第24話 私でなきゃ・・・
私でなきゃ見過ごしちゃうね。
モニターにBL小説のおかしい言葉を発見する。バックスペースキーでその言葉を消去。その繰り返しだ。私、東雲亜里沙は新しい言葉を考える為、頭を掻きむしる。
「あぁ、思いつかない」
小説を書くのに夢中だったが私はふと、時計を眺める。時計の針はAM1:00を回ったところだった。もうこんな時間なの?時が過ぎるのは怖いわね。
「お腹減った。甘いものを所望する」
私は誰もいない部屋で一人で喋るが部屋は静まり返っていた。何か、虚しい。お腹を触るとグゥと鳴った。
「台所に行って、何か食べ物探すかなぁ」
私はキーボードから手を離すと台所に向かう。あー、お腹すいた。
私は台所に到着すると冷蔵庫を発見する。冷蔵庫の扉を開けた。冷蔵庫を開けた冷気で体が少し震える。
「食べるものなんか、あるかなぁ?」
私は冷蔵庫の中を物色し始めた。基本的に私の母は料理をしても残り物はしないタイプで余計なものは冷蔵庫に置かない。だから基本、冷蔵庫の中の物は整理されていて置いてあるものも少ない。
「おっ」
私の目に飛び込んできた物それは地元で有名なお菓子屋さんの箱だった。その箱を手にし、箱を開けてみた。
「どら屋のどら焼きだ」
私は嬉しかった。多分、お母さん買い物の途中で買ってきたんだろう。箱の中を確認するとどら焼きがぎっしり入っていた。1つもらーい。どら焼きを手に取ると牛乳をコップに注ぎ、自分の部屋に戻ることにした。第2戦、準備完了。
私は部屋に戻ると、机に向かい椅子に座るとモニターの右下に新着メールの通知が来ていた。
「こんな時間に誰?桃花さんかな?」
私はマウスを操作して、新着メールの中身を開ける。そのメールの中にはユーザー名:芳賀と言う名前が表示されていた。
「あれ芳賀君か。こんな時間に珍しいわね。なになに・・・」
私は芳賀君の文章を黙読する。
今日は小説の内容が湧き出てきたので読んでくださいと書かれ、小説のデータが添付されていた。
「こんな時間まで書いてたんだ。まっ私も同じか」
私は同じ穴の狢ねと苦笑いをしながら、データの中身を確認。
私は小説を読み始めた。
時は20XX年・・・
地球は未知のウイルスに侵略され、人類の約半分が死滅した。しかし、それだけなら良かったのだが、女性が死滅し男性だけが生き残る形になってしまった。そして人類は男性のみで形成され、人類は滅ぶことを約束された状態にまで追い込まれる。
だが、その危機的状況を打破しようと一人の男が立ち上がる。
俺の名前は北斗光流。しがない科学者だ。俺は今のこの状況を打破する研究をする為に旅をしている。
「何か、設定が昔の漫画みたいね」
私は先を読み進めていく。
俺はニックと見つめ合う。
「お前の事が好きだ!」
俺は旅先で出会ったニックに告白される。思わぬ告白に俺は動揺を隠せない。俺はウイルスにより体の細胞が腐食し破壊されているニックに抱き締められる。抱き締めた勢いでニックの左腕が落下。
「何でよっ!」
私は小説に一人ツッコミが深夜の部屋に木霊した。
「腐ってるって、BLもだけど愛し合う男の体も腐ってるんかい」
私は考える。これだと所謂、愛し合う見えないやおい穴にアレ入れたらもげるんじゃない。こんな愛し合い方、怖いよ。これ、腐女子と腐るという名のダブルミーミングかな。しかし、どう見てもこれは男の子同士の恋愛では無くてホラーよね。
「いろんな意味で腐ってるわ。早すぎたわね、これは」
芳賀君は小さなころからBLに親しんできた家庭環境だからなぁと私は思う。それにあのお母さんだし貴腐人の躾が厳しそうね。しかし、それとこれとは別。
私はおおよそ芳賀君の書いたBL小説を読みメールで感想を送る。
「この小説はいろんな意味で怖いから受けないと思うよ。と送信」
私は芳賀君にメールを送り、自分の書いているBL小説を書き始め用としたその時だった。
モニターにまたも新着メールが届く。そこに出ていた名前に私は驚いた。
「芳賀君。早っ‼」
その返信は芳賀君のメールのものだった。今度は何?と思いながら私はそのメールの中身を確認する。
