chance to experience

我々は機会を与えられた。


怒る機会を与えられた。

妬む機会を与えられた。

惨めで情け無い思いに打ちのめされるという機会を与えられた。

望まない感情に翻弄されて号泣するという機会を与えられた。

訳の分からない葛藤。

訳の分からない矛盾。

コントロール出来ない自分。

それらの全てを、体験するという機会を与えられた。


多分、私という人間を通して、それを体験したかった何者かがいて、

(それを宇宙と呼んでもいい)

宇宙にとっては、その全ての体験が等しく貴重な経験であり、

良いも悪いも無い、

ポジティブもネガティブも無い、

ただただ、得難くユニークな経験であり、

全ての経験が必要で、

全ての経験が許されている。


ただただ、経験されるためだけの経験。


そんなような意味の、機会を与えられた。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


例外無く、取りこぼし無く、全ての体験は許されている。

全ての出来事は、起こることを許されている。

全ての感情は、感じることを許されている。

「そんなふうにはとても思えない」とイラつくことも許されている。

惨めなまま存在していく私が許されている。

宇宙にとっての貴重な経験として。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


…そう考えるとちょっと気が楽になるじゃあないか。


そう言って、その老学者は去って行った。

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