ナオさんとの思い出

@edage

第1話 サイドテーブルの忘れ物

 俺はユウジ。中堅IT企業勤務25歳、中々タフな企業だが、給料が良いので何とか続けている。もう少し社員が増えれば負荷が小さくなるのだが、少数精鋭で大きく稼ぐのが社の方針みたいだ。

 辞めずに続けているのは給料だけじゃない、結構女性も多い会社なんだ。同期の女性社員が誰一人辞めていない中、男の俺が先にギブアップできない。男女比はほぼ半々、年上の女性がプレーヤー兼マネージャー的に活躍している会社でもある。大きな企画や設計のプレゼンや受託を受けたりすると、アラフォーだろうが、女だろうが、徹夜や社泊、遠方出張は当たり前。プレーヤー兼マネージャーのチーフと若手のペアをコアに、受託した仕事の規模に応じてフォロー要員を一時的に加えたり外したり柔軟に調整して仕事を完遂している。

 ちなみに、このペアは、固定ではないが、スキルや何となくの相性で、同じ人とペアで仕事することが多い。そして、俺がよくペアになるのが、先輩のナオさん。160cmくらいで細身だが、体育会系でキビキビしている。面倒見がよいというか、責任感が強く、優しくもあり、厳しくもある。俺が仕事でミスした時には「自分のチェックも甘かった」と自分がミスった事にして、代わりに始末書を書いたりする人だ。


 当然、ナオさんと社泊や出張も一緒にする。初めては些細な、そして“ありがち”なものだった。

 K市の観光業の仕事で、企画をプレゼンして受託できれば数年間で億の売り上げになるものだった。K市への出張。現地での打ち合わせや、地元商店街へのヒアリング、プレゼン資料の作成と、仕事を取るために出張先のホテルで缶詰めになった。始めは各自別々にホテルを取っていたが、締め切りが迫ってくると、のんびりカフェで資料作成や、それぞれのホテルへ帰る移動時間も惜しくなり、俺がナオさんの部屋へお邪魔して、資料のまとめやプレゼンのロープレをした。

 プレゼン結果は、約1週間後に社へ連絡があるのだが、プレゼンと質疑応答を上手くこなして、一仕事終えた夜。スーパーで買ったお酒と総菜でナオさんとささやかな打ち上げをした。


 「おつかれさまー。やったよね、手ごたえあったよね。」

 「はい、質問への返しもバッチリだったと思います。」

 ナオさんの部屋で仕事の資料をスーツケースにグシャっと押し込んで、ナオさんはベッド、俺はライティングデスクの椅子に座って、それぞれ冷えた缶ビールを飲んでいる。弱く暖房をつけている部屋だが、ビールの匂いの他、うっすらナオさんの勝負香水の匂いがする。前に「ここ一番の大仕事の時はこれを付けるの。ジンクスっていうか、おまじないみたいなものね。」と言っていた例の香りだ。今日も隣でずっとあの香りがしていた。


 「あんがとね。」缶が2本空いたくらいの時だった。

 「何がです?」 “ありがとう”じゃないんだ…と思いつつ、まったりと応えた。ナオさんは、ブラウスにスーツのスカートで、ホテルの使い捨てスリッパを履いた足をパタパタ上げたり下げたりしている。ストッキングは脱いだのか履いてない。スーツのジャケットは、ハンガーにかかっている。こんなに肩幅が小さくて身体も細身なのによく体力が持つなと思う。ジム通いというのは伊達じゃないらしい。俺の上着とネクタイもハンガーに吊るして隣のフックにかけさせてもらっている。

