かわかない消毒液つきキッチンペーパー
そのキッチンペーパーは、いつも湿っていた。
「鈴(すず)、何でこのキッチンペーパー湿ってるの」
「ああ、それ? 確実に消毒できるように、外気にさらしても乾かない仕様になってるの」
妹は嬉々としながら答えた。確かにアルコールつきの除菌シートは、買ってから時間が経つと取り出してもかわいてしまう。そう考えると、文明の進化は実にありがたいと思った。
キッチンペーパーにも、かわかない消毒液がつくようになったんだ。
僕は木製のダイニングテーブルに対して、早速そのペーパーを使ってみた。拭きやすさは悪くない。テーブルのいたるところに細かい水滴が残ったが、それでウイルスが消えてくれるなら結果オーライだと思った。
だから僕はこのキッチンペーパーを気に入り、来る日も来る日もダイニングテーブルに使い続けた。期間にして3カ月ぐらいは使っていただろうか。
---
「お兄ちゃん、このテーブル全然きれいじゃなくなってるよ」
鈴の指摘どおり、僕たちのダイニングテーブルの上面は、ひどくデコボコしていた。所々で白い斑点も見える。
「消毒液がかわかないから、傷んじまったんだ……」
ウイルス対策のはずが、それはそれでキツい代償を払うことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます