第36話
「いや、私の普通はこれだけど?あんたにだけだよ、塩対応なのは。」
どうしてかなんて聞かないでよ?自分の胸に手を当てて考えてみな。
──だけど彼が注目したのは「あんたにだけ」っていう部分。
「え!?俺にだけ!?特別ってこと!?」
はい出た、ポジティブシンキング。これを素でやってるってところが馬鹿らしくて笑っちゃう。
「はいはい、そうですね」
軽く流してみたら、一瞬顔を輝かせてからハッと我にかえったような表情になる神永君。
「──ん?でも待てよ?特別なのに俺の方が苗字呼びっておかしくない?」
せっかく話を逸らせたと思ったんだけど、そこまで馬鹿じゃないらしい。
「おかしくない」
私は別に「特別だ」なんて言ってないし。あんたの勝手な思い込みじゃん。
そう言い訳しようとした私の言葉を押さえこんで、詰め寄ってくる。
「おかしいよ!!なんで優斗は名前なのー!?そんなに仲良くなったわけ!?俺の知らない間に!?」
はいはい、出たよ束縛男。
──あ、でもそう言われてみれば。今日のお昼のことを思い出すけど優斗くんって私に下の名前しか名乗ってないよね??
「だって、名字知らないもん…」
名前だって今、神永君が呼んだのを聞いて思い出したんだし。
「『もん』とか言っても許さないよ!!死ぬほど可愛いけど!! じゃあ俺のことも凛って呼んで!!!!」
──じゃあ、じゃねえよ!!!無理無理。今更恥ずかしすぎるから却下!!!だけどそんな理由で納得する奴じゃないから……。
神永君の頬を膨らませている表情がいとも簡単に想像できてため息をひとつ落とす。
「……優斗くん名字なんていうの」
こいつを黙らせるにはこれしかないと、優斗くんに尋ねてみるけど神永君は聞き逃していなかった。
「あ!!!!また呼んだ!!!」
……細かい奴だな!!!
そんな彼を無視して視線を移すと優斗くんは不思議そうにまた首を傾げながら
「え、ああ……畑中だけど??」
と答えてくれる。
「畑中くんね、これからそう呼ぶよ。──これでいい??」
じろっと神永君を見ると彼は目をパチパチさせている。
「え、いいけど……。どんだけ、俺の名前呼びたくないの……」
そう言ってまた座り込んで落ち込む神永君。
……感情の起伏が激しい奴だ。
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