 「う~ん、いろいろ。」パッと明るい顔で微笑みかけてくれた。

 「私の無茶振り聞いてくれたり、細かい事気になって回り道するのも、ユウジ君は付いて来てくれる。」

 「ちょーっと、悪さした時も誰にも言わず秘密を守ってくれた。」

 「ちょっとじゃないですよ。バレたら二人とも首ですよ。」

 「分かってるって、だからあんたの代わりに始末書書いてあげたりしたじゃない。」

 「それは、ありがとうございます。でも、別案件じゃないですか。」

 「信頼できる後輩をもって私は幸せだ。」

 「大袈裟ですよ」ハハっと笑ってる時だった。ナオさんが不意にベットから立ち上がり、こちらをジッと見てくる。

 「トイレですか?」ふらついているナオさんを支えようと俺も立ち上がり、ナオさんの両肩に手をかけた。ナオさんも手を俺の首に回し、背伸びして軽くもたれかかってくる。

 「もう一つ、秘密を増やそっか…」俺の耳元で囁かれた。小さな声だったが聴き間違えようがない。俺も童貞ではない、何が始まるかは分かっている。

 「はい」と応えようとした時にナオさんの唇が俺の口を塞ぎ、舌が入ってきた時には迷いは無くなっていた。こちらも舌を絡めて応えると、ナオさんは背伸びから戻り下唇を軽く噛み、はにかみながらシャツのボタンを自分で外していく、上から1つずつ1つずつ。俺はシャツと下着のTシャツを一気にまくり上げて椅子に投げ、ナオさんをベッドに押した。まるで骨が無いように無抵抗でベッドに倒れたナオさんに身体を被せ、女性特有の胸の感触を手で確かめる。二の腕やふくらはぎも筋肉質で、贅肉らしいものをあまり感じないナオさんも、胸は柔らかい。ブラとキャミソールの上から触っても分かる。


 「ちょっと、待った。」急に俺の身体を押し返してナオさんが立ち上がった。

 「えー、今更気が変わったなんて無しですよ。」

 「分かってるって。」ちょっと跳ねるように両足の踵を揃えて立ち、スカートに手をかけ、スルスルと脱いだ。スカートをベッドの上で伸ばしながら広げる。

 「ほら、スカートにシワいったり、恥ずかしい液体で汚れたりすると、みすぼらしいでしょ。明日は東京に帰るんだし。」

 「あんたも、ベルトの金具チャラチャラ言わせてないで脱ぎなさいよ。」言われてすぐにその場でズボンとボクサーパンツを脱ぎ、靴下も脱いだ。裸足で数歩、デスクに置いてある鞄を取りに行き、中からゴムを2つ取り出し、サイドテーブルに置いた。

 その間にナオさんは、スカートを脱いだベッドサイドに立ったまま、ボタンを外して羽織っているだけのシャツをデスクに投げ、キャミソールも自分でまくり上げてシャツの上にポイっと投げた。ブラを外してキャミの上に置こうとしたのか、同じように投げたがデスクに届かず床に落ちた。

 全裸の俺は、ブラが落ちて「あっ」と言ってるナオさんをもう一度ベットに押し倒し、身体を重ねてそのままキスをする。さっきよりも強く香水の香りがした。今度はナオさんから舌は入ってこなかったが、俺の背中に手をまわし抱きしめてくれた。

 細いが無駄がない締まった身体。頬にキスをし、鎖骨や首筋に舌を這わせながら、もう一度胸を揉む。引き締まった筋肉とは対照的に柔らかい。少し下へ移動し片方の乳首を舐め、もう片方を指で少し強めに摘まむと、ブラを落とした時とは明らかに違う、漏れるような「あっ」という声と共にナオさんの呼吸が少し荒くなった。ナオさんの表情を確かめながら一心不乱に左右交互に舐めている時にナオさんとふと目が合い「エッロ」と茶化すように笑われた。


 滑らかな肌、くびれと腰骨を撫でまわし、舐めまわし、レモン色でフリルの装飾が付いたショーツを脱がせる。ナオさんは少し腰を浮かせて、俺がショーツを膝近くまで下したところで、ショーツから片足を抜いてくれた。

 「着けてよね。」なぜか手ブラで胸を隠し、サイドテーブルのゴムに視線を向けながら言ってきた。

 「もちろんです。」ゴムを一つ取り、手早くつけて、ナオさんの足を自分の身体の分だけ横に広げて間に座り、あてがう。割れ目に沿って上下にこすりつけていると、クチュクチュ音がしだした。

