第12話 佐々木アキラ3
『 アール隊長が突っ込んでいく。
それをアキラの魔法と剣術でカバーする。
BランクAランクの魔物も1人でばっさばっさとアール隊長がなぎ倒す。
一斉に隊長を狙う魔物。
アキラの魔法での援護射撃。
振り返りもしない隊長が口角をあげるのが分かった。
隊長はそのままの姿勢で、魔法でひるんだ魔物を薙ぎ払う。
魔物が吹き飛び傷口が発火、一瞬にして火だるまになり黒い塊になる。
火魔法、炎魔法さらにその上位の黒炎魔法。
それを大剣に込めたのだ。 』
そんなある日の戦闘を思い出していた。
俺と隊長が揃えば敵はない。
クラールへの足を早める。
クラールが見えてきた。
大きな壁、いや鏡のようにもみえる物がクラールを一周し囲んでいた。
なんだこれは!?
人口20人にも満たない家が数件あるだけの小さな村のはずだ。
壁の下あたりで爆発音。
隊長の攻撃に違いない。
何度も聞いた隊長の大剣を振り下ろす音。
地面を殴りえぐり黒炎をあたりに噴出させる技。
隊長のもとへ急ぐ。
あたりにはところどころに1班の精鋭たちが無惨な姿で転がっていた。
再び地面をえぐるような爆撃音が聞こえる。
俺たちの足元に袈裟斬りに真っ二つにされた兵士が吹き飛んでくる。
馬を止める。
兵士の兜が転がる。
「あう・・あが・・・・」
足元でもだえる兵士は赤羽だった。
隊長が出発前に言っていた隠し玉はお前か。
赤羽の傷口が発火し黒炎にのまれる。
クラスメートは一瞬にして黒い塊になった。
人肉の焼けたニオイが煙と一緒に宙に消えていく。
馬から全員をおろし剣を抜く。
爆風と煙がおさまると片腕を失いながらも奮闘するアール隊長が目の前にいた。
その目の前には件の特異個体のワーウルフ。
隊長の大剣を持ち大層な白い鎧を纏っている。
白銀に煌めく腰まであるたてがみ。
背筋は伸び完全な二足歩行。
ワーウルフが構える。
何度も見た隊長の構えと動き、呼吸。
それをこの魔物が行っている。
「アキラァ!!!退却しろー!」
敵を見据えたままの隊長はそういうとワーウルフに飛び込んでいった。
「総員退却!!!」
隊長が爆炎と煙に飲まれ爆風が2班もろとも吹き飛ばす。
咄嗟に防御魔法を展開するも一瞬で砕かれた。
がないよりはマシだったか。
動けるのは俺だけ。
立ち上がりあたりを見回す。
2班の兵士がそこかしこに転がっている。
鎧と屍の真ん中で、動く影をとらえた。
それは一瞬で距離を詰め目の前に立っていた。
隊長の大剣の振り上げの動き。
だが完全にこいつのほうが早い。流麗だ。美しさすら感じる。
気づくと俺の足は地面を離れ空中を舞っていた。
斬りあげられた。痛みはない。
ただ斬り上げを受けた衝撃だけが鎧を通じて全身に響く。
いやにスローモーションに感じる。
走馬灯ってやつか。
5感が鋭敏になっている。そんな気がする。
真っ二つにはなってないな。脚はある。両腕もある。
空中でワーウルフを見る。
ワーウルフも俺を見ている。
妙に人間味のある瞳。口元が動く。
「あれ?今度は佐々木君だ」
ふざけんな。日本語じゃねえか。なんでおれを知ってる?
永すぎるように感じる滞空時間が終わり
地面にたたきつけられたところで
俺は意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます