第23話 彼女が・・・(後編)
私の部屋に二人は上がっていた。この部屋に友達を入れたのは初めてで緊張する。私の部屋は何も特徴が無い女子の部屋。本棚があり、机にはパソコン、そしてベットだけ。本棚はBL小説は置いてなく、恋愛小説、ホラー小説などいろんなジャンルが置いてある。けど、BL関係の本やグッズは親に見つかると面倒臭いから他の所に隠してある。絶対に見つかるわけがないと私は自負していた。その時だった。
「あ~。見っけ」
「えっ?」
その言葉の主は凛花さんだった。私はその言葉に驚く。
その手に持ってたのは私のBLグッズだった。芳賀君もそれを見て、「東雲さんの趣味はこれなんですねぇ」と実感していた。
「そんなにまじまじと見るなぁ」
と私は芳賀君に見られない様、目を隠す。芳賀君は「何をするんですか」と私に言ってきたが、見られたくないものは見られたくない。
「別にいいんじゃない?見られても。同じBL好きなんだし」
凛花さんはケラケラ笑う。
「そこは自分だけで楽しむもので言うだけで、芳賀君にも見られたくないんですよっ!」
私は目を隠しながら、凛花さんが持っているBLグッズをもぎ取る。
「器用なことするね。あはは」
「どうしてわかったんですか」
「言ったじゃない。私、女の子が好きだから、そういう行動とかなんとなく解るのよ。私も女だし」
凛花さんはてへぺろと可愛くごまかしてきた。怖いよ。
「わかってたまるかっ‼」
私はすかさずツッコミを入れる。私はそのグッズを抱え、押し入れにしまい込む。
「ここは絶対に開けない事いいですね」
私は押し入れ(開かずの扉)を指さし、二人に言い放つ。ここに簡易天の岩戸が完成した。本当に油断も隙もあったモノじゃない。
特に凛花さんはヤバい。私のすべてを見透かしてそう。
私は二人を自分の部屋から出し、見つかると危うそうなものをさっきの押し入れにしまい込む。その間、わずか3秒。と言いたいが出来るわけがない。3分間でやれることをやった。
「やれば、出来る子。私。ム〇カが三分間待ってやるって言ってる間に片付けられるわね」
私は自分自身に褒めてあげる。部屋の外からは「まだ~」と凛花さんの声が聞こえた。私は凛花さんの声に焦らされる。でも凛花さんの声は楽しそうで私を揶揄っている感じに聞こえた。
「待っててください。もう少しです」
私は片付けを急ぎ終わらせ、二人を部屋の中に入れる。そこで、もうこの部屋の物は絶対に触らないことを約束させ、机の上のパソコンの電源を入れた。パソコンの起動音と共にモニターが映し出される。
「何を開くんですか?」
「小説投稿サイトかな。それからそこで前送ったメッセージにこう送って欲しいの。『あなたの本当の悩み教えてくれませんか?その相談のりますよ』って送って欲しいの」
「そんな言い方で送って本当にあの子が乗ってきますか?」
私は疑心暗鬼だったけど凛花さんの言う通り送った。芳賀君は私の行動をぼーと見ている。まぁ、部屋の物を探られないだけいいかと私は芳賀君の横顔を見つめた。
真面目そうな顔でパソコンの画面を見ている。恐らくBL小説を打ち込む時もこんな顔もするのかな?と思っていると芳賀君がこちらを見てきて目が合ってしまう。
「どうしたんですか?」
「なぁ⤴、何でも無いわ」
私は裏声になり、焦ってしまった。私の行動を見ていた凛花さんは「見せつけてくれるわねぇ」とに睨みながら見てきた。さしずめ、私もいるんだけどとでも言い出しそうな顔だった。そんな時。
ティロンッ!
