第34話 チュージ3 ハイオーク

 進化を終えたラタが目を覚ました。


ラタ「アントどもから逃げるって話だったな。

止めだ。狩ろう。一匹残らず。

あいつらゴブリンを喰ってやがった。

まず全員ハイオークに進化させる。

俺が見つける。

半殺しにして連れてくる。

とどめを刺せ。

ムウお前から進化しろ。」


他のオークは黙って聞いていた。

すごい迫力だ。

威圧してるわけじゃない。

自然と体から溢れてくる魔力。

底が見えない。


スキル土砂泳ぎ



おもむろに立ち上がるとやつは壁に向かって飛び込んだ。



ムウ「まるで別物だな。鳥人の危険予知もより高いレベルの索敵能力として受け継いでいるようだ。」

イル「ラタ・・・」

ナキ「あれなら本当にジャイアントくらいならいけそうだな」



ダンジョンの土壁のなかを移動するスキルに感知か?

進化してよりダンジョン向きになったってことか。



ものの数分でやつは戻ってきた。

大量の瀕死状態のアントを持って。



ラタ「手足をすべてもぐのが面倒だった。やはりもはや敵ではないな。

やれ。ムウ。」


ムウは並べられたアントにとどめを刺していった。

そして十数匹を殺したところで手を止めた。


ムウ「進化出来る。新しい力が体の奥底で目覚める感覚がある。」


そういうとムウはその場にしゃがみ込み目をつむった。


ラタ「次だ。あまったアントを殺しておけ。

要領がわかった。どのくらいで進化できるのか。次は2人分だ。すぐ戻る。」



また土壁に潜っていく。



ナキ「俺もいよいよ進化の時か。感慨深いなぁ」

イル「全員進化したら国に戻る気かしら」

ナキ「さあ。ラタの目標は国崩しだからな。

まだまだレベル上げて、仲間増やしてからじゃねえか?

結局ダンジョンゴブリンを仲間にする作戦も失敗だしな。

たぶん1匹のこらずアントにやられちまってる。」


こいつらただの冒険者じゃないのか。

鬼人の国のお尋ね者かなにかか。逃げてきたか。



ラタが今度は坂道を登ってくる。

もいだ手足をつなぎ合わせアントの胴体に突き刺して引きずっている。

数珠繋ぎで繋がっている。


ジャイアントクロー、ジャイアントポイズン、ジャイアントパラライズ

サファイア、ルビー、メタル、

フライアント



羽根つきでとんでたやつまでいる。

そして一番後ろ最後尾には逃げた鳥人の2人が刺さっていた。


「ひゅーふーひゅーふー」

「お゛ま゛え゛ら・・・」


ラタ「ナキ、イルやれ。」


イルが殺すのをためらうと、ナキが2人の喉にナイフを突き刺した。


アントより先に鳥人を殺したのは

彼なりの誠意かもしれない。


イル「ナキ・・・」

ナキ「かわいそうだろ。苦しそうだったから先に殺した。」


剣を拭きながらアントに向かっていく。

次々とアントにとどめを刺す。


ナキ「お先に」

ナキが地面に倒れ込む。


イルは少しの間考え込み、決心したようにアントを殺した。

そしてその場にしゃがむと顔を両手で包みこみ動かなくなった。



ラタ「さてお前だが」


俺も殺されるのか、こいつ感知あるしおれは用済みか。


ラタ「生かすことにした。出口を探せ。俺たちがアントを殺し切る前にな。

それにナキの進化後の気性は荒いぞ。逃げとけ。」


ラタは軽く笑うと俺の顔も見ずにひらひらと片手を振った。


俺は逃げた。

オークから。アリから。そして仲間の救出からも。

あいつらを助けるために、ダンジョンを捜索するほど俺は馬鹿じゃない。

走った。

ひたすらダンジョンの中を。

登った。道なき登坂を。


いまの俺の感知ならアリにも遭遇しない。

たぶん感知のレベルが上がったな。

極限状態でずっと感知発動してたからな。

また鑑定男に鑑定してもらうか。このダンジョンを出たら。



右前方かなり遠いが、誰かくる!

人間?片方は足を引きずってくる?

アントナイトとかいう人型ではないな。

シルエットが違う。


右前方方面を良くみる。

灯りが灯っている?松明か!

正規ルートに戻ってきたんだ!

てことは新規の冒険者か。

一刻も早く中の惨状を外に伝えなければ。

仲間たちに捜索隊を出してもらわなければ。



「カティ!?鑑定男!?」



亀娘カティに先日ギルドにいた鑑定士。

話を聞く。

ワニとラクダも来ている。

2人は大量のアントと交戦中。

前の正規ルートは塞がれている。

とのことだった。


くそ!結局別ルート探すしかないのか!


ラクダとワニは見捨てて別ルートを俺と探せ。

と誘ったが断わられた。

自分のパーティメンバー見捨てられないってか。

俺は逃げちまったよ。

メンバー探しは早々に諦めてな。

亀も鑑定男もいいやつかよ。


まとめて俺が救ってやる。

再び出口を目指し未踏のダンジョン内を駆けた。







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