第19話

ホリックの魔道具屋は町外れにあった。


「ここ、本当に人が住んでいるの?」

ミクルは荒れた建物を見て言った。

「うん。ホリックさん、ユーリです!」

ユーリは大きな声でホリックを呼んだ。


すると、奥から小柄な40代くらいの男性が現れた。

無精ひげで、伸びた髪を結んでいる。

「やあ、久しぶりだな、ユーリ。そちらはお友達かい?」

「ミクルと申します」

「結城司です」

「どうも、ホリックと申します」


店内は意外と広く、掃除も行き届いていた。

「うちに用なんて、珍しいね」

ホリックの言葉に司が応えた。

「あの、俺、魔力はあるんだけど、補助魔法しか使えなくて」

「ああ! それで魔道具を見に来たんだね?」

ホリックはそう言うと、奥に戻って何かを持ってきた。


「ほら、コレなんかどうだい? 光の魔法が撃てる銃だよ」

「え!?」

ミクルが驚いた。

「そんな物があるの?」

「ちょっと使ってみるかい?」

ミクルは銃を手にして、近くに生えている木を撃った。


「何も出ないじゃない!」

ミクルの言葉にホリックは答える。

「魔力を詰め込むイメージをしてごらん?」

ミクルはもう一度、銃を構えて木を撃った。


すると、今度は小さな光りの弾が飛んでいった。

「え!? こんな小さな弾じゃ実戦には使えないじゃない!!」

ミクルの手から、司は銃を受け取った。

そして、銃に魔力を込めた。


「!?」

銃が輝いた。

司はそのまま、ミクルが狙っていた木を撃つ。

光る弾丸が当たった瞬間、木は消滅した。

「魔道具は魔力次第で威力が変わるんだ。司は大した魔力の持ち主みたいだな」

「……これなら、大樹とも戦えるかも知れない」

司は言った。


「この銃を下さい。いくらですか?」

「ただでいいよ」

ホリックは微笑んでいた。

「そういう訳にはいきません」

司がそう言うと、ホリックは考えてから言った。


「実はその銃は必要な魔力が大きすぎて、売り物にならないんだ」

「そうなんですか!?」

司は手の中の銃をじっと見つめた。


ミクルは言った。

「私は普通に魔法を使った方が手っ取り早いし、威力も強いわ」

「魔道具って、そんなに使えるものじゃないんだよ」

ホリックは少し寂しそうに言った。


「それじゃあ、お言葉に甘えてこの銃は頂きます」

「銃を入れるベルトもあげるよ」

ホリックの言葉に司は戸惑った。

「そんな、良いんですか?」


「ああ。その代わり、魔王軍を必ず倒してくれ」

「え?」

ホリックの代わりにユーリが、司に説明をした。

「ホリックさんは奥様とお子様を魔王軍に殺されたんだ」

「……そうだったんですか」

司は俯いた。


「それじゃ、銃は大切に扱ってくれ」

「はい、分かりました」

司は受け取ったベルトに銃をしまった。


三人はホリックに礼を言うと、シラヌイの城に戻っていった。

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