私のパソコンのメッセージに一件の返信が入ってきた。
「きたっ」
「早いわね」
凛花さんは感心し、私はメッセージの内容をクリックする。
〈桃@黒やぎ:お疲れ様です。今日はありがとうございました。いきなり・・・悩みと言われましても〉
凛花さんは「ちょっと、代わって」と言うと私と代わり、キーボードを打ち始める。凛花さんのキーボードを打つのが早く、芳賀君が感心していた。
〈SHINO:まぁ、ぶっちゃけちゃうと私、学校でいじめに合ったことがあって。あなたの雰囲気がその時の私に見えたの。だから、あなたが困っているなら助けるよ〉
凛花さんは文を作るとすかさず、送信した。いきなりそんなぶっちゃけちゃっていいの?と私は思う。ただでさえ、初見で合ってこの物言いされても相手は信じてもらえるわけないですよ。てか、それ私のユーザー名なんですけど・・・
それからすぐ、そのメッセージの返信が入ってきた。
〈桃@黒やぎ:えっ⁉そう見えましたか? ・・・・・・そうですね。私も言います。今、学校でいじめに合ってて、その気休めにSHINOさんの小説を癒しにしてるんです〉
私はそのメッセージが書いてあるモニターに驚き、くぎ付けになる。
「うっそぉ」
「ほらぁ」
凛花さんはこのメッセージにそれ見たことかとどや顔。
そこからは、凛花さんの聞き出し術のオンパレードだった。どんないじめをされたかやいじめをした人がどんなメンバーだったとか、相手桃花さんのプライベートをあれよあれよと聞き出した。私はその事に感心していると凛花さんは急に「キーボード打つの代わって」と言い出すと席から離れた。と思ったらスマホでどこかに電話をかけ始める。
私は急に振られて慌てる。
「どうしよう」
「僕が代わりましょう」
と急に芳賀君がキーボードを打ち始めた。
〈SHINO:話を変えてしまい、すいません。ところであなたはBLのジャンルでは何がいいですか?〉
〈桃@黒やぎ:いきなりですね。でもそれ、さっき話しましたけど、まだ話しますか?〉
「バカ。それ私がさっき会った時に話したのよ」
芳賀君は私の言葉を無視して、キーボードを打ち続けていた。
〈SHINO:私は最近、戦国武将もののBLが流行りで森蘭丸と織田信長が絡みが激しそうでいいですね〉
芳賀君はタタタターンとキーボードのエンターキーを叩く。私、戦国武将モノって私知らないんですけど。と思っているとすぐに返事が返ってきた。
〈桃@黒やぎ:ま、マジですか( `ー´)ノ私は明智光秀と織田信長のBLが大好きです。ぜひ、SHINOさんの戦国武将モノのBL小説は読んでみたいです。私もそれでこのいじめも我慢できます。生きるかてにします。お願いします〉
とモニターには書かれていた。
「私、歴史知らないし、書いたこと無いけど。これ、どうすんの」
「書いて下さい」
私は芳賀君の頭を勢いよくひっぱたく。やり切った感出しまくってどや顔するんじゃないわよ。どうすんの、どうすんのこれ。私が頭を抱え、この次の言葉を考えていると「話終わったから、私がチャット代わるからいいわよ~」と凛花さんが戻ってきて、芳賀君とバトンタッチをした。
そこから先のチャットの内容は、凛花さんによる桃花さんの復讐の仕方の講義に話は変わっていった。まず、クラスのイジメている女子たちの行動をペンに仕込んだ隠しカメラでいじめの現状を映像で取り、カバンに隠しマイクで録音。それを証拠に校長及び教師に報告。学校へ弁護士を通じて告訴の為の報告などやっていくという内容だった。しかし、そのメッセージのやり取りの中で「私の家、そんなにお金ないんですけど、いいのでしょうか?」と書かれていた。確かに、こういう案件は弁護士費用がかかる場合があるとじっちゃが言ってたっけ。(ネット情報)
〈SHINO:大丈夫よ。その弁護士さん私のお願いは何でも聞いてくれるから、タダでやってくれるわ〉
〈桃@黒やぎ:な、何でも、ですか?〉
「ん?何でも?」
私も桃花さんのメッセージと同じ疑問が生まれた。