「筆がはかどってしょうがないです。もう一本書いたので読んでくださいって」
そのメールにも小説のデータが添付されていた。そんなに早くかけるものなのと思いながらそのデータを開く。しかも前作同様、文章は結構なボリュームだった。
「さっきのダメって言われて、直ぐにこれとか撃たれ強過ぎでしょ」
まぁ、いつもの事と言えばいつもの事なんだけど。私は送られてきた小説を読み始める。
僕はアシュレー・ザックバーグ。一人ガーディアンに乗り、偵察の為に宇宙空間を漂っていた。ガーディアンとは地球防衛軍が開発した高性能人型兵器だ。この高性能人型兵器は開発に時間がかかり、宇宙空間を飛行するのに20年以上の歳月が掛かり、今現在に至っている。
「さぁ、今日も偵察だから楽勝だ。さっさと巡回して帰るか」
僕はガーディアンのコクピットで独り言。この宙域は敵機がほとんど来ない平和なひと時を味わっていた。
その時。
ビビビィーーーーーーーー
コクピット内の警戒警報がけたたましく鳴る。
「なっ、何⁉」
僕は慌ててレーダーを確認した。さっきまでは何も映っていなかったレーダーに赤く点滅していた。
僕は初めての戦闘に緊張し、操縦桿を握りしめる。まだ、本物の戦闘はしたことが無い。シュミレーターの模擬戦だけだ。
「今度はロボットものね。ロボットの事はほとんど分からないけど。まぁいいか」
私は読み進めていく。
僕の機体の前に1体のガーディアンが現れる。僕はそのガーディアンの識別確認をしていた。
「・・・お前は敵か。味方か」
敵機から男の声で通信がいきなり入ってきて僕は驚く。僕の機体の通信回線はオープンでは無かった。その後、その機体の表示はUNKNOWとだけが出ていた。こんな機体見たことが無い。僕は咄嗟に「て、敵だ」と呟いていた。
「お前は俺の敵」
僕の声が聞こえていた。通信はオープンでは無い事を再度確認。やはり、聞こえるはずがないと僕は認識する。
すると、通信用のモニターが勝手につき、敵の顔が映し出される。
「⁉」
僕はまたも驚いた。そのモニターに映し出されていた人物に見覚えがあった。
「ディートリッヒ」
思わず僕はその名前を叫んでしまう。そこに映し出されていた人物が僕の昔からの友人。スクールの下校途中に戦闘に巻き込まれ、僕は一命を取り留め、ディートはその時に行方不明になった。
「僕だよ。アシュレー。分からないのかい」
僕は通信をオープンにして、ディートに必死に呼び掛ける。
「誰だ、お前は。俺はお前を知らない。殺す」
ディートはそう言うとディートの機体が僕の機体に襲い掛かってくる。僕の事を忘れているか記憶が無いみたいだ。僕は機体を操縦し、必死に逃げ回る。逃げ回りながら、ディートを死に物狂いで説得した。しかし、現実は厳しい。攻撃の手は休むことは無く、只時間だけが過ぎて行った。
「何か、いい感じかな」
私は結構いい感じかもとコップに入れたミルクを飲みながら読み進める。恐らく、そろそろストーリーのオチがあることを期待しながら、マウスでスクロールをして文章を追っていく。
「こうなったら、ディートと自爆するしかない」
僕は機体の自爆スイッチに手をやる。ディートに他人を殺させたくない。僕は後戻りはできないと思い、スイッチを押した。機体からはアナウンスが流れ、サイレンがけたたましく鳴り響く。
『自爆シークエンス発動、爆発迄60秒と搭乗者は速やかに退避をしてください』
僕の機体はディートの機体の動きを止めるために抱きついた。
「ディート、もう逃げられないよ。一緒に死のう」
「放せ。何故離れない、くそ」
「君はこれ以上、他の人に迷惑を掛けちゃいけないんだ」
ディートの機体が僕の機体から離れようとする。機体の腕がきしむ音がする。
時間まで持ってくれよ。時間は一秒ずつカウントダウンされていくのが見える。僕はディートとの学生時代の事を思い出していた。
「くそがぁぁぁぁぁ」
ディートの声とともにカウントダウンの表示がゼロになる。
「一緒に逝こう」
と僕が言ったその時だった。僕の機体の股間部分から一本のキャノン砲が出てくる。そのキャノン砲は敵の機体の股に固定された、その時。
