第140話


「──でもそいつ、許せない。俺のまやちゃんに、こんな怖い思いさせるなんてさ!!まじで腹立つんだけど」


 そう言う神永君の声はいつものトーンと変わらなかったけど、ちらっと顔を上げて見た彼の表情は眉間にしわを寄せていてとても険しかった。

 怒っているのがわかる。



 ……でもそんな中でも「俺のまやちゃん」発言は健在なのね。



「犯人の心当たりとか、ないの??」

 純粋に聞いてくる神永君。


 いや、あるとしたらお前のファンだよ。

 ──なんて言えず


「……うん、ない」

 と答えた。


 すると何かを考えて目を閉じる──かと思えば大きな目をカッと見開いて


「早く犯人見つけないと!!俺も目、光らせとく!!」

 握りこぶしを作って気合を入れてる。


 ……この気合が空回りしないといいけど。


 断りづらいこの状況。彼のやる気に少し後ずさった私。


「……なるべく一人にならないようにするよ。バイトない日は陸の部活終わるの待ってるし」


 何気なく呟いた私の言葉に、神永君は

「……え?なんで?」

 と首を傾げる。


「え、なんで」


 私は思わず同じ質問を返してしまった。

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