ストーカー疑惑

第138話


 ――最近、何かがおかしい。


 神永君が部活の助っ人でいないときはひとりで帰ることが多い。


 そんな時、必ず誰かの視線を感じる。


 そして考えたくないけど、後ろから私ではない誰かの足音が、聞こえる。


 私が足を止めれば少しずれてその足音も止まるし、再び進めればまた私のと重なる別の足音。



 ──正直、不安だし怖い。


 だけど今のところ確信もないし、仮にそれが事実だとしてもそれが誰なのかなんて、見当もつかない。


 だから陸にもまだ相談できていない。




 心当たりがあるとしたら──神永君の、ファンだろうか。


 面と向かって言われたことはないけど、神永君を好きな子にとって私という存在は邪魔に違いない。

 可能性は十分にあると思う。



 だから余計に神永君には言えない。

 もし自意識過剰だったら恥ずかしいし。




 ……ああ、今日も聞こえる。




 今日は学校を出るのが少し遅かったため、いつもより薄暗い通学路。


 だから恐怖心も増して自然と歩みも速くなる。



 だけど、ついてくる足音も同じように速くなって、私はとうとう走り出した。


「……っ」


 どんどん近づいてくる気配に、叫びたくても声が出ない。


 運動不足の私はすぐにバテてしまって、スピードも落ち追いつかれるのも時間の問題だった。


 そして段々と大きくなっていく足音が私の精神に追い打ちをかけ、身体も思うように動かない。


「──やだっ」


 息を切らして走り続けるけど、真後ろまで足音が迫ってきているのを感じて涙が出てくる。





「……ねえっ!!!!!」




 そう呼び止められて腕を掴まれ、強制的に止まらされたところで──終わった、と思った。

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