第27話 クロック&バン 戦闘

 地下2階だ。

先ほどまでと違って少し寒い。

「変だな」

「ああ、なにか変だ。」

「魔力が立ち込めてる感じします。」

「普段はどんな様子なんだ?」

「いつもはもっと死体が転がってるんだよ魔物の」

「ああ骨すらないな。気味が悪い」

「骨まで食べちゃう魔物がいるんでしょうか?」



数m先の横穴から魔物がでてくる。


「ゴブリン?いや・・・」

前に出るクロック。

ゴブリンの死体を抱えて出てきたアリだ。


「またアリ型か、獲物、今度はもらうぜ」

前に出るバン。


2人が構える。

バンが飛び出す。早い。

ゴブリンごと長槍で貫き持ち上げる。


後ろのクロックに渡すように投げる。


クロックは首・胴・尻部分にすかさず分ける。

重いはずの大斧の重さを全く感じないほどの見事な2連撃。


「変だな」

「ああ変だな」

「おかしいです」

「今度はなんだ?」

「いやアリがゴブリンに対して弱すぎる。」

「ああ、倒して持ってきたんじゃなくて死体を持ってきたって感じだな」

「ゴブリン、まあまあいい装備でしたよ」

「その辺は初心者には分からないところだ」

「なにか奥で起きてるな」

「大量発生か?」

「かもな。こいつは単独だったが」

「はぐれか。」

「はぐれです」

「だな」

「はぐれ?」

「ああ群れるモンスターのはずが単独で動いてるやつだ。

理由も強さも様々だがなにかあったときだな」

「例えば群れのボスが入れ替わったときとかな。

こいつは違うが。弱すぎる。

あとはこいつが弱すぎてハブられたとかw」

「笑いごとですめばいいけどな」

クロッグが斧についた体液を拭く。


「さてそうこうしているうちに3階だぜ」

「全然モンスターに遭遇しませんね」

「ああ冒険者も先に入ってるときいたが気配も臭いも足跡すらもなにもないな」

地面をかぐバン。

「ラクダって嗅覚いいのか?」

「広い砂漠でメス見つけられる程度にはな」

「そうなんだ」

「そうなんですね」

「そうなのか」

「お前ら俺の事知らなすぎな」

「すぐ逃げるじゃんおまえ」

「すぐ逃げます」

「ちょ、今回はカティと赤羽を守るぜ俺は」

「どうだか」



3階へ降りる。

「変わらずだな」

「ああ全くモンスターの気配がない」

「ここからは地図も完全ではないです。注意です。」

「4階へ降りるルートは地図に記載があるんだよな?

「ばっちりです。次の十字路を右斜め前です」

「オッケー」


「おいおいカメちゃんこれは・・・」

十字路のはずのダンジョンの壁7本に分かれていた。

「でも、松明のある方向で踏破済みか分かりますね」

「確かに」

「いやこのニオイ」

「どうした?」

「松明の方に強いアリがいるな。蟻酸(ギ酸)って分かるか?

さっきのやつからもしたんだがこいつは強力だぜ」

「だが行くしかないだろう松明の方へ」

「だな。アカ、進化個体ぽいのみかけたら一応即鑑定してくれ。」

「わかった」

「頼りになります!」



一歩また一歩と慎重に進んでいく。

「近いぜ」

「ああ。ここまできたらカティの出番だぜ。赤羽も頼む」

「ああまかせろ」

「はい!火魔法LV1 ファイアーボール!」


バレーボールくらいの火の玉が薄暗い洞窟を突き進んでいく。

照らし出される。

壁。岩。コケ。

そして15mは先だろうか。

待っていたかのように中央にいる。

でかい。

さっきのスモールは腰の高さはどの大きさだったが

今度のは高さが2mはある。

「赤羽!」

「おう!」


鑑定


グリーンアント


ステータス

LV38

HP 820

MP 200

攻撃 1200

守備  450

魔法攻撃 1380

魔法防御 200

素早さ 1580


スキル:地魔法LV8 虫食い 噛みつき 薙ぎ払い ギ酸LV6 毒攻撃LV6 麻痺攻撃LV3

 

称号:同族殺し ゴブリン殺し 人族殺し 捕食者

統率者 罠師 


「でたぞグリーンアントLV38!毒麻痺攻撃に地魔法LV8!?

