第124話


 クール系イケメンの後輩君が去り、図書室はしん……と静まり返っている。


「もー……マジあり得ない……まやちゃんモテすぎ…」

 大きくため息をつく彼。首にまわされた腕に力がこもる。


「も、モテないって……」

 心臓が今までにないくらい早く動くもんだから、動揺を隠しきれない。


 ……とりあえず恥ずかしすぎるからこの体勢をどうにかしてくれないかな。


 もがいてみても、彼が私を離してくれるわけもなく。その格好のまま喋りだすから、無駄な抵抗をすることをやめた。


「……俺、まやちゃんが他の男に触るだけで──笑いかけてるのを見るだけで頭の中が真っ白になっちゃう……。まやちゃんは俺の事好きなわけじゃ、ない……でしょ……。どんなことがあっても、俺がまやちゃんを諦めることはないけどさ。他の男の事、すきになったらどうしようって毎日不安なんだよ……」


 毎回、真っ直ぐ思いをぶつけてくれる彼にドキドキしないわけ、ない。



 ──だけど、私の頭の中ではさっきの教室で見た光景がぐるぐると回る。


「……それ、本当なの?本当に、私だけ、なの……?畑中君から、聞いた。私と再会しても誤解されたくないから、女子とは一切関わろうとしなかったって。……でもなに、さっきのあれ。他の女の子と喋って、自分だって笑いかけてたじゃん。すごい楽しそうだったじゃん。私じゃなくても、いいんじゃんか……」


 思っていることを素直にぶつける。


 珍しく素直になったのに黙ったままの神永君に少し、不安になる。


 ふと彼の腕の力が抜けたのに気付いて、距離を置くとさっと振り返った。

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