そのキャノン砲からは巨大なビームが発射され、ディーノの機体を打ち抜く。それと同時にディーノが叫ぶ。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
その声に充てられ、僕も叫んだ。
「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
ディーノの機体は爆発し、その爆発に巻き込まれた僕の機体も誘爆した。
「ブォッーーー‼何でよっ!」
私は口に含んでいた牛乳を吹き出す。牛乳は咄嗟に下に吹いたのでパソコンには被害は無かったけど、自分の服と床が白に染まった。
「おかしいわよね、何であそこからビーム。先行者なの。この場合だと一緒に自爆して主人公が走馬灯の中で友情語りで終わりか。主人公がディーノの亡骸を抱き寄せ、涙するでいいじゃない。まぁ、BLではちょっと薄い感じではあるけど。しかも、ロボット同士の絡みってどこ需要?ロボットにやおい穴無いわよつ‼それに・・・」
私はこの小説にひたすらツッコミを入れていた。ツッコミどころ満載。しかも深夜の自室で一人。少し虚しさを感じる。これは明日、芳賀君にクレームを入れないとと思う。吹いた牛乳を拭き取り、寝床に入る。その日は疲れていたこともあって、直ぐに寝ることが出来た。
次の日の放課後
「どうしたんですか?急に」
私は芳賀君を校舎裏に呼び出した。芳賀君はいつもの制服姿で現れる。
「どうしたじゃないでしょ。昨日の小説は何?」
私は呼び出し一発目の言葉で芳賀君を罵る。
「?何のことですか?」
芳賀君はいまいち私の言葉に反応が悪い。私はその反応にさらにいら立つ。
「何のことですかじゃないでしょ。昨日の夜中、私のパソコンに小説のデータ送ってきたでしょ。その小説がツッコミどころ満載で。文句言いたいのよ」
「昨日?僕、その時間パソコンなんてやってませんよ」
「は?」
私は芳賀君の言葉で固まる。芳賀君の言い分はこうだった。芳賀君はその日、確かにパソコンをやっていたが私にメールは送ってはいないと言う事だった。しかもその時間はもう寝ていたそうだ。
それを聞いて、更に私の顔は青ざめていく。
「どういう事。あのメールは芳賀君じゃなかったの?名前は芳賀君だったわよ」
「でも僕はそんな小説データ書いてませんし、送ってないですよ。BLの妖精が下りてきたんじゃないですか」
私は昨日の小説のデータをスマホに保存して、芳賀君に目を通してもらった。まさかの返事が返ってきて、私はかなり混乱する。確かにあのメールは芳賀君のアドレス
「東雲さん。連日のBL小説の執筆で疲れてるんですよ」
「そうかも」
「今日は部活休んで、帰ってゆっくり寝て下さい。高瀬部長には言っておきますから。でも本当にBLの神様がいたのかもしれませんね」
「休むわ。想像すると確かに怖いわね。疲れが溜まってるのかも」
芳賀君の言葉に、私は今までの疲れが出た感じがした。私はあのメールが幽霊やポルターガイストの仕業とは思っては無いけど、何か怖い。
私は芳賀君と別れると家に帰り、早々と就寝することにした。
後日談・・・
率直に言うとあの夜のメールは幽霊でもポルターガイストでも無かった。その理由は芳賀君のSNSのメッセージで送られてきた。
『お疲れ様です。先日のメールの件ですが僕の母が僕のパソコンを勝手に使って送ったみたいです。本当にごめんなさい。その日はパソコンをスリープモードにしてたので使えたと言ってました。東雲さんには私の妄想小説に付き合わせてごめんね。楽しかったわ、(。・ ω<)ゞてへぺろと母は申しておりました』
私はこのメッセージを見て、この親にしてこの子ありと一人で納得していた。まぁ、私もあれだけ小説にツッコミを初期の芳賀君のBL小説だなぁと思い出す。
私もBL小説はやっぱり書いてて楽しい事には変わりないことを実感するのであった。
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