 「あんま見ないで」と今度は両手で顔かくし、すごく小さな声で恥ずかしいと顔を横に背けた。こちらはお構いなしに位置を確かめ、少しずつ入れていく。スルッと入るかと思ったが、先っぽが入ったところ引っ掛かり、ナオさんが顔をしかめ枕をギュッと掴んだ。

 「痛かったですか。すいません。」

 「大丈夫、謝んなくていいから。ちょっと久しぶりなだけで、大丈夫。」

 「続けて…」と小さく笑ってくれた。

 角度を変えながら何度か出し入れしていると徐々に奥に入り、俺のをナオさんの身体が受け入れてくれた。太ももの力んでいたのも弱まり、両足が力なくだらんと三角立ちしている。ナオさんに入れたまま身体を重ね、自分の体重を少し預け、ナオさんの呼吸が落ち着くのを待つ。ゴムごしでもナオさんの温かさを感じ、心地がいい。初めにキスした頬や舐めた鎖骨のあたりから乾いたつばの匂いがナオさんの勝負香水よりも強くして、征服感をリアルに感じる。動かなくても萎えることはなかった。


 多分4~5分、短い間入れているだけの時間が過ぎた時、大きく一度息を吸ってからナオさんが言ってくれた。

 「サンキュ。君のに身体が慣れてきたよ。たぶん動いても大丈夫。」

俺は左手をベッドにつき身体を起こして、ナオさんの髪を少しだけ撫でた。

 「にしても、女慣れしてるなー。」また笑われた。

 「そんなことないですよ。こっちも久しぶりですし。」


 ナオさんが言ってくれたとおり、滑らかに俺のが動けるようになっていた。ナオさんの左右の肩をそれぞれ自分の両手で軽く抑え、正常位で出し入れする。ナオさんは、俺の二の腕をふわりと掴み、背と顎を上に反らせ、足をピンと伸ばしたかと思うと、時に脱力したりしながら、俺のを受け止めてくれた。

 

 事後、今更ながら恥ずかしくて、ナオさんはナオさんで、俺は俺で互いに背を向けながらティッシュで自分の身体を拭き取り、ナオさんが先にシャワーを浴び、バスローブで出てきた後、俺もシャワーを借りた。俺がユニットバスから出た時には、ナオさんは既にベットで寝息を立てていた。行為の最中にベットから床に落ちたスカートだけはやっぱり気になったのか、上着と一緒にハンガーに吊るされていた。俺もズボンだけ床から拾い椅子に掛けて、横に添い寝させてもらった。

 デスクにはナオさんの服が脱ぎ捨てられ、上下セットのデザインのブラも床に落ちたまま。その近くには俺が脱いだYシャツや下着、靴下が無造作に置かれている。もう薄っすらビールの匂いが部屋に残っているだけだった。


 翌朝、ナオさんが目を覚まし、トイレと水を飲みに行った時、俺も目を覚ました。「おはよ。」、「おはようございます。」お互い軽く挨拶をした。まるで何もなかったかのようにナオさんは床やデスクに置いてある下着や服を拾い、新しい下着やブラウスに着替え始める。どう接するのが正解か分からず何も言えないままナオさんを目で追ってた俺にナオさんは

「部屋片づけて、帰ろっか」スカートのジッパーを上げながら笑顔で言ってくれた。

 俺も服を着て、仕事の資料をスーツケースに詰め、部屋を出れるように準備をし、私物も自分の鞄に入れていく。スマホや充電器も忘れず鞄に入っていることを確認して、自分が泊まっていたホテルに残りの私物を回収しに戻ろう部屋を出ようとした時だった。

 「ちょっと待ってー、忘れ物。」ナオさんはサイドテーブルに残ったもう一つのゴムを少し恥ずかしそうに渡してきた。

 「2回するつもりだったの?」

 「あ、いや。その、たまたま2個持ってたから、2個とも出しときました。」

 「そっか。次に取きなよ。」

 「次って…」と俺が言いかけた時には、ナオさんは背を向けて部屋の中に戻って行ってしまった。


 一週間後プレゼン結果の連絡があり、見事に我が社のプレゼンが採用された。追い込み3日間、毎晩3時間睡眠で準備した成果が報われたのだった。

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