誰かの見つけた場所
最近、ちょっとしたお気に入りの秘密の場所があって、時々、夕暮れまで車を停めて、ぼんやりお茶を飲んだり、本を読んだりする。
その場所は、偶然見つけた。
なんとなく家に帰りたくなくて、しばらく車を駐車出来そうな路肩を探してウロウロしていたら、知らない小径の先に、そこはあった。
随分と落ち着く場所で、私は、「ああ、やっと見つけた」と、ずっと探していた土地を探し当てたように思った。
そこではいつも、東の平野から西の盆地に向かって風が吹いていて、麦の穂がザワザワ鳴っている。時々地元の車が通って、犬を連れた人が歩いて来る他は、人の気配も無い。
車の窓を全開にしてそこに居ると、なんとなく宮沢賢治的な気分になって、脳がガジガジ緩む感じがして、「リラックス」とか「癒し」とかいう言葉では言い表わせない、泣きそうな安堵感が満ちて来る。
長いこと忘れていたけれど、こういう感じを、昔は毎日知っていたな、とか、そんなことを思う。
こういう気持ちはきっと、常時望むものではないのだろうし、留めようとするものでもないのだろう。
ここに家を建てて住むとか、カフェや公園を創って他人と共有するとかも、きっと違う。
いつかまた、私がこの感覚を忘れる時が来るのだろう。
願わくば、それでも、この場所がずっとこのままであってほしい。
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とある小径で、そんな事が書き付けてあるメモ用紙を拾った。
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