第15話 内田ユウ

 うだるような暑さの続くある日の金曜日。

今日の放課後の練習は光化学スモッグがでているとかなんとかで

休みになった。

明日もサッカー部は休み。

校庭が狭いので野球部と交互に校庭をつかっている。


この学校は進学校だがエリートってわけじゃない。

都立や県立高校に受からなかったやつが滑り止めでうけるような学校。


俺は高校受験に失敗した。

故に滑り止めのこの学校に通学している。

今夏から大学受験の勉強を始めたいと思っている。



夏休みは勉強に専念する。

高校受験の二の舞になるのはごめんだ。



有名塾、個人塾

そして大学のパンフレットを学生課で手に入れる。


途中おかむーがなにやら小林さんを探し走り回っていた。


もう高2だ。

高3になるまでに実力をつける。

俺は医者になる。


俺は一気に成績をつけられるほど器用じゃない。


ゆっくりと時間をかけて勉強して受かる。

恋愛にうつつを抜かしてる場合じゃないんだぜ?おかむー。



ふと見ると下駄箱前の廊下で小林さんが隠れている。

そして下駄箱前でおかむーがキョロついている。


ああなんとなく状況が分かった。


モテるって大変なんだな。小林さん。


「あれ?おかむー、まだ探してんの?小林さんならさっき教室でみたけど」

「くそ、すれ違ったかーナイスインフォメーション!うっちー!」

走り去り階段を駆け上がるおかむー。

すまんな、みんな時間は平等なんだぜ。

陰ながら小林さんの時間守りましたよ。


小林さんに追い払ったことを告げるのも野暮だしそんなに仲良くもない。


俺は靴に履き替える。

下駄箱前は空気の循環が悪く、まるで蒸し風呂サウナ状態だ。


早く外にでないと暑すぎるな。

夕日が校舎のガラスにあたり絶妙に反射して下駄箱前に差している。

熱くてめまいがするようだ。



直射もとい反射日光のなかを目を細めて歩く。

下駄箱前の強すぎる日光を抜けると

そこは異世界だった。


は?


目の前でスタイルの良い女の子が膝から崩れ座り込む。

この抜群のスタイル、艶めく髪の毛、女の子らしい動き。

小林さんだな。美しい。

逃げ切れたな。おかむーから。




そういえば最近人気の設定に異世界転生ってのがあったな。


これがそうか。


普通はもっとパニクったりするんだろうか。

明日からの地獄の勉強の日々から解放された。

この喜びと喪失感がなんともいえない感情をつくりだしているに違いない。




転生いや転移してきているのは、あと3人。


佐々木、神谷、あとこれは・・・赤羽か?

主人公ポジで真ん中先頭に立っている。




赤羽だけ別部屋に連れていかれる。

特別待遇?こいつが?いやおそらくお眼鏡に適わなかったんだろう。

こいつは勉強も運動もたいした成績をのこしていないはず。

というか印象にあまりない。





それから赤羽は帰ってくることはなかった。






ほぼ1年間の修行を経た。

俺は特別諜報部隊「早翔け」に任命された。


第一部隊 特攻

第二部隊 魔法・戦略

第三部隊 補給・守衛

早翔けは情報収集・潜入を担当している実質の第四部隊だ。

人数は少数精鋭、存在は隊長格しか知らない。


俺は早翔けのナンバー3へと昇進していた。



アナディル奪還前々日から国を出発する。

出発前、早翔け隊長シャドから不穏なことを聞かされる。


「詳細不明だが今回は秘密兵器とやらが実験的に投入されるらしい。

転移者関連のなにかだ。

なんせそれを警告したのはあのムーアだ。

あのデブはきな臭い。

なにをしでかすか分からんから一応お前にだけはいっておく。

お前も転移者だからな」



と意味深なことを言われたが

おそらく赤羽のことだろう

なんとなくそう思った。



それがこんなことになっているだなんて思いもしなかった。



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