悪役令嬢転生…彼女に幸せなど在るのか?

葵流星

悪役令嬢転生…彼女に幸せなど在るのか?

つらい…そう思いながら、パソコンで作業をしていた。


仕事内容…覚えていない、思い出したくもない。

口の中に、コーヒーの味がずっとしていて飲み続けていた。

頭がボーっとしているし、エナジードリンクも常習的に飲んでいた。

具合が良くはないが、仕事をしなければならない…。

つらい…。


それで、急に胸の辺りが苦しくなって…眼鏡の鼻当ての部分が皮膚に食い込むのを最後に感じたと思う。


そして、アニメや漫画や小説でよく見る、死んだ人が来る部屋に私は居た。

そこには、普通に女神が居て異世界転生させてくれるか、謎の存在XYZか神様が無慈悲な異世界に異形異種の存在で飛ばしてくれるはずだった。


しかし、そこに居たのは娼婦と言うよりサキュバスのような見た目をして葉巻を吸っていて、王様の座る椅子に偉そうに足を組んでいる女神だった。

黒のエナメル質の服装で、肌の露出が高いその服装は、豊満なスタイルで私とはまったく異なる容姿で…羨ましいというより、コンプレックスのある私にとってつらいものだった。


開口一番、彼女は…


「面倒だから言うけど、あんたは死んだ。死因はカフェイン中毒。死体はあんたの上司が通報して、病院よ。それで…異世界転生するの?」

「何を言って…。」


どこから取り出したのか、万年筆と本に何か文字を書き始めた。


「うるさい、めんどくさい!じゃあ、異世界転生ね。」

「だから、私は…。」

「はいはい、美少女にして差し上げますよ、ババア、お局様。それと、身体もその体より太りにくくて、体型が維持しやすくて、それでもって身体能力、たくさんの魔力もプレゼント…。コンプレックスになりそうな要素はすべて完璧に、両親はお金持ち…ぐだぐだ言ってないで、何に転生するの?」


女神…悪魔はそう私に聞いた。

私は、彼女の言葉に傷つけられ…プライドがズタズタにされた。

悔しかった…。


「…はいはい、まったく異界の人には異世界転生が流行っているって言うのに、いざ自分がそうなると説明が必要なのね、馬鹿らしい。」

「…カレンに。」

「何?小さくて、聞こえない。」

「わたしを!カレンにしてください!」

「そうそう、それでいいのよ。美少女の身体を手に入れてもあんたの精神はそのままなんだしっ…わかった、カレンね。あんたが好きなゲームの悪役のお嬢様でいいの?」

「なりたいんです!お願いします!」

「損な役回りなのに…まあ、いいわ。ちゃんと、見ておくから行ってらっしゃい。魂に浄化あれ!」

「えっ、うそっ!」

「足元が光っただけじゃないの、あんた相当な年だったのにね。10歳の子からのスタートよ。…ああ、早くとても優しくて私の将来の伴侶になってこの仕事から解放してくれる魂は来てくれないかしら…もうおばさんと卑屈な少女は嫌なのよ…。」


そう、女神がこぼした言葉を聞きながら私は転生した。


転生した私は、その後悪役令嬢…つまり、ゲームのストーリーであったカレンが行うこと、そして、いくつかのバッドエンドのルートを避け、この世界で生きた。


数年後、彼女がやって来た。


「死にかけのしたいから、余裕のあるおばさんになったじゃん。」

「それは…どういう意味ですの?」

「あんたは、29歳…ようするに、ここはノーマルエンドだ。」

「…そんな、でも…私は…。」

「結局、元の世界と同じように処女…いやっ、喪女のまま終わったね。あとは、マダムとして優雅な隠居生活をお楽しみに…。」

「そんな…今からでも、結婚くらい…。」

「それは、日本での初婚年齢…この世界であんたくらいの年…30歳以降のお嬢様には縁談は来ない…もう終わっているのよ、あんたは。」

「だって…。」

「結局、カレンが好きでキャラクターになりきっただけ…。だから、ここで終わり…好きな男キャラはもうあんたに愛想をつかしてた。あんたは、幸せそうにそれを見ていた…じゃあ、もう私は帰るから…。」

「待って!あなたは、これを予想していたの?」

「予想なんかする前から、わかってた。私は性欲の女神だから…もちろん、人の愛もわかるもの…あんたが、こうして終わるのも…。」

「私は…どうすればよかったの?」

「ここは、あんたが望んだ世界だ。ゲームのストーリーをなぞれば悪役令嬢であるカレンは死んだ方がいいキャラクターだ。」

「…確かにそうだけど。」

「やっぱり、あんたはバカのままね。ゲームのストーリー通りならバッドエンドは未然に防げる、それと、悪役令嬢のカレンのストーリーはシナリオ通りだけど、あんたのストーリーはメインストーリーとは違う形で進められる。」

「…そうなの?」

「そう、じゃあ…最後の一回だけ…ゲームのコンティニューね。」

「…。」

「今度は、うまくやりなさいよ。男に抱かれて、処女捨てて、結婚して、子供を産むハッピーエンドにたどり着きなさい。」

「身も蓋もありませんこと!」

「うるさいババア!ささっと、抱かれて来い!私はもう二度とあんたとは会わない!」

「ああ、もうわかりました!」

「じゃあな、あの世でもお元気で!」


女神は、そう言い彼女を再び10歳の少女に戻した。


その後の彼女のことを女神は知らない。

不幸になったのか、ハッピーエンドにたどり着いたのか。

実際、それは女神には関係のないことだった。


今日もたくさんもの死者を異世界に転生させているのだから…。


「いらっしゃい…あんたは、地震で死んだのよ。そう…北陸大震災で…。」


「ねぇ…私も連れていってくれる?」


「ビッチそうだから嫌だ?」


「失礼ね、私は処女よ。」


「ええ、行きましょう…ご主人様(あなた)♡」

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