第400話 コンスティテューション級空母
無防備な陸軍の装備や弾薬を積んだ輸送船が攻撃されて沈められたら拙い。
高速で移動出来る敵の空中空母が自分たちの後方へ回り込み船団を攻撃しないか、可燃物である弾薬を積んだ輸送船を攻撃するのではないか。
モフェットが恐れているのはその点だ。
船団が、上陸部隊が機能不全に陥れば作戦は失敗だ。
先に敵の空中空母を見つけて撃破しておきたいモフェットは焦る。
「ですが、敵の艦隊もその艦載機も無視出来ません」
「そうだな」
モフェットは幕僚の意見に同意する。
飛行船であれ、水上艦であれ航空機を積んだ兵器は索敵に優れる。
敵の目を潰すのは戦争の常套手段だ。
此方の情報を敵に与えないようにすれば良い。
「敵の目を潰すぞ。予定通り、敵航空戦力を潰す。敵の空中空母に警戒しつつ直ちに敵艦隊へ攻撃開始」
「了解! 空中艦隊のシェナンドーにも攻撃を命じます。我々も進路を変更して敵艦隊へ向かいます」
「よろしい」
「右舷上空に怪しい機影を確認!」
見張りの報告に艦橋は緊張する。
すぐに全員が右舷の空を見上げる。
「あれか!」
おかしな形の機体を見つけ呟く。
「皇国の新型爆撃機だな。確か震煉とかいう爆撃機だったな」
「無線発信を傍受しました。敵機から発信されているようです」
「これで、敵に我々の位置が分かって仕舞った。グズグズはしていられない。攻撃隊の発進準備を急がせると共に迎撃準備を」
「了解! 攻撃隊及び上空哨戒機は発進用意!」
「艦載機隊全機発艦用意!」
空母コンスティチューションに命令が下ると艦内は忙しくなった。
特に格納庫は上部甲板に飛行機を送り出すために忙しくなる。
だが、すぐに終わる。
「発艦準備完了!」
「よし! 上部甲板より一機ずつ順次発進!」
上部飛行甲板で翼を広げた樽のような胴体が短く太い複葉機のF3Fフライングバレル八機が発進していく。
そして、一機目が飛び出したのを確認した中部飛行甲板の発艦士官が、合図を送り中部飛行甲板から一機が発進していった。
同じように下部飛行甲板からも発進していく。
そして、再び上部甲板から一機が発進する。
三つの飛行甲板を持つコンスティテューション級空母の特徴だった。
忠弥によって航空母艦龍飛が登場した時、各国海軍は遂に洋上で陸上機動揺に航空機を運用出来ると希望を抱いたが、同時に不満を抱いた。
全通甲板一枚で発艦と着艦が同時に出来ないからだ。
発艦時は甲板に飛行機を後部に並べて発進させるが、その作業に一時間以上は掛かる。
その間着艦は出来ない。
一方着艦は、甲板の後部に着艦させエレベーターで下ろす。だが下ろすのに時間が掛かる。
前部に駐機させ、着艦が終わった後格納する方法もあるが、着艦に失敗した機体が着艦済みの機体に突っ込む事故も起こった。
そして発艦と着艦が同時に行えないため、着艦時に攻撃されたら迎撃戦闘機さえ上空へ送り出すことが出来ない危険がある。
各国は独自にこの対策に乗り出すことにした。
そこで出たアイディアの一つが、多段飛行甲板だ。
格納庫の前の部分を解放し、飛行甲板として使用すれば、上の飛行甲板を着艦用に、下の格納庫から続く飛行甲板を発艦用に区別すれば発着艦が同時に出来ると考えた。
良いアイディアと考えたモフェットを初めとするメイフラワー合衆国航空隊は直ちに採用。
コンスティチューション級は三段式空母となった。
搭載機を増やすために、格納庫を上下二層に増やした結果、上部格納庫を中段の飛行甲板に出来るようにした。
これなら三機同時に発艦出来ると彼らは考えていた。
実戦の際には搭載機八〇機を迅速に発艦させ上空に味方機の大群を出現させ、例え艦載機の数が同じでも相手を圧倒出来ると目論んだ。
だが、就役して運用すると計画時には見えなかった不都合が出てきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます