クラスではお調子者キャラな俺でも、真剣にこの子を好きになってもいいのだろうか。
死にたいってのは『逃げたいハワイいきたい』と同義らしいですが、どれだけ逃げてもどれだけハワイへ行こうとも結局は死にたくなるんだよなぁ……。
死にたいってのは『逃げたいハワイいきたい』と同義らしいですが、どれだけ逃げてもどれだけハワイへ行こうとも結局は死にたくなるんだよなぁ……。
「どうせ今日でまたわたしは先輩にも捨てられて独りになっちゃうんで全部お話しますけど、あの日わたしがショーくんに捨てられて泣いていたとき、先輩はわたしを励ましてくれましたよね? 『なにやってるんだろう、この人……。変だしすごく気持ち悪いなあ』って正直思っていましたけど、でもねそれが凄く嬉しくもあったんですよね。だから教室まで会いにいったんです。お話したいとおもって!」
、、、
「最初は避けられていました。こわいのは仕方ないかーと自分を納得させていましたけど、でもいつまで経っても先輩は心を開いてはくれませんでした。あれこれ言い訳を重ねて全部受け身な先輩が女々しくてなんだかウザくて、でもあの時の"優しさ"は本当だったから信じてみようかなって、思っていましたけど……やっぱりねダメだったんです。どれだけ嫌いになろうとしても、あの人との想い出が蘇っていく。当たり前じゃないですか。はじめてできた彼氏なんですから。……忘れられるわけがないですよね?」
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「わからないんですよね、恋愛っていうのが。誰かと本気で恋に落ちた経験なんて皆無に等しいんで。自分なんてこの世界に必要ないだろうなーと思っていたんで、そりゃワガママを効いてくれる存在がいたら嬉しいし、懐きだってしますよ。わたしは恋愛脳なメンヘラなんで。これが本当に恋というのかはわかりませんけど、でも別によくないですか? 都合よく自分を好いてくれる存在を求めてしまうのも、ワガママを聞いてほしいと願うことも、女子だったら少なからず望むと思うんです。わからないですけどね!」
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「先輩にとってのわたしも"都合よく懐いてくれる可愛い後輩"だったわけでしょ? じゃあわたしにとっての先輩だって"昼休みに都合よく相手をしてくれて寂しさを埋めてくれる面白い人"だったってわけですよ。これってWIN-WINですよね? いいじゃないですか、恋愛なんて堅苦しいことなんてやめてしまって今だけを楽しんでいれば別によくないですか! どうして付き合ったりとか、そんな面倒なことを考えてしまうんですか。どうせ大半のカップルは別れてしまうんですよ? わたしはもう傷つきたくないんです。誰のことも本気で好きになりたくないんです! 真面目な話なんてしてほしくなかった。だってどちらかが傷付くのは目に見えていたから!」
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「わたしのことを知ってほしいって言いましたけど、知ってほしくないと思うこともたくさんありました。どうせなら全部を言ってお別れしようと思います。そして“ヤバい女"って噂を流してくれればいいですよ。そういうの慣れっこですし、昔から」
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「まずわたしはメンヘラです。過去に自傷行為だってしていました。これをショーくんに言ったら一発でドン引きされました。これが捨てられた原因かもしれません。とても情緒不安定な気まぐれちゃんです」
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「そして寂しくなったらすぐに拗ねます。あとめちゃくちゃ重いらしいです。夜に眠るときには電話してくれないといやです。わたしが会いたいと思ったときに会いにきてくれなければ泣きます。でも会いに来てくれたとしても、機嫌が良くなかったら帰ってもらいます。それで怒らないでほしいです。わたしだってこういうワガママなところを治したいですけど、まだできないです。自分のこういうところが大嫌いなんで、これら全部を受け入れてくれる人がすきです」
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「愛情表現はたくさんしてほしいです。えっちのときは手をつないでほしいです。ちゅーもいっぱいしてほしいです。浮気は許しません。噓つきで飽き性なんで構ってほしくて変な行動をしてしまうこともありますけど、全部受け入れてほしいです。あ、あと昔から配信者をやっています。ショーくんが彼氏としてははじめてでしたけど、経験人数はそれなりに多いほうです。jcの頃は出会い厨にホイホイついていってバカやってました。そのせいで男の子からは好かれる方法は身に付けましたけど、女子からはすごく嫌われる性格になりました。クラスでは浮いています。みんながグループで固まってトイレにいく中で、わたしは一人でトイレにいきます。お昼はいつもショーくんと食べてたけど、別れたあとはいつもグラウンドのベンチでボーっとしています。リアルでの友達はいません。ネットにはたくさんいるけど、みんな顔とか身体目的の出会い厨ばかりで、誰も本当のわたしには興味を持っていないです。お人形さんと同じ。それも慣れたんでいいんですけどね? チヤホヤしてくれるのなら、わたしを認めてくれるのなら、全然いいんですけどね?」
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「あのね、先輩。先輩はとても優しい人だからあんまり言いたくはなかったんですけど、ありのままの自分を愛してほしいだなんてできるわけがないんですよ。今回の件でハッキリとわかりましたよね?」
