第28話 そういえば・・・①
「そういえば、東雲さんて、BL小説書いてるけど、2次創作モノってあんまり書かないよね?」
放課後の部室で部活動をしながらアンニュイな時間を過ごしていた。
凛花さんは文芸部の部室でティーンズ向けの雑誌を読みながら聞いてくる。凛花さんは仕事が無い時、この文芸部の部室で時間を潰すのが日課になっていた。
「そういえば、そうですね。僕も見たこと無いです」
芳賀君もタイピングしながら反応。その言葉に私はピクッとなる。
「2次創作ものはちょっと苦手で、トラウマがあるんですよ。自分が書きたい2次創作は書くんですけど」
私はBL小説をタイピングしながら凛花さんの質問に返答。
「前に一度、小説投稿サイトで読者さんにある作品の読者推しのカップリングで書いて下さいって言われて書いたんですけど。それがサイト内で腐女子の推しの言い争いに発展してしまって。怖くなり、2次創作物のお願いはご遠慮することにしたんです」
「へぇ、そんなことがあったんだぁ。何の作品?」
「確かスマホゲームで・・・」
凛花さんは私を見て聞いてきた。
私は文字を打ち込むのを止め、近くに置いてあったスマホの画面をタップし操作する。確かまだアプリは消してなかったと思ったけど。
「あっ、あった。これです」
私は凛花さんにスマホ画面を見せる。そこには『銃剣乱舞』と書かれたアイコンが表示されていた。この『銃剣乱舞』は今、ソーシャルゲームの中でも女の子に大人気で日本の武器だけではなく、海外の武器も擬人化して、ちょっとしたストーリーのシュミレーションゲーム。その武器の擬人化がかっこ可愛い男の子のイラストで女の子に人気を博している。
その人気はゲームだけではなく、メディアミックスされるほどの人気で世の中には色々なものが出回っている。
その人気はある意味女子の支えあってこそのものだというところが凄いのである。推しの為なら何でもするとネットでは書いてあった。あくまでネットの情報なので半信半疑ではあるけど。
でも、SNSを見てると推しへの愛が凄いから、あながち間違ってないのではとも思ってしまう。まぁ、よく考えてみれば自分もそうだなと実感する。私もBL小説の為ならとも思うし。
「あー、これ知ってる。私のファンの子もこれやってるって言ってた」
「私のファンの子って言葉が怖いですね」
「そぉ?」
凛花さんは特段の笑顔で私を見てきた。凛花さんは今、人気爆上げ中のアイドルユニット"アーデルハイド"でクララの名前で活動をしている。唯一の欠点と言えば、女の子が大好きな女の子。所謂、百合さんだ。自分好みの女の子だと手を出してしまうからクララさんの相方のハイジさんを困っている。
「こんなゲームあるんですね」
芳賀君がBL小説に一筋でゲームには関心が無いが、男の子のキャラに興味を示していた。
「そうだ。この『銃剣乱舞』でリレー小説書いてみない?」
凛花さんが唐突な提案を私たちに出してきた。今まで、自分だけで話の展開を決めて書いてたからちょっと面白そうだなと思っていると。
「それ、面白そう」
私たちの後ろから声が聞こえ、後ろを振り向く。そこには腕を組んだ高瀬部長が立っていた。その高瀬部長の後ろには意外な人物が立っていた。
「ほぉ、それは面白そうね」
「どうしたんですか?急に話に入ってきて。志藤生徒会長も」
「今日は生徒会の仕事も無いから、各部活の活動調査なの。文句ある」
志藤生徒会長が急に怒り出す。
「はぁ。そうなんですか・・・」
「そうよっ。だから私は高瀬さんの部活の活動を見て、来年の部費を決めるの」
