花言葉攻め
第37話
──あれから数カ月、私たちは二年になった。
愛子とはまた同じクラスになり、めでたく「例の奴」とは理系と文系の違いでまったく離れたクラスになった。
──のはいいんだけど。
「まやちゃん!!」
振り向くと、イケメン。
どんな少女漫画だよ。
教室の扉から顔を覗かせる神永君は、ざわつく周りの声なんて全く気にしていなくて私に手招きしている。
「なに」
扉へ近づいて用件を尋ねる。
「今日の放課後、時間ある……?」
首を傾けて不安そうにする神永君はやっぱり可愛い。
「……あるけど──」
何も考えずそう言うとぱあっと表情が明るくなった。
「わーい!!!じゃあデートするから待っててね!!」
両手をあげて素直に喜びを表現する彼は子どもみたいだ。
「ちょっと、誰も行くなんて……」
最後まで言わないうちに去っていった神永君。
「わーい」じゃねえよハッピー野郎。
それから放課後まで、彼は休み時間ごとに顔を覗かせて行く。
私と目が合うと顔を真っ赤にして隠れてはまた覗いている。彼の顔が見える度に女子が黙っていないから、バレバレ。隠れる必要なんてないんだけど、彼はそれに気付いていない。
……はい、ストーカー決定。
そして全ての授業を終え、HRが終わった瞬間ドアが勢いよく開いて神永君が顔を出す。
……私が逃げるとでも思ったのか。
「あ~よかった。まやちゃんいた」
神永君はホッと胸をなでおろしている。
私はその間も黙々と荷物の準備をして、カバンを肩に掛けると立ち上がった。廊下に出て玄関へと向かう私とその後ろをニコニコしながらついてくる神永君。
その異様な光景に周りの子たちは目が点だ。
しばらく廊下を歩いていくと、聞き慣れた声に呼びとめられる。
「──あ、マヤ」
その声に振り向くと、部活のユニフォームを着た陸が目を丸くしていた。
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