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「ブサイクで、ぽっちゃりで、身長も小さくて、服も髪型もダサくて、運動音痴で、小学生の頃にはいじめられていて、気持ち悪くて、卑屈で弱気で女の子とはうまく喋れないし自分から行動なんて起こさないけれど…………でも俺は優しくて面白いから、きっと女性は好きになってくれる! あいつらの見る目がないだけ! だなんて考えはもうやめにしませんか。カッコいいショーくんに嫉妬するのはいいですけど、でも先輩はあの人がどれだけ陰で頑張っているのかを知らないですよね? モテるカッコいいやつを恨む前にやることがありますよね?」
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「わたしのことを本気で好きならどうして頑張ってくれなかったんですか。どうしてわたしのことを少しでも知ろうとして、好きにさせる努力してくれなかったんですか。不細工とか、弱いからとかそんなのを言い訳にしてありのままの自分を受け入れてほしいだなんて……そんなの叶いっこありませんよ? 恋愛は相手がいて成り立つものです。歳下だからって何も知らないと舐めてかかってくるから負けるんです。わたしは振られて捨てられてから自分のダメなところにたくさん気付けました。だからこそ言いますけど、わたしも大概ですが、先輩もかなりのワガママですよ?」
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「両想いだった人が自分のせいで傷ついてお別れしなくちゃいけなくなる悲しみや苦しみを、先輩は知っていますか? 知らないですよね。誰かと本気でお付き合いした経験がないんだから。ずっとそこから逃げてきたんだから。だからわたしのことをわかっているようで、何もわかってはいませんよね。女の子の気持ちを考えることから逃げてきた人生なんだから! ありのままの自分を見るのが怖いから、周囲に責任転換をして、斜に構えることでプライドを守ってきた人生なんですから!! そうですよね? 違いますか!?」
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「都合良く恋愛から逃げて、諦めたポーズを取って、これが自分だと開き直って、個性というワガママを振りかざして! なにもせず、ちゃんと頑張っている人の文句を垂れて、内心では劣等感には駆られて本当はとても悔しいのに、その悔しさを自分磨きには使わずに無意味な怒りに発散して、それで何かが変わると思っているんですか? 甘えないでもらえますか? 最低限の努力をして、それでもダメなときに【モテない】と言ってくださいよ! あのですね、モテなくても頑張ろうとしている男性を女性はしっかり見ていますからね! そもそも恋愛を真剣にしたいのなら、ありのままの自分を愛してだなんて願望を語る前に行動から変えてくださいよ。それもせずに【モテない】だなんて、モテている人たちに、そして日々自分を綺麗に保とうとしている女性たちに失礼だとは思いませんか?」
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「冗談ではなく、本気でわたしに好きになってほしいと願うのであれば! ──せめて、一緒に歩くのが恥ずかしくないくらいにカッコよくなってくださいよ!? 自分磨きくらいできるでしょ! 女性には当たり前のようにそれを望んでおいて、自分はなんの努力もせずに甘い蜜だけをすすろうとする。そんなのはね、出会い厨とおんなじです! なにがいじめですか! なにが"真剣"ですか! なにが『ワガママを聞かない、面白いことを何も言わない真面目そのものの浜松敦』ですか! かっこうつけないでください! そんなのを受け入れてもらえるほどあなたは好かれる努力をしたんですか!? わたしを楽しませるために頑張ったんですか。頑張ってないですよね? 全部受け身でしたもんね!!」
「あんまり──恋愛を舐めないでくれますか!?」
、、、、、
「ごめんなさい声を張り上げてしまって。でもね、恋愛って互いの自分勝手を押し付け合うもので、その反動に己の嫌いな部分を強制的に見せつけられるものなんですよね。だから先輩も一回無茶苦茶になってぶっ壊れてみてください。そしたらわかることがあるかもですよ。余計なお節介かもですが」
「……さて、ヒーローさん。これがわたしの全てです。失望しましたか?」
「あなたが知りたかったわたしの気持ちです」
「先輩とは仲良くできるとおもったんですけどね。思ったよりふつうのひとでがっかりしました」
「あんまりおもしろくもなかったし」
「だけどそんなに傷つかないでください。所詮は惚れっぽいメンヘラに振り回されただけなので、もっと素敵な人がいますよ? いい経験になりましたね」
「こんなめんどうくさいメンヘラを本気で好きになる人はいませんから……」
「ああべつに励ましてもらいたくてこんな弱音を吐いてるわけじゃないです。わたしも同様に先輩やショーくんよりも素敵な人がいると思っているので、いわゆるこれは社交辞令ってやつです」
「こんなわたしに付き纏われて好かれても逃げないなんて、本当に先輩は
「はい、以上です。わたしに触れたら“だいもんじ”でしたね? チーゴの実をちゃんと持っといてくださいな」
「ああ、ちなみに配信者なんでネットスラングとか全部わかってますよ。下ネタ耐性にも強いですし、先輩の陰キャラヲタクなノリについていけたのもその為です。相手を見誤りましたね」
「じゃあね、浜松敦さん。お相手してくれてありがとうございました。わりと退屈凌ぎになって楽しかったです。普通に友達としては好きでしたよ?」
「ばいばい、わたしのヒーローさん」
※ ※ ※
こうして俺はまた独りになった。
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