第26話
「……神永君なら、悪いことは言わない。やめときな」
そう言う愛子は、いつにも増して深刻で私のことを心配してくれているんだなって思う。
……いい親友を持ったわ。
「……なに急に」
照れ隠しに目をそらしてみるけど続く言葉に衝撃を受けた。
「──あんだけモテる人があんたなんかを本気で相手にするとでも??」
──前言撤回!!!
言いたいことはわかる。ものすごくわかる。
でもさ。ちょっと、言葉の棘が鋭すぎやしませんか。
「あんたが本気になる前に距離を置くことをお勧めするよ」
私を見た愛子が、とても悲しそうな顔をするから文句を言おうと思って開けた口を閉じた。
それは私が恋愛に躓いた時、いつも見せる表情。
「……あんたは男運がないんだから」
そんなことないよって言いたいけど、言えないのが辛い。
その言葉は幼馴染にも言われ続けてきた言葉だったから。
「あんなモテ男を好きになるなんて、また傷つきに行くようなもんだよ」
──わかってる。わかってるよ。
そんなに馬鹿じゃない。神永君は、私とは別世界に住んでる宇宙人だもん。
「……大丈夫」
好きになんて、ならないから。
神永君は、苦手だ。
あの優しさも、私を見つめる眼差しも──あの人を連想させる。
たった一人、私が本気で好きになった人。顔立ちも雰囲気も、何もかも似ていないのに……。
そのことが余計に苦手意識を持ってしまう理由なのだ。
「行こう、愛子」
移動教室に行くのを忘れて話し込んでいたため、もうとっくに鳴ってしまったチャイム。
……うん、先生に怒られるよね。
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