第17話 水着姿はもちろんドキッとします。
夏休みが始まって二週間が経った頃、俺たちは先生に呼び出され学校に来ていた。
(何で休みの日にわざわざ学校まで足を運ばなければならないんだ)
先生から連絡が来たときはそんなことを思っていた俺だが、その後に送られてきた詳細を見て俺はその場で固まってしまった。
To.詳細
集合時間 一時
場所 学校のプール
仕事内容 プール掃除
P.S 各自水着を持参すること
先に着替え終えた俺は、プールサイドにて妙にそわそわしていた。それもそのはず、今日はこの前見ることのできなかった女性陣の水着を拝見することが出来るのだ。撮影のため仕方なかったと言っても、女性陣の水着を見られなかったことを俺は少し残念に思っていたのだ。
そんな中、まさか先生がこんな機会をくれるとは思ってもみなかった。
(あの美少女たちの水着だぜ?どうしよう……何かドキドキしてきた。健斗の奴、こんな日に家の用事なんてついてないな)
「お待たせ!和樹君!」
(なっ!!)
最初に出てきた竹森さんに、俺は容赦なく目を奪われた。
真っ白なビキニは露出度が極めて高く、普段隠されている部分が露わになっている。そして何よりも豊満な胸の破壊力に俺はやられてしまった。
「どう…かな?」
少し恥じらう様子は普段あまり見せないので、俺はそのギャップにもやられてしまいそうになった。
「良いんじゃないかな……」
「あ、ありがと」
「ちょっと竹森さん、置いて行かないでくれるかしら」
「そうだよ、気づいたらいなくなってたからびっくりした」
「……」
後から来た二人の破壊力も凄まじいものがあった。
木下は水着じゃなくTシャツを着ていたが、シャツが結ばれていることにより見えるお腹と、太ももまでしっかりと見えるモデルのようにすらっと伸びた綺麗な足には十分過ぎるほどの魅力が感じられた。
しかし、俺が一番驚いたのは神田さんだった。
神田さんは黄色のフリフリが付いたワンピースタイプの水着で、いつもとはまったく違う雰囲気があった。それに、水着を着ていることで気づいたのだが、神田さんは驚くほどスタイルが良い。
竹森さんほどではないにしろ十分過ぎるほど豊満な胸に、木下のような白くて細い綺麗な足をしている。そして、普段かけている眼鏡を外したことにより彼女の可憐さを隠すものは何一つ無くなっていた。
「一言くらい何かないのかしら」
「どうかな」
「あ……二人とも、良いと思う……」
俺は二人に見惚れてしまい文字通り言葉を失っていたようだ。
「和樹君、二人のこと見過ぎ」
「え?うわっ!つめたっ!」
「きゃっ」
「ちょっ、竹森さん!?」
何故かむすっとした表情の竹森さんは、ホースの水で思いきり俺たちのことを濡らした。すると、意外にも反撃に出たのは神田さんだった。
「もうっ!今日ばかりは許さないんだから!!」
「きゃあっ!冷たい!!待って希!こっち来ないでえー!」
楽しそうに水をかけあう二人を見て、神田さんは眼鏡が無くなると性格も変わるのだろうかと俺は思った。
「お前は行かなくて良いのか」
「私が行くわけないでしょう?それより、掃除はしなくて良いのかしら」
「ああ、そうだった。ここには掃除をしに来たんだったな」
「目的を忘れるなんて呆れるわね」
「悪かったな……よし!掃除するか!」
「そうね」
掃除道具を持ってプールへ向かう木下を見て、ふと俺の悪戯心が顔を出した。俺は傍にあったホースを手に取り、蛇口を捻る。
「ひゃっ!」
意外にも可愛らしい声を出した木下だったが、振り向いた時の顔は全然可愛らしくなかった。
「金城君。いい度胸じゃない」
「いや、これはその、一時の気の迷いというか……」
「言い訳はいらないわ。もちろん、覚悟はできてるわよね?」
そう言って木下は、俺が持っていたホースと竹森さんが置いて行ったホースの二本を手に取った。
「ちょっと待て!二本はずるいだろ!!」
「私に水をかけたこと、後悔させてあげるわ」
木下に容赦なく水をかけられまくった俺は、もうこいつに悪戯なんて絶対にしないと心に誓ったのだった。
結局、先生が様子を見に来るまで水のかけあいは続き、プール掃除が終わった頃にはもう夕日が辺り一面を赤く染めていた。
帰り道、俺と神田さんは二人きりになっていた。木下と竹森さんは家の方向が真逆らしく、学校を出てすぐに別れた。
(そういえば、家の方向真逆なのにこの前何で竹森さんは、俺の家までついてきたんだ?)
こんなことも思ったが、竹森さんの行動はいつも突拍子もないので深くは考えないことにした。
そんなことより、今は大事な問題がある。
(気まずい……竹森さんと帰ったときは竹森さんが話題を振ってくれたからそんなに困らなかったけど、神田さんはどう見てもそういうタイプじゃないしなあ。こういう場合、どうすれば良いんだろう)
神田さんとは、二人きりになることが少ない。家の方向が一緒なのも今日まで知らなかったし、今までちゃんと話したのも数えるほどしかない。
この前登校中に話しかけたときは、挨拶から始められたから何とかなった。しかし、今回は最初から二人きりなので、コミュニケーション能力が皆無の俺にはどうすることもできない。
結局、一言も言葉を交わすことなく俺の家の前まで来てしまった。
「それじゃ、俺ここだから」
「さようなら、金城君」
最後に挨拶だけ交わして、俺は家に入った。
神田さんが家に訪ねてきたのはそれから10分後くらいのことだった。
「突然ごめんなさい金城君。今日、私を泊めてくれない?」
という言葉と共に。
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