第11話 その頃マイン城では②
王室に団長を呼び出して、しばらくして彼が到着した。
「失礼いたします!」
「よくきたな騎士団長、ところで増兵した分の成果はあげられておるのかな?」
「そ、それがですね…」
なんとなく団長の歯切れが悪い。
「何かあったのか?」
「それがまだあまり成果をあげられてなくてですね…」
「あれだけ増兵をしたのにか?」
「申し訳ございません。もうしばらくお時間をいただけますと必ずや魔王軍幹部の所在を掴んでみせます!」
「そうか…期待しておるぞ」
声はかけたもののハッキリ言って落胆している。
これでは清掃員がいた時よりも城が汚くなっただけではないか。
「それでは失礼します」
団長は重い足取りで部屋から出て行った。
以前の団長の自身に満ちた姿はどこにやら…
「しかし、掃除もろくにできてないのか部屋の空気も悪いな…少し外でも散歩するとしようか」
ここ最近はあまり外に出てなかったからな。
太陽が降り注ぐ庭に出ると、兵団の魔術師が水魔法で城の壁面を洗い流している。
「そうか、汚いものの一応城の掃除は兵団達がかわりにしておるのだな」
魔術師に近づくと向こうもこちらに気付いたのけ魔法をやめてこちらに一礼する。
「気にするでない。続けてくれ」
「かしこまりました」
魔術師は再び壁面を水で洗い流す。
「もっと大量の水は扱えないのか?この程度の水量ではいつまで経っても終わらんぞ」
「お言葉ですが王様、僕はこの兵団でもトップクラスの水魔法使いです!これでも他のものより何倍もの水を扱っております」
魔術師は自信たっぷりといった様子だ。
「しかし、元清掃員のシンは今のお前の何倍もの水の量を扱って城壁を洗い流しておったぞ!」
魔術師が明らかに動揺する様子が見て取れる。
「そ…そんなことあるはずないですよ!その人は最上級の魔術師だったのですか?」
「いや、ただの清掃員だ。特に戦闘なんぞはしたことがないのではないか」
魔術師の顔が信じられないと言った表情をしている。
「まあ、久しくシンの掃除姿を見ておらぬからな…少し誇張しすぎたかもしれん。忘れてくれ」
その場にいるのが少し気まずくなり早々に王室へ帰ることにした。
久しぶりの散歩だったが、すぐに終わりを迎えることとなった。
「はて…あれは私の見間違いだったのか…」
だっておかしな話だろう…
たかが清掃員が兵団屈指の水魔法使いを遥かに上回る力を持つなんて…
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