「実はさ。うちの芸能事務所のお抱え弁護士なんだけど、私にぞっこんなのよ」
「はぁ」
私は生返事。それで何処の弁護士事務所か凛花さんに聞いて、スマホで調べてみる。私はその事務所の弁護士が女性でめちゃくちゃ綺麗な人だと感心していた所に凛花さんがとてつもない事をぶっこんで来た。
「実はその弁護士、私の彼女なの」
「‼・・・は?え?」
私はその言葉に固まり、弁護士の画像を凝視していた。私は混乱し、画像と凛花さんを交互に見てしまう。
「ネットでいうところの、キマシタワーと言うやつですか」
芳賀君は意外にも冷静だった。こんな綺麗な人が凛花さんとイチャイチャしてるところが私には想像もつかない。
「ちょっと待ってください。この流れだと私が女好きっ事なるんじゃないですか?」
「そお?・・・・ヨシ」
私の質問を横に凛花さんはヨシのタイピングでエンター押してメールを送信していた。
〈SHINO:私、女の子好きだから〉
「あああああぁぁぁ。凛花さんなんてこと書いて送ってるんですかっ」
私は凛花さんの書いたメッセージに絶叫していた。
「事実じゃん」
「それは凛花さんの事ですよね。私は女好きじゃないですよ。これだとSHINOが女好きのBL大好きの女子高生になるじゃないですか」
私は凛花さんに抗議する。案の定、桃花さんからのメッセージはこう書かれていた。
〈桃@黒やぎ:SHINOさんは両刀なんですね。年下なのに私、尊敬します( `ー´)ノ〉
「ほらぁ、言わんこっちゃない」
私はモニターの書かれていた桃花さんの返事にモニターを指さしてしまう。私は頭を悩ませる。もう、どうすんのよ。私、こんな事で尊敬されても困ります。
「どうするんですかっ」
「キャラ設定的に良いんじゃない?」
私の悲痛な叫びに凛花さんは一蹴する。キャラ設定って、そんな小説やマンガじゃないんですからと私は思い、必死に考える。
「もう、これでいいじゃん」
「良くなーい」
凛花さんの適当に返しに、私はさらに怒る。そんな時にまたもやメッセージが送られてきた。
〈桃@黒やぎ:SHINOさん、私さっき教えてもらった事務所に連絡します。そして、言われた通り復讐します。この復讐が終わったら是非、SHINOさんの戦国BL小説を読ませてほしいです〉
「あらぁ~。これはフラグ立ててるね。これは死ぬね」
「勝手に殺さないでください‼」
私は凛花さんの言葉にツッコミを入れる。しかし、私もこの文を見ると死亡フラグが見えてしまう。
〈SHINO:大丈夫。私が助けるし、あなたならできる。私、書くから〉
〈桃@黒やぎ:はい、頑張ります(>_<)〉
私が悶絶していると凛花さんが勝手にメッセージを書いて送ってしまった。
「何、勝手に送ってるんですか」
「もう、やるしかないわね」
凛花さんの親指はグッドサイン。私はその指を見て、へし折りたくなるが自制心がそれを止めた。芳賀君は芳賀君で私の戦国BL小説、僕も読みたいですねと言う始末。
この後、私は必死で歴史を勉強し、戦国BL小説を書き上げる事になる。そして、桃花さんは高校でのいじめを凛花さんの知り合いの弁護士に相談。学校、マスメディアを巻き込む形でいじめた人たちを訴えた。桃花さんのいじめは連日報道され、裁判は勝訴。いじめた生徒と学校は賠償金を微量ではあるが桃花さんに払う事を命じられた。いじめた生徒は高い勉強料を払う事になりましたねと地方のTV局では揶揄されていた。こんなこともあるんだとなと感心しながらニュースを見ていた。桃花さんはこれを機に自分で小説を書くことになり、私とは友達になった。
私はと言うと戦国BL小説が小説サイトで普通のBL小説より人気が出てしまうという珍事があり、その戦国BL小説の連載をすることになってしまった。喜んでいいのか私の中で複雑な気持ちになる。
しかし、最後に言わせてほしい。
私は両刀ではないと・・・
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