、ナオさんに断られたらどうしようとか、まだ早いと保留されたらどうしようかと、これまでは少し不安だった。

 さらに本音を言えば、本当にナオさんでいいのか?、もしかしたら他にもっと若くて思い通りになりやすい従順な女性が手に入らないか?という願望もある。だから今までは急いで踏み込み過ぎないように気を付けていた。


 こういう言い方をすると怒られるかもしれないが、既にナオさんは“完落ち”している。嫌がっていたフェラをしてくれたからではない。バレンタインを過ぎた辺りからの身体検査で将来の希望をにじませ、ナオさんは俺に対して自分に都合が良い勘違いもするようにもなった。俺は最初に言ったとおり他の女にフェラをさせたことがあるし、逆に生でセックスしたことが無いという俺の嘘をすんなりと信じてくれた(もちろん、その女性を妊娠させていない。)。俺の言った事を自分が信じやすいように勝手に選び、解釈しだしたのだ。

 思ったよりも早かったというのが率直な感想だ。M市出張の頃から俺はナオさんに好意を持って、何とか手に入れようと頑張ってきたが、恋人として接する全ての言動にナオさんは喜んでくれて、ナオさんに初めて経験させた事もたくさんあった。K市で初めて身体の関係を持った時はナオさんから仕掛けてきて、激しいディープキスを受けた。すごいテクニックでリードされるのかと思えば、行為中は基本的に女子高生のように身を委ねるだけで、騎乗位以外に武器らしい武器は無かった。

 これらはナオさんが俺の想像以上に恋愛経験値が低くかったことが原因だろう。他には、仕事ばかりで恋愛どころではなかったナオさんの環境と、ナオさん独自のコンプレックスとでライバルになるような存在が無く、ナオさんに俺以外の男という選択肢が無かったことも早期に“完落ち”できた要因だと思う。


 「おしゃべりしていたら喉乾いてきちゃった。水飲みに行っていい?」俺は考え事をしている間、ナオさんの話に適当な相槌をうっただけで、あまり内容が頭に入らなかった。

 「はい。ナオさんが痛くないようにゆっくり身体を離してくださいね。」全裸のナオさんがベッドから降りて冷蔵庫へ向かう。俺も体を起こした。

 「ユウジ君もどうぞ。」こちらにペットボトルを向けて声をかけてくれた。

 「いただきます。」ナオさんからボトルを預かり、数口飲んだ。よく冷えていて美味しい。キャップを閉めて冷蔵庫へ戻す。

 「ユウジ君のがまだ勃ってる。」ナオさんは俺が動いている間もモノがピンと勃起して、ユラユラ揺れているのを面白そうに見ている。

 「そりゃあ、ついさっきまでナオさんの中に入れてましたし、ナオさんが綺麗だからですよ。」

 「じゃあ、こんなのはどう?」ナオさんがファッション誌のモデルのように真剣な表情でポーズをとる。一度ポーズを決めた後、背を向けて反転しポージング。もう一度こちらを向いて違うポーズをとった。

 「ねえ、どうだった。ははははは。」ナオさんは嬉しそうに笑っている。

 「綺麗だよ。ナオ。」思わず強く抱きしめた。

 「ちょっと、なによ急に。ちょっと痛いよ。」

 「俺、M市出張の時に、全裸のナオさんに見とれてしまったの思い出した。」

 「M市?」ナオさんも俺の背中に手を回し、上目遣いで見つめてくる。

 「リビングと寝室の2区画あるお部屋で、朝にエッチした時です。」

 「ああ、朝からソファーでしたねぇ。……綺麗だった?私を喜ばそうとして無理してない?」

 「綺麗だったし、今も綺麗だよ。」ナオさんと見つめ合う。

 「どこ見てるのよ?…あ、目尻のシワを見てない?ノーメイクなんだから至近距離はヤバイって。」ナオさんは指で目を吊り上げて誤魔化そうとする。

 「ははは、ナオのは笑い皺だよ。…俺、ナオをずっと笑顔にしたい。」

 「ユウジ君は『半田ナオの仕様書』みたいなのを持っているの?嬉しいことばかり言ってくれる。」

 「そんなのがあれば欲しいですよ。」

 「ねえ、続きしようよ。ありのままの私を抱いて。」


 二人でベッドに戻り、半ば強引にナオさんが上に乗ってくる。

 「M市の時のように私が上でいいでしょ。」

 「その前にゴム乾いちゃったから、付け替えますね。」俺はサイドテーブルのもう一つのゴムを手に取った。

 「貸して、私がする。スイッチ入っちゃったんだから、早くしてよ。」ナオさんは俺からコンドームを取り上げ、素早くゴムの付け替えをしてくれた。

 「よし、お待たせ。行くわよ。」ナオさんは、ベッドに手をついて上半身を起こして座っている俺にまたがる。左手を俺の肩に置いてやや前屈みに体勢を保ちながら、右手でモノを摘まんで位置と角度を合わせて自分の中に挿入した。

ナオさんは身体を起こして、結合部を見せつけるように股をワザと広げてから腰をゆっくり前後に動かした。

 「へへへ。すごく恥ずかしいけど、頑張ってみました。どう?ユウジ君もスイッチ入った?」ナオさんは照れ笑いしている。ヌチ、ヌチっと生々しい音がしている。

 「ナオと俺が繋がっているのが良く見える。押し倒そうか?」俺も笑顔で応える。

 「今はダメー。腰が止まらなくなる前に、舌も入れてよ。」ナオさんは腰を動かすのを止めて、薄い唇を半開き開いた。俺は身体を垂直に起こしてナオさんの髪を掴んで抱き寄せ、こちらもワザと乱暴に舌をねじ込んだ。ナオさんは髪が乱れるのも気にせずに俺の舌を絡めとり、口の中で俺の舌を吸い始めた。お互いの肌がベタつき、汗と唾液の匂いがする。

 「スイッチ入っているから激しいね。」

 「私、嬉しいんだよ。ユウジ君が朝一の私でも顔を背けたり、息を止めたりせずに普通にキスやセックスしてくれるのが。」

 「まだそんなこと言ってるんですか?俺はナオとのキス、好きだよ。」

 「ありがと、試すようなことをしてゴメン。イチャイチャは終わりにして、本気でいくわよ。」ナオさんは俺に仰向けに寝るように言い、俺のお腹に手を着いた後、腰をゆっくり動かし始める。前後だけではなく上下にも動かし、自分が気持ちいい所を探しているのだが、結局、膝を寝かせて前後に動かすのが一番気持ちいいみたいだ。

 「やばい、止まらない。」ナオさんの動きが早くなる。

 「俺も気持ちいいよ。」

 「ゴメン。もう我慢できない。」ナオさんは恥丘を俺に数度グッと押し付け、ピクピク痙攣した後、俺の上に力なく倒れ込んできた。

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