志藤生徒会長は高瀬部長を嫌っていると言っていたが内心では気に入っているらしい。だから、行動と言動が合わないこと多々あるのは志藤生徒会長が高瀬部長に対しツンデレと私は思っている。凄く分かりやすい先輩だ。
「あら~。先輩達、百合百合しいねぇ」
凛花さんは二人の先輩のやり取りを見てニヤニヤしている。流石、百合好きの凛花さんの妖怪アンテナは鋭い。私は感心してしまう。しかしこのやり取りを見ているとこっちが恥ずかしくなる。
「じゃぁ、こうしよう」
高瀬先輩はここにいる5人でのリレー小説の順番を決めていた。
紙には志藤生徒会長→高瀬部長→私→凛花さん→芳賀君の順番に名前が書いてあった。もう決めたんですか?まだ、みんなするとも言ってないのに。しかし、志藤生徒会長は「私に任せなさい」と乗り気でパソコンの前に座る。
そして、志藤生徒会長はタイピングをし始める。
多目的ナイフとG36アサルトライフルの旅が今ここに始まる。
僕は多目的ナイフ。G36アサルトライフルの兄さんと一緒に旅をしている。
僕たちはある森の湖の近くで昼食を楽しんでいた。この湖はこの地域でもっとも有名で水の透明度ありの底まで見えると言われている場所。
「僕たち何処まで行くの?兄さん」
「まだまだ先だ」
僕と僕の兄さんはある男を追って旅をしている。
「奴は俺がこの手で殺す・・・」
兄さんはそう言うと加薬ご飯を食べ始めている。
「それが、父さんと母さんを殺した奴への復讐だ」
そう、僕たちの父さんと母さんはその男に殺された。僕たちの目の前で・・・
「僕はまだ小さかったから覚えてないけどね」
僕も加薬ご飯をむさぼっていた。この加薬ご飯は兄さんが作ってくれたもので、亡くなった母が得意としていた料理。亡くなる前に母が兄さんに我が家の伝統の味を残して欲しいと無理やり教えたものだった。でも、この加薬ご飯はそんなに難しくないから兄さんでも作れてしかも、美味しい。兄さんも料理が下手なんだけどこれはいろんな野菜やキノコ類、油揚げなど入れ、めんつゆでお米を炊き込むだけだから、味はそこまでひどくはならない。手ごろなもので、こんなに美味しい出来るなんて・・・
「やっぱり、母さんのレシピの料理は美味しいね」
「あぁ。そうだな」
兄さんは黙々と加薬ご飯を食べ、湖畔を見ていた。
何を思っているのだろうと兄さんの顔を見ている時の事だった。
「よし、私はここまでだ。どうだ、東雲?」
と自信ありげに志藤生徒会長は私を見てきた。どうだと言われて、私はどう答えればいいのか分からなかった。流石、生徒会長だ。無難にこなしている事を私は驚いた。
「まっ、トップバッターにしては無難な感じでいいんじゃないか」
高瀬部長は自分の持ってきていた小説だろうか、それを読みながら志藤生徒会長を褒めていた。私も同意見だけど、高瀬部長ちゃんと顔を見て志藤生徒会長を褒めて下さいよ。
「そ、そうか」
志藤生徒会長は意外にも高瀬部長の言葉に喜んでいた様で、嬉しそうな顔をしていた。志藤生徒会長そんなので喜んじゃうんですか?
「さっ。生徒会長。次は私だ。どいてくれ」
「あ・・・あぁ」
高瀬部長の塩対応に志藤生徒会長は少し悲しげな表情をして、席を代わる。席をたった志藤生徒会長は高瀬部長に凄く褒めて欲しそうな表情を向けていた。
「あぁ、何か見てて初々しいわね。あの人可愛いし、食べちゃいたい」
「襲うのは止めて下さいよ、凛花さん。この文芸部の来年の対応が決まるんで」
凛花さんは志藤生徒会長を見て、興奮し涎を垂らしていた。えぇ~、凛花さん。あなた自分がアイドルって事忘れてません?