攻撃魔法攻撃素早さ1200越え!

称号に同族殺し ゴブリン殺し 人族殺し 捕食者 統率者 罠師!」



グリーンアントがこちらに気づく。

いや最初から気づいていた?

1歩2歩と前に出てくる。


「マジかよ!

こんなせまいとこで地魔法打たれたら避けられないぞ!

「グリーンアントなんて聞いたことないぞ!特異個体か!?

突っ込むなよバン!罠師らしいぞ!」


「おうよ!」


「退却しますか!?」



「ああ場所が悪いぜ!走れ!」


そうクロッグが言ったところで出口方向にグリーンアントの土魔法が発動した。


「土厚壁(どこうへき)!?」


「カメちゃん、上だ!」


すでに数十匹のアリが天井を埋め尽くしていた。

そのうちの一匹がカティになにかを飛ばした。

「うっっ」

すると一斉に他のアリも飛ばしてくる。

「LV3ウォーターシールド・・・・」


カティと俺の上に水の壁。

カティに刺さったものを抜く。

毒針か!?

水の壁の中にも同じものが漂う。


クロックは膨らみ体を大きくし

その下にバンが入っている。

クロックの身体に無数の針が刺さっている。


グリーンアントとにらみ合ったままだ。



後ろは土壁、上にアリ、前には進化アリ。



「くそったれ!ここは俺とバンで止める!

バンお前は後ろの雑魚どもをやれ!俺は緑アリの相手だ!」

身体をさらに大きく膨らませて針をすべて落とす。


アリゲータースケイル、クロックの防御スキル。

常時発動型だ。

ワニ革が単純に装甲となっている。

小さな針などは通さない。


さらに獣人のみのスキル獣人化が発動する。


身体全てが一回り大きくなる。


グリーンアントと違わぬ大きさ。

グリーンアントを力ずくで抑え込む。


「アカ、カメちゃん上のやつら落とせ!グリーンの横すり抜けろ!」


俺は上に向かって魔法を放つ。

カティも力を振り絞る。


LV5サンドウィンド!

氷魔法LV1 氷壁…


天井は一面氷漬けになった。

滑って落ちてくるアリをサンドウインドが壁にたたきつける。

「ははは上出来だぜ!カメちゃんをまかせたぜ!アカ!」

バンも大きく膨れていく。


戻ってくるバンとすれ違う。

バンもかなり大きくなっていた。獣人化だ。


カティの肩を取り走る。

組み合うグリーンアントとクロックの横を抜ける。

「他の冒険者を見つけてイッショニイロ」

 クロックの瞳孔が開く。

クロックも本気モードだ。


「他の冒険者を連れて必ず助けに戻る!」



ふらふらのカティと地下4階へ向かった。


カティは自分に治療魔法をかけながらも歩く。

「完全には回復しないけど気休めにはなりますから。

あとHP自動回復もかけてダメージ相殺してます」


去り際に鑑定した天井にいたアリたち。

全部スキル無臭を持っていた。


スモールアントやクロックたちの倒したはぐれにはなかったスキルだ。


罠師か。

あいつが無臭をもってないやつを群れから追い出した。

俺たちを罠にかけるために。

バンの臭い感知にもひっかからなかった。

そういうことか。


カティは自分で歩けるまでになった。


良かった。


4階の薄暗いなかを灯りにそって歩いていく。



前方遠くから誰かがかけてくる音がする。


よかった、異変に気付き助けにきたのか。

先行し潜ったパーティは無事なのか。


足音の人物は意外な人物だった。



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