学園祭前日、ゴミ箱に紙くずを入れたら
10球中9球目の丸い紙くずも、ゴミ箱の角に当たると力なく地面に落ちた。
すでに周りには9個の紙くずが散らばっている。
メイド喫茶を模したレイアウトに変わった教室で、4人の女子がかたずを飲んで見守っている。翌日が学園祭なのに、みんなあくまでもメインはこっちというような目をしている。
「これで最後か」
僕は右手に念をこめて、最後の1球を投げる。
この球はゴミ箱の縁の手前における内側に当たり、そのまま奥へと吸い込まれていった。
「おめでとうございます!」
クラスメイトの美紅(みく)が、歓喜の声を上げた。
しかし僕はそれに応える気には到底なれなかった。
「これで明日、私と一緒にメイドになってくれるよね」
「嫌だ!」
「『嫌だ』というのはナシよ」
そう、この賭けは、丸めた紙屑を10球ゴミ箱に投げて、いくつ入るかというゲームではない。
「だって、丸めた紙屑を全部ゴミ箱にぶつけて、なおかつ1球も中に入れないというゲームでしょ。それで1球でも入っちゃったら、私たちと一緒にメイドの手伝いをするという賭けだったじゃない」
美紅は微笑みながらも、ドライに説明してきた。
「さあ、観念してドレス着ちゃいなよ」
「そうよそうよ」
他の3人も僕に群がり、圧力をかけてきた。
四方を囲まれた僕に、抵抗する術はなかった。
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「おかえりなさいませ、ご主人様」
開店当日、メイドのドレスを着た僕は裏声で女の子っぽい声を出しながら、接客に勤しんでいた。
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