第16話 内田ユウ2

 我々、早翔けはアナディル奪還作戦前々日から動いていた。

アナディルにむけて走る。

馬など使わず、ただ走る。

素早さのステータスが高いこと。

それだけが早翔けの入隊条件だ。


加えて今回の作戦は体力やスタミナの高いものという条件があった。


俺と隊長シャド、ナンバー4ヨル、ナンバー8クモ


この4人だけの編成だ。








アナディルの住民が逃げてきて保護されている街キスタ

キスタとアナディルの間の小さい村クラール

クラール北に位置する森クラールウッド

そして魔物に占領された街アナディル


進軍で通る道、その周辺を事前にチェックする。



キスタ、第二第三の駐屯兵がすでに配置。異常なし。

バリケードも簡単なのが出来上がっている。



クラール、魔物の気配なし。

村内部も調査、ホコリが溜まっている。

しばらく使っていない様子。


クラールウッド、もともと雑魚魔物の巣窟だがなにかいつもとは違う。

アナディルから出てきた魔物が複数いる。

そんな雰囲気。

ところどころ争ったような形跡がある。

木が倒れ血が散乱している。

血の色を見るに人間の物ではない。

魔物同士で争ったか。

勝手に数を減らしてくれるなら助かる。



クラールウッド内部へ。

やはり本来の森の魔物ではない。

が雑魚は雑魚。

隊長の手を汚すまでもない。

俺、ヨル、クモで瞬殺する。

森にはなにか不思議な霧のようなものが発生している。

これは魔法か?

全体に立ち込めているようだが特別なにか体に不調もない。

毒や幻術にかかっている様子もない。

進軍時は感知能力者が必須か。




あっさりとアナディルへたどりつく。

「なんだこれは」

シャド隊長が無表情で声色を変える。

ヨルとクモも目を見開く。


「ほほー。でっかい赤い塔に・・・なにかなかで上下してますね。天辺あたり光っている?

あと中央あたりが平らで足場があるっと。矢倉ですかね?

その下には白い箱のような城?住居?」

ヨルが速筆で絵を描き始める。

「こんな建築技術を魔物が持っているのか。作業員は生け捕りだな。」

クモがなにかを企む顔をする。



俺はこれを知っている。

東京タワー

なぜここに。この高さなら森に入る前から見えてもいいはず。

それに下にあるのは普通にマンション。

だとするととんでもない数の魔物がいる可能性がある。




「霧。あれは認識阻害系の魔法か。」

シャドが結論を出す。


「ここまでだ。あとは山脈に魔物の軍でも潜んでいないか、山脈の生態系を確認する。」



アナディル目前に踵を返す。


そしてアナディルから真っすぐロベレドゥイに向かうルート、

クストゥ大山脈へ向かう。



クストゥ大山脈は険しい山。

崖になっている部分が多く進軍には向かない。

特別強い魔物もいないが広大な土地。


しかし近年モンスターの大量発生があったりと謎の多い土地。

あの有名なエルフの里とも近接している。


4人で山岳をするすると登る。

一般兵にはきついだろうが

軽装で特別な訓練を受けている早翔けにはただの散歩だ。


「とまれ」

シャド隊長が急に立ち止まる。


「つけられている。8匹だ。」


何もないような斜面。

周りを見回す。


猛獣の唸り声がする。



猛獣は近くに潜んでいた。

ウルフいやハイウルフか。

山岳の岩の色と同じような色の毛並み。



ゆっくりと1匹が立ち上がりこちらを伺うようにうろうろする。


「1匹に集中するな。囲まれている。」


シャドがそういうと斜面から大岩が複数転がってきた。

大量の小石を巻き込んで。


岩の雪崩。


認識した瞬間には足場の地面もすこしずつ坂を下っていた。



シャドとヨルが前方へ飛ぶ。

俺は後方へ飛ぶ。

クモは・・だめだ。

足をとられている。


「助けに来るな!」

クモが叫ぶ。

「クラールで落ち合いましょう!」

ヨルが咄嗟に応じる。


クモは岩雪崩に飲まれ見えなくなった。

シャド隊長とヨルは反対側。

向こうからならクラールが近いか。


こっちはクモが流れていった先にエルフの森。

エルフの森を簡単に調査。

クモの救出。

その後クラールへ向かう。


俺の道筋はすぐに決まった。

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