第2話 まーさんとシーブリーズ

まーさんは、肌が弱い。

すぐ痒くなるし、すぐカサカサになる。

でも、汗疹もできやすい。


いつも何やら塗っている。


まーさん曰く

彼女の身体は“わがままボディー”らしい。


たしかにまーさんの身体は、よくわがままを言って色々と困らせている。


まーさんの

“この、わがままボディーめー‼︎こーしてやる‼︎”

というセリフを何度聞いたかな。


毎日、何かを塗らなきゃいけない。塗るものも使ううちに合わなくなったり、大変そうだ。

きっと自分の体質に嫌になる時もあるんだろうな。


でもそんな時でもふざけながら、せかせかとわがままボディーに対処しているまーさんの頭を、僕は撫でたくなる。


そして……


“わがままボディー”が正直ツボだ。


まーさんにしては珍しく、上手いこと言ったなぁと少しだけ思っている。少しだけだけね。



そんなまーさんなので、身体に合うボディーソープもなかなかないらしい。

化粧品から何から大変そうだ。さすがわがまま。


色んなタイプのものを試してはため息をついている。


“ねぇ、私の運命の相手はどこにいるの……?”

と遠い目をしているまーさん。


なんでボディソープでそこまで王子様を待つような顔ができるのかいつも謎だ。

そして、王子様ではまーさんを扱いきれないとも思っている。早く王子様はやめればいいと思う。




ちなみに僕は、もう何年も一年中シーブリーズ一択。あの爽快感がお気に入りで、それしか使っていない。


ある日、まーさんがお風呂から出てひゃーひゃー言って笑っている。


「どうしたー?」


と聞くと、間違えて僕の使うシーブリーズで身体を洗ってしまったらしい。


「すごいねー!なにこれ!寒いよー。毛穴がひゃーーってする。ひゃーーー‼︎」


大騒ぎ。

楽しそうで何より。


ただ……それを僕に教えてくれたのは、数年前のまーさんなんだけどね。


「これすごいんだよ、おーさん使ってみて!」


って鼻の穴をふんふんさせて買ってきたのに。


我が家の忘れんぼうは、今日も元気です。














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