俺の世界でいちばん大切な幼馴染

第111話


「神永、ちょっといい?」


 ──俺は放課後、神永を呼び出した。



 世界でいちばん大事にしてきた幼馴染を、これ以上困らせたくないからだ。

 宣戦布告を、するために。



 俺の天敵、神永凛は男の俺が見ても文句なしのイケメン。


 運動神経もよくて、よくいろんな部活の助っ人を頼まれている。



 女子からの人気は絶大で、この学校で神永を知らなかったのはマヤぐらいだ。


 クールだっていう噂だったけど……マヤの前ではいつも幸せそうに笑ってる。


 馬鹿正直にマヤに気持ちを伝えるあいつが、俺はすごく羨ましいんだ。





 呼び出した俺を見て怪訝そうな顔をする神永。

 そのまま人気のない屋上へ行く。



 ……その間、俺らは言葉を交わさなかった。



 屋上についても神永は噂の通り、クールな表情のままでどこか不機嫌そうな印象も受ける。


「……分かってると思うけど──」

「まやちゃんの事だろ?彼女に関わるなって?本人にもう言われたよ。──でも俺は無理だから!!」


 俺が言い終わらないうちに、すぐさま反撃に出る神永。


 冷静な表情とは裏腹に、必死で俺に噛みついてくる姿に俺は思わず吹き出していた。


「いや、確かに関わってほしくないのは事実だけどさ。そんなこと言わねえよ。俺はマヤの彼氏じゃないんだから。……でもマヤが誤解してお前になんか言ったんだろ??俺のせいだよ、ごめんな」


 そう言うけど、神永はますますイラついたようだった。


「……あんたが謝んないでよ。まやちゃんのこと、誰よりも知ってるんだって言ってるみたいで……その余裕が、むかつくから」


 ああ──神永は、本気でマヤの事想ってくれてるんだな。


 そう思うと悔しいけど少し、安心した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る