こんな姿をファンが見たらどう思うのかと非常に感慨深い。ファンが可哀そうに思えてくる。
「じゃぁ、私が続きを・・・・」
高瀬部長が小説の続きを書き始めた。
「誰だっ!」
兄さんがそう言うと茂みの陰から何かが飛び出してきた。
「っ⁉」
僕と兄さんは茂みの中から出てきたものに驚く。
「お、女」
「女の人だよ、兄さん」
茂みの中から出てきたのは女の人だった。しかし、彼女の様子がおかしい事に僕は気付く。
「兄さん、あの子の耳おかしいよ」
「何だ。あの耳?」
僕たちに敵意をむき出しの彼女の頭の上からは耳が、尻尾も生えていたこと驚きだった。
兄さんは食事を止め、彼女の敵意むき出し反応したのか戦闘態勢のポーズを取る。僕も食事を止めて、兄さんの背中に隠れると彼女を見つめた。
「何だ、お前」
「その飯よこせ。ぐぎゃー」
彼女は兄さんの持っていた加薬ご飯から目を離さず威嚇してくる。僕が盗賊かなと思っていると兄さんは食べかけの加薬ご飯を彼女の目の前に出した。
彼女は兄さんが目の前に出した加薬ご飯に目を奪われる。
「寄こせー。」
彼女は兄さん目掛けて飛びついてくる。兄さんはそれを見た瞬間、手に持っていた加薬ご飯を明後日の方向に投げた。彼女は投げた加薬ご飯に反応し、そのご飯を取りに行っていた。彼女は兄さんが投げた加薬ご飯をうまいうまいとむさぼりついていた。
僕も兄さんに続いて加薬ご飯を彼女に投げる。彼女はそれにも反応し、それにもかぶりついていた。相当、お腹が空いていたんだろう。
「襲われるよりいい。それでいいならくれてやる」
兄さんはそう言うと僕の方に振り向き、「もう行こう」と僕に言った矢先の事だった。
「そこの、お前。待ってくれ」
「何だ、今度は。飯はやったんだ。俺たちを襲おうというのならお前を殺すしかない」
「ち、違うんだ。待ってくれ。私の名はエルザだ。お前はこんなうまい飯を私にくれて、私は助かった。だから、お前の言う事を何でも言うを聞こうと思うんだ」
彼女はエルザ。種族は獣人でこの子も一人で旅をしていると言っていた。何でも一人旅で食料が尽き、人を襲う事を考えたらしい。流石、獣人は考える事が単純だ。獣人だから筋力とスピードはあるから余程のことが無い限り行けると考えていた。
だけど、兄さんがご飯をくれたことでこの人は襲わずに従った方が良いとわかったらしい。エルザさんの動物的勘は凄いと僕は感心してしまう。
「じゃぁ、俺達の下僕になれ」
「はいっ」
兄さんは凄い笑顔でエルザさんにめちゃくちゃな事を言っている。でも、エルザさんは兄さんに尻尾を振って喜んでいた。兄さんは僕には優しいけど赤の他人にはめちゃくちゃ冷たい。
「じゃあ、エルザ、お手!」
「ワン」
兄さんはエルザさんにお手をさせて、遊んでいた。しかも、喜んでいた。エルザさんも喜ばないで下さい。
「よし。いくぞ、下僕エルザ」
ちょっと、いつの間にか下僕になってるし。
兄さんは、エルザさんを連れ、先を急いで行ってしまった。僕も二人を追いかけるように着いていく事に。
「よし。これだな」
「何か部長の性格出てますね、この小説」
「そうかぁ?」
と高瀬部長は適当に言ってくるけど、私には分かる。最近になって分かった事だけど高瀬部長は天然のサディストだ。私と芳賀君のいきなりの恋人命令も私たちに変な事を押し付けるのもそうだ。でも、高瀬部長は自分がサディストなのを自覚してないことがよりタチが悪い。
「部長ってSですよね」
「そんなこと無いよ。私はみんなを可愛がってるだけから」
「そうですよ、東雲さん。部長がそんな人なわけないじゃないですか」
なぜかそこに芳賀君が参戦してきた。ってか、あなたは私の援護をしろよ。
「芳賀は偉いな。私を庇ってくれるのか。誉めてやろう」
「ズルい、高瀬。私も褒めてくれ」
志藤生徒会長がいきなり会話に入ってくる。寂しかったのだろう。この志藤生徒会長に一つの答えが浮かび上がる。志藤生徒会長はMに違いない。
「生徒会長は出てこないで下さい。話がややこしくなります。とりあえず、リレー小説が終わる迄待ってください」
私はとりあえず志藤生徒会長をなだめて、みんなの会話を中断する。
「私が続き書きますから、皆さん静かにしてください。後、高瀬部長と凛花さんは茶々入れないで下さいね」
私は高瀬部長と凛花さんに変な邪魔を入れないように念押しをした。
そして、次は私が書き始め、後半へ続く。
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