ポケットに入れて

飯田なつみ

1 チョコパイ夢現

 さっさとお風呂に入って眠れば良いのに、疲れきった週末の私は愚かなので、次へ次へとチョコパイの袋に手が伸びる。

 最後の一個を取り出して、口を開けて異変に気付く。

 チョコパイが、半分しかない。

 ぎょっとして、それから割れた半分を探して袋を覗く。

 目が合った。

 口の周りをチョコレートで汚した、小指サイズの小動物が、くりくりお目目のネコが、いた。

 ひっ、と喉が鳴り、思わずチョコパイの袋を投げた。

 ひらりと飛び出したネコは、そのまま私の手から半分残ったチョコパイを咥え取って宙に消えた。

 しばらくしてようやく恐る恐る投げ出した袋をつまんで覗き込む。

 丸いチョコパイが当たり前の顔をしてあるだけだった。

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