私に恋をするのは難しい

穴一

第1話 それは突然・・・

 それは突然やってきた。

 私は、星宿高校の高校1年生。東雲亜里沙。この学校は1年の生徒数は意外に多く300人近くいて、クラスも結構な数がある。私は1年Ⅽ組。特に大きなイベントもなく平坦な学校生活を送っていた。部活は文芸部に入っている。私の学校は文化部が充実していて、文芸部部員といろいろなロマンス小説(BL)、恋愛小説を書いてお互いに読みあって楽しんでいた。

 しかし、平和だった日常が一変する出来事が起こる。


   数日後


 朝のホームルーム。教室内は1限目の準備している者、昨日のTV番組の内容で盛り上がっている者、スマホを見ている者などでにぎわっている。

 予鈴がなり、教室に先生が入ってきた。

「みんな、席つけよ。ほらほら。早く」

 生徒たちは、先生の一言で「はーい」と返事を返し、各々の席に戻っていった。

 私は、もうすでに席についていて、一限目の準備もして準備万端。

「よし、みんな席に着いたな。入ってきなさい」

 先生は全員の着席を確認し、前側の扉に目をやると手招きをしていた。手招きされた扉から、一人の制服を着た生徒が入ってきた。見たことないな。他の生徒もざわついていた。先生は静かにしないというと生徒たちは静かになった。

「こんな時期にだが、転校生を紹介する」

 今の時期的には9月後半。大体、夏休み後、直ぐとかは聞いたことあるけど。

「両親の仕事の関係で、こっちの高校に転校してしてきた。芳賀康太君だ」

 先生の紹介を受けた芳賀君は自己紹介を始めた。

「初めまして芳賀康太です。よろしくお願いします。父の仕事の関係でこちらに引っ越してきました」

 芳賀君はその場で一礼をした。

「よろしくな」

「よろしく~」 

 クラスの生徒たちは、芳賀君に挨拶し、手を振るものもいた。

「よし、芳賀。空いているせいに座れ」

 芳賀君は、ある男子生徒の席の前に座った。これがラブコメだったら、私の席の隣に来て、よろしくっていうのがお決まりのパターンなのだけど、私の席の隣は他の男子が座っている。これが普通の展開。

 朝の自己紹介、先生からの連絡が終わり、1限目の授業は滞りなく始まった。私の成績は中の上で、今のところ問題は無い。授業は順調に進み、昼食の時間になった。

 私は、授業の教科書をカバンに入れる代わりに、お母さんに作ってもらっいるお弁当を出した。見た目も鮮やかで美味しそう。毎日、お母さんありがとうございます。私は手を合わせ、食べ始める。

 だが、ここで事故が発生した。私の目の前に、今日の転校生が購買で買ってきたであろう菓子パンを私の前で食べ始めたのだ。クラスの中でもそんなに目立つ立場でもない私の所にだ。

 私は、食べかけのウインナーを余りの衝撃に床に落としてしまった。周りの生徒たちもエッていう顔でこちらを見てきた。ちょっと、どういう事。私は慌てた。そこで、ある漫画の名言を思い出す。私は”まだ、慌てる時間じゃない。素数を数えるんだ”と思い出し、素数を数え心を落ち着かせ、芳賀君へ聞いてみた。注目を集めないようにさりげなく言う。ウインナーを拾い上げ、食べずに弁当の蓋へと置いた。

「ここ、君の席じゃないよ?」

 私の言葉に周りの生徒たちは静まり返り、逆に注目を集めてしまった。

「はい、知ってます」

 私は思わぬ言葉が返ってきて、ツッコミを入れようとしてしまいそうになる。心を落ち着かせもう一度、聞いてみた。

「私、君と初対面なんだけど?」

「クラスに友達いなくて」

 芳賀君はそう言うとサンドイッチに食いついた。私の質問にその返しおかしいよね。その後は私は何も話さず、黙々と自分の弁当を食べた。芳賀君も購買で買ったパンを平らげると「じゃあ、また!」と言い残し、私の席から去っていった。「また!」ってどういう意味?

 それからだ。授業の合間合間に女子たちからの質問攻め。でも私は知らないの一点張りしか言えない。女子たちの井戸端会議は放課後にまで続き、その話題の中心は私。

 私は授業が終わるとすぐに、教科書などをしまい教室を出て行った。私は何を逃れ、安息の地へと向かった。

 そう、私の安息の地は文芸部の部室だ。実習棟の3階にある。部員は全学年で7人ほど全員、女子。最高だ。

 私は、いつもの様に執筆している、主にインターネットの小説投稿サイトの私のページを見てもらう。お互い書く媒体は違えども、みんな執筆している。私のジャンルは恋愛小説、ラブロマンス小説主にBL小説を好んで書いている。ある漫画の二次創作やオリジナルでいろいろ妄想を膨らませて書いている。読者の方の結構最近増えてきていた。ここの空間では、ここの表現言いねとかこの組み合わせズルいわーとか基本ここにいる部員は世間でいう婦女子であり腐女子だ。私たちはこの空間を楽しんでいた。

 そこへ部室の扉が開く。私たちの楽園は消えた。

「あのー、すいません。ここって文芸部の部室ですよね」

 男子生徒の声が聞こえ、私と部員全員がそちらの方を向く。

「入部希望なんですが」

 私はその顔とその声でびっくりする。

「何で君がここに、芳賀君」

「東雲さん、やっぱりここにいた」

 やっぱりってどういう事。私、芳賀君には一切言ってない。しかも、今日が初対面だ。

「入部希望者かい?」

 3年生の高瀬先輩が芳賀君の前に出ていく。身長も高く、眼鏡をかけ黒髪ロングのおしとやかな先輩だ。成績もよく、運動神経もいいのに、なぜ運動部ではないのだろうと思ってしまう。

「そうです」

 芳賀君ははっきり言う。そのあと衝撃的な発言をした。

「実は僕、東雲さんの小説のファンなんです」

「え?なんだって?」

 私の耳は正常に聞こえてたのか、一度聞きなおす。高瀬先輩や他の部員も聞き直しを要求した。

「だから、僕は東雲さんの小説のファンなんです」


「えええええええーーー」

 文芸部の部室が激震するほどの声をたった7人の部員で出してしまった。その声を聴いた吹奏楽部や手芸部、美術部はたまた教師までもが3階の文芸部の部室の前に野次馬が集まってきてしまった。

 高瀬先輩が部室の外に出て、無いもないことを説明し謝罪を行い、その場は事なきを得た。文芸部の部室の外は野次馬は散り、いつもの放課後の様に穏やかな空間へと戻っていった。野次馬が帰ったところで高瀬先輩が芳賀君へ質問した。

「驚いてしまってすまない。君の言っている東雲の小説は分かると思うが・・」

「はいっ、(ボーイズラブ)BLです」

 きっぱり言われると言われる方が恥ずかしい。

「そのサイトで誰が投稿したものかわからないだろ」

 芳賀君はポケットに手を入れるとスマフォを取り出し、ある画面を見せてきた。     

 それはBOYAKIと言うSNSの画面だった。最近、若者の間で流行りだしているものだった。私は見覚えのある画面が見えた。そこにはSHINO@BL大好きと書かれたユーザーのページが見えた。そこには今日の出来事をボヤいていた。これ私の投稿だ。今日のお弁当の事や転校生の事とかボヤいている。その中にはBL小説を執筆した報告や、ここではちょっと言えない投稿もあった。

「君はSHINO@BL大好きが東雲君だと気づいたのはどこかな?」

「はい。今日のお弁当の中身です」

 高瀬先輩はお弁当の映像をまじまじと見て、これは可愛いなと褒めていた。

「これは君の投稿か?」

 高瀬先輩はキリッと向いて聞いてきた。

「は、はいっ」

 条件反射で答えてしまった。

「いつも、お母さんに作ってもらうお弁当写真撮ってボヤいてます。フォロアーさんからの反応もいいので、つい」 

「君は気を付けた方がいい。いろんな人が見ているんだ。いわゆるストーカーもいる可能性もあるんだ」

 高瀬先輩はネットは使い方を間違えると怖いということを私だけでなく部員全員に忠告した。

「で、君。芳賀君はどうしたいんだ?」

 高瀬先輩は少し高圧的に質問した。

「はいっ。僕も東雲さんや皆さんとBL小説を書きたいんです」

 芳賀君は熱のこもった発言をする。

 私、高瀬先輩、他の部員も予想の斜め上の回答に困ってしまった。何でも、私と同じ小説投稿サイトでBL小説を書いているらしいのだけれども読者も評価も上がらない。で、BOYAKIでフォローしていたSHINO@BL大好きが私と分かったから同じBL作家として、自分のBL小説の師匠になってもらおうと近づいてきたらしい。

 高瀬先輩は考え、いつの答えにたどり着いた。

「よし、東雲。芳賀を弟子にしてやってくれ」

「は?」

 私は考えることを止めた。

「有難うございます、高瀬先輩」

 芳賀君は目を潤ませて喜ぶ。その後、部長の言葉からこの言葉以上のとんでもない発言をし、私他の部員を驚愕させた。

「後、これは部長命令だ。東雲と芳賀は付き合いなさい」

 私はこの先輩頭いいって言ってたけど、本当は馬鹿なんじゃないかと思った。

「何を言い出すんですか、高瀬先輩」

「いや、何。付き合うことで小説の書き方や表現方法をお互い学びあうんだ。切磋琢磨し良いBL小説を書くんだ。そして、その小説を私たちに見せるんだ」

「それが目的ですか」

 私はツッコミを入れてしまう。芳賀君は高瀬先輩の言葉に納得し頷いていた。納得するんだ。

「分かりました、先輩。東雲さんと付き合い学び、BL小説を書かせていただきます」

 芳賀君はより一層意気込んでいた。

「いや、おかしいでしょ。私の意見は?」

 私は高瀬先輩に食らいついた。

「この方が私たちもそれをネタにがぜんやりき出るし、いいじゃない。ウィンウィンじゃない」

 高瀬先輩は両手をピースにし、双方いいこと尽くめじゃい喜んでいた。

「頑張りましょう、東雲さん」

 芳賀君は私の手を握り、鼓舞してきた。

「なんでだーーーーーー」

 私の叫びは夕焼けの実習棟をむなしく木霊した。

 そして、私の生活は今日を境に陰から陽へと変わるんのであった。

 


 